後藤尚久 : なっとくする電磁気学の疑問 55

作成日 : 2024-04-19
最終更新日 :

概要

「まえがき」から引用する。

子供のように何事にも疑問をもつことが研究開発には大切であり,「質問は創造性を養う第一歩」と私は考えている。 質問しない学生に欲求不満をもっていた私は,興味をもって本書を執筆することができた。 他人の質疑応答を聞くことによって,重要なことはなにかなど本質的なものを知る場合が多い。 本書はこのような役割をもつとともに,質問や問題の作り方など創造性の訓練にも役立つと思われる。

疑問は 55 か

実は、本書に収められた疑問は 55 ではなく 53 である。ではなぜ表題に 55 という数字があるかというと、 2 つ重複している質問があるからだ。具体的には、第 5 問と第 54 問が、また第 8 問と第 53 問が重複している。 これには意味があって、著者がそれぞれ二度目の問で新たな答を与えているからだ。このあたりは、著者の熱心さがうかがえる。

ローレンツ収縮

著者は、電磁気学が学生にとってわかりにくいのは、重要な法則が実験事実としてばらばらに登場し、これらを天下り的に認める必要があるため(本書 p.39)と考えている。 クーロン力とローレンツ力という二つの力をもとにして電磁気学はできているが、ローレンツ力はクーロン力とローレンツ収縮、電荷の保存則から導出されるので、著者はこのような方針で自身の電磁気学の本を著した。 ところがこの方針について査読者からコメントがあり、大学のフレッシュマンのレベルではローレンツ収縮を天下り的に認めるのが難しい学生もいるだろうというものだ。

私はこの記述を見て、そういえば特殊相対論を初めに習ったのは電磁気学だったことを思い出した。特殊相対論といえばローレンツ収縮が出て来るのだが、 なぜ相対論が電磁気学で必要なのか、不思議に思ったものだ。私は、大学で3回ぐらい電磁気学を習った。1年生の冬学期と2年生の冬学期、3年生の夏学期の3回である。 そのうちのどこで相対論が出てきたか、覚えていない。そして、本書を見てびっくりしたのは、ローレンツ力がクーロン力とローレンツ収縮、電荷の保存則から導出されるということだった。 そんなことは習った覚えがない、いや、習っていてもすっかり忘れていた。うーん。そういえば、北野正雄の新版 マックスウェル方程式は、 第3ラウンドの電磁気学を目指していると書かれていたのを思い出した。

そういえば、ローレンツ力のローレンツと、ローレンツ収縮のローレンツは同一人物だったことが、今調べてわかった。恥ずかしい。ちなみに、 ローレンツ・ローレンツの式においては、後者のローレンツ(Lorentz)が、このローレンツである。

なっとくシリーズ

書誌情報

書名 なっとくする電磁気学の疑問 55
著者 後藤尚久
発行日 2007 年 5 月 10 日 第 1 刷発行
発行元 講談社
定価 2700 円(本体)
サイズ A5 判 262 ページ
ISBN 978-4-06-154559-5
備考 川口市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi