我が家の焼き肉パーティーの話
永田敏男毎年正月には我が家の恒例として子供たち家族が集まることになっている。
今年も、二日に孫を含めて10人が寄り、大変なにぎわいでした。
孫も、3歳と7ヶ月、1歳と1ヶ月、ただの10ヶ月と、走り回る子供から、よたよたと歩く子から、這い回る子から、幼児期の行動を一同に介した展示会のような状態でした。
持っているものを取り上げる子もあり、それをなんとか返すようにし向けようとお母さんは説得する。とられた方は、泣くの一手。私は、にこにこしながらコップのビールを口に運ぶだけ。なんとも幸せを感じる一時でした。
今年は、焼き肉パーティーをやろうという子供たちからのリクエストで、焼き肉の新しいプレートを購入し、我が家では大金の2万5千円をはたいて買いました。
持ってきた電気屋さんに、「もう値引きはないんですか」と、いよいよ交渉に入った。彼いわく「消費税は負けておくから、これでたのみますよ」と言われた。私も、「まあしかたないですね。それなら焼き肉の肉をサービスしたらどうかね」と言ったら、彼は益々私に近づいて、しかも片方の耳のそばで大きな声で「じゃあ、千円負けるよ」と言われた。私は「申し訳ないね。ありがとう。しかし、私は目は見えないが、耳は良く聞こえるんだがね」と言ったが、彼は、聞こえたかいなかは分からないが、だまっていた。ともあれ、千円稼いだので、その分、余分に肉が買えるなと思いました。
この器具の使い方を丁寧に電気屋さんは教えてくれた。まず、頑丈なふたを取るとプレートが現れる。それをはずすと四角い枠があり、それを除けると煙を吸い取るフィルターがある。このフィルターは、焼き肉が終わったら、捨ててしまい、新しいものを装着して使うことになっています。モーターで吸い込んだ煙はここに吸着され、あまり部屋を汚さないようになっている。
プレートの真ん中に盛り上がった部分があり、それは周りが隙間だらけで、そこから煙を吸い込むシステムになっている。
本体の前面には4つのボタンがあり、電源スイッチ、250度を最高に、加熱温度を上げるボタンと下げるボタン、もう一つは、煙を吸引するモーターを起動するボタンと、それだけの装置である。
煙は80パーセントをカットするということで、いざパーティーの開始である。じゃーじゃーと音のする割合には煙も臭いも少ない。
私などは、焼き肉のたれに入れてもらった肉を食べるだけでしたが、焼く方は、忙しくてなかなか口に入らないようでした。こうしてみると、目が見えないのも少しは得かなと自らを慰めていました。
ある来院する患者さんが、「正月は、どんなご馳走をたべられますか」と聞かれたので、「うちは、昨年おせちを買って出したが、子供たちに受けが悪かったので、来年は焼き肉にすることになっていますよ」と言ったら、彼女いわく「私は、田舎で生まれ、その村の人がなくなると、ちょっとした人家から離れたところに焼き場があって、こわごわ見にいったことがあってね。そのときの臭いが、焼き肉にそっくりだったんですよ。それからというもの、焼き肉は嫌いになりましたよ。」といわれた。
私も、焼き肉は大好きでしたが、それを聞いてから、あまりおいしくなくなりましたね。やはり同じ肉だから、臭いは同じかも知れないと思ってから、どうも味が半減したようです。
まあそれはともあれ、暖かい部屋で、こうして健康な家族が集まり、これが本当の幸せかなと思い、5時間あまりの時をエンジョイしたという、誠にたわいもない我が家の1風景をお伝えしました。
もし、これを「ばかげたおもしろくない話だ」と思われたら、泣きそうになっておもちゃ箱の原稿を書いている私の姿をご想像くだされば幸甚です。