タカサゴユリ

立秋も過ぎて、お盆にかかる頃、山野に白いユリが少しずつ目立つようになり、その内、山裾を埋めるように群生する。 タカサゴユリである。
ユリはヤマユリに代表されるように日本の特産品で、ヨーロッパではこれをベースに種々の品種改良されたユリが生まれ、日本に逆輸入された歴史があるので、このユリも日本原産のテッポウユリと思い込んでしまうが、近づいて見ると、葉が細く、花に薄い紫の筋が入り、テッポウユリとは歴然と違う事が分かり、咲く時期も違う。( 「日本を代表するヤマユリ」 「オニユリとユリ根」 の項参照)
それもそのはず日本原産ではなく、元々、台湾に自生していたユリが大正時代に日本に入り、その強い繁殖力で各地に野生化したものである。 名前のタカサゴは琉球語に由来する台湾の別称で、台湾のユリという意味であるが、テッポウユリに似て葉が細いのでホソバテッポウユリの呼び方もある。
通常のユリは主に他家受粉をし、花が咲くまで数年かかるが、この花は簡単に自家受粉をし、発芽した翌年には花を咲かせるほど繁殖力が旺盛である。


通常のユリより花期が遅く、写真のように花に薄い紫の筋が入るのが特徴で、葉が細いが、テッポウユリとの交配種も野生化しており、交配種には紫色のストライプが無いものが有り、自然界もややこしい。
上述のようにタカサゴユリは台湾のユリと言う意味であるが、ユリそのものの名の由来は定かではない。 ただ、江戸時代に書かれた日本初の国語辞典 「和訓栞(わくんのしおり)」 には 「花大に茎細くして風にゆるるもて名つくる成るべし」 とあって、風に揺れることからその名が付いたとする説が有力であり、漢名の百合(ユリ)は鱗茎の一枚一枚が重なり合った様子を示したものである。

現在、日本の自然界で一番普通に見るユリが台湾産であるというのも妙なものである。

次へ

最初のページへ戻る