キショウブ

初夏の散歩道には水辺のあちらこちらにハナショウブに似て黄色い色をしたキショウブが目立つようになる。 ハナショウブは栽培されたもの以外は見ることも難しいが、キショウブはたくましく野生化している。 それも道理で、ハナショウブは日本古来の花であるが野生種がほとんど見られなくなったのに対し、キショウブは帰化種で日本の風土に適応して野生化したものである。
日本のハナショウブには、紫、青紫、赤紫、白、ピンクの花はあるが、黄色は無く、珍しい花として、明治時代にヨーロッパから輸入されたものがキショウブで、日本古来から咲いている花ではない。

種々の色をした日本のハナショウブ

よくテレビ番組の 「鬼平犯科帖」 等の時代劇を見ているとアヤメやハナショウブに混じってキショウブの花が写っていたりするが、これは時代考証の誤りである。 もっとも、余り堅苦しい事を言う必要はないが、そういうテレビの楽しみ方もある。
日本のアヤメ科アヤメ属には、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタ、ヒオウキアヤメ、シャガ、ヒメシャガ、エヒメアヤメの7種と、帰化植物として、キショウブ、イチハツがあるが、この内、繁殖力が強く、野生化してどこでも見られるのがシャガとキショウブである。( 「シャガとペインテイング」 の項参照)
菖蒲(ショウブ)に似た葉を持ち、黄色い花を付けるので、キショウブの名がある。
ハナショウブの事を一般に菖蒲(ショウブ)と呼ぶので、誤解されやすいが、本来、菖蒲はアヤメ科ではなく、サトイモ科の植物で、花も全く異なり、匂いが良いので五月の端午の節句に菖蒲湯として使われるが、アヤメ科のハナショウブとは別物である。
万葉の時代にはサトイモ科の菖蒲の事をアヤメ草と呼んでおり、その名残か現代でも菖蒲と書いて、ショウブと読ませたり、アヤメと読ませたりするので日本語も難しい。( 「いずれアヤメかカキツバタ」 の項参照)


キショウブは日本各地の水辺で見られ、一日花であるが、そのあでやかな黄色で目を引き、日本古来の花のように見えるが、近年渡来した外国産である。

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