日本の歴史認識南京事件 > 付録「南京旅行記」(2日目)

付録:南京旅行記 (2/3)

2日目; 新街口~挹江門~中山碼頭~浦口~南京大屠殺紀念館~中山稜~新街口

挹江門

朝からしとしと雨。ホテルからタクシーで挹江門へ(15分,28元)。中国語はしゃべれないので、あらかじめ行先を簡体字で書いた紙を用意しておき、それを見せればちゃんと連れていってくれる。料金をぼることもない。挹江門も最近復元されたもので、中華門より小さいが高さは同じくらいあり、立派な門である。ここを観光で見に来る人はいない。

挹江門

挹江門

中山碼頭~浦口(揚子江渡江)

挹江門から歩いて10分ほどで中山碼頭に着く。片道2元のフェリーに乗って、揚子江対岸の浦口(Pukou)に行く。揚子江はたくさんの貨物船が上流・下流方向にいきかい、フェリーはそれと直角の方向に船と船のあいだをすりぬけるようにして進む。所要時間はおよそ10分。浦口は近代化された南京市内と異なり、まだ一昔前の風情を残している。しかし、そういう古い建物はどんどん取り壊されているので、あと少しでここも近代的な街並みに変わるのであろう。

揚子江のフェリー

揚子江を渡るフェリー

浦口の街並み

浦口にあった古い建物

南京大屠殺紀念館

中山碼頭でタクシーをつかまえて、南京大虐殺紀念館に向う(15分,22元)。日曜日のせいか、雨だというのにたくさんの人が行列を作っている。入館は無料だが、例によって荷物のセキュリティチェックがある。館内は写真撮影禁止のようだが、撮影している人もたくさんいた。

南京大屠殺紀念館

左:事件の日付や犠牲者数が記載されたモニュメント  右:館外にこんな像がいくつか置かれている

(1) 展示している史料の半分以上は、日本の新聞、写真、軍関係の史料や物品(軍服、千人針、軍刀、銃、砲弾、など)で、次は外国関係(米国など)のもの、中国の史料は少ない。そういえば、沖縄平和祈念館の展示もアメリカ軍が撮影した映像が多かった。敗けた方は記録を取るどころではないのだろう。

(2) 南京空爆から、上海事変、南京攻略、陥落後の不法行為、外国人の活躍、戦犯裁判、と時系列的に展示されている。資料には中国語、英語、日本語の3ケ国語で説明文がついている。

(3) 事実をねじまげていると思ったところはないが、事実をどのように認識するかは中国風。例えば、中国兵による清野戦略、唐生智の逃亡などはまったく触れられていないし、犠牲者30万人の根拠が明確に示されているわけではない。

(4) 当時の民家を復元してそこで殺害されている家族がいる展示もあったが、意外と地味で、沖縄の平和祈念館の展示の方が迫力があった。

(5) 出口にあった「結び」の言葉(下の写真)は、現在の中国共産党の理念そのものを示しているように感じられた。

大屠殺紀念館の”決意文”

「結び」の全文: 「歴史は鏡であり、歴史の教訓を忘れてはならない。侵華日軍南京大虐殺という歴史事実は、戦争は人類文明にとって大災禍であること、戦争は蛮行を生み出し、人間性を絶滅させる野蛮な行為であること、侵略と虐殺は必ず被害民族に災難をもたらすということを証明した。われわれは、国が弱ければ侵されるということ、巣がひっくり返れば割れない卵はないということ、国家が侵略されれば、人民は災禍に遭うという歴史の教訓を、永遠に忘れてはならない。愛国主義の旗を高く掲げ、自ら励んでやまなく、未来を開拓し、中国の特色ある社会主義を建設するために、また、祖国の統一を実現し、世界の平和を守るために努力しなければならない。 戦争を遠ざけ、平和を愛し、調和のある世界を作るために、奮闘しよう!

(6) 万人杭の展示は考古学の展示のようで、本物の人骨なのだが、イマイチ見る者に迫ってこない。そのうしろにある犠牲者の霊を慰める光の展示はおごそかだった。

(7) 日本側の功労者として、本多勝一氏や洞富雄氏の名前があった。逆に東中野氏は夏淑琴さんの裁判で負けたことが展示されていた。

全部見るのに約3時間かかった。やたらと30万の数字が目につき、政治の臭いが強くしたが、実際の展示内容は真面目で参考になるものも多かった。

中山稜

天気が良ければ紫金山の山頂を目指すつもりだったが、あいにくの雨だったので中山陵だけにした。紀念館の前にある地下鉄の駅からおよそ30分、中山陵最寄り駅の下馬坊(Xiamafang)で下車、徒歩20分で駐車場、そこから30分くらいで孫文の棺がおかれているというお堂につく。最後は392段の階段を登る。雨だというのにたくさんの人がいた。

中山稜

孫文が安置されている廟まで392段の階段を登る

漢中門

時間があったので、もう一度、同じ地下鉄で紀念館の方にもどり、漢中門(Hanzhongmen)駅で降りて、駅前にある漢中門を見に行った。ここも復元したようだが、完全にもとの姿に復元されていないようにみえた。観光向けではなく、城壁の上にも登れない。

漢中門

漢中門 付近は小さな公園になっている

漢中門からホテルまでは漢中路を歩いて30分。途中、日本ではみかけない標識を見つけ、思わず微笑んでしまった。左は「犬の進入禁止」、真ん中は「花火&爆竹禁止」であろうか。右は街角に掲げられたスローガン(?)、一番上に「富強」と書かれている。

標識