「まえがき」から引用する:本書は「群・環・体」という,代数学の 3 つの基本概念の入門書である
本書ではまず集合・関数と初等整数論の説明があったのち、群の理論が解説されている。群の理論ではフロベニウスの定理が説明されている。フロベニウスの定理はどんなときに役に立つか。 たとえば、次の問題を解くときに役にたつというのがこの本の主張だ。pp.51-52 から引用する。
3 種類のお料理のお皿 `A` (シューマイ)、`B`(棒棒鶏)、`C`(酢豚)を,回転する円卓の上に 6 皿並べる.最初の並べ方は違っても, 回転すれば同じになる並べ方は,“同値(実質的に同じ)”といってよいであろう.そこで問題:
問 1 3 種類のお料理を 6 皿並べるとき,同値でない(回転しても同じにならない)並べ方は何通りあるか?ただし 1 種類か 2 種類しか並べない場合も,含めて数える.
ここで「フロベニウスの定理」と呼ばれているものは、一般には「コーシー・フロベニウスの定理」あるいは「バーンサイドの補題」と呼ばれているものである (「単に「フロベニウスの定理」と呼ぶと、複数の定理が該当する。)本書のフロベニウスの定理は p.69 で次のように記述されている。
定理 2(フロベニウス) 関数 `f:X rarr Y` の集合に `X` 上の置換群 `G` によって同値類 `~_G` を導入したとき,同値類の個数 `d` は次の式で与えられる:
`d = 1/abs(G)` (すべての `mu in G` に対する,`W(mu)` の和)
ただし `abs(G)` は群 `G` の要素の個数を表し,`W(mu)` は
`f*mu = f` であるような関数 `f:X rarr Y` の個数
を表す.
なお最近は、大学受験数学で円順列の個数を求める裏技的な扱いとして、バーンサイドの補題が紹介されることがある。バーンサイドの補題は、 大山達雄:パワーアップ離散数学でも解説されている。
ASCIIMath記法を使っている。
書名 | なっとくする群・環・体 |
著者 | 野﨑昭弘 |
発行日 | 2017 年 7 月 6 日 第 5 刷 |
発行元 | 講談社 |
定価 | 2700 円(本体) |
サイズ | A5 版 ページ |
ISBN | 978-4-06-154572-4 |
NDC | 411 |
備考 | 川口市立図書館で借りて読む |
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