訪江戸まち歩き 東京観光ガイドブック』

~歴史を歩く知的時空旅行~

Vol.ⅠからVol.Ⅴまで 大江戸五十三迷路

 

Vol.Ⅰ

1 .  日本橋~神田

2 .  秋葉原~浅草橋

3 .  浅草橋~人形町

4 .  日本橋~八丁堀

5 .  八丁堀~築地

6 .  日本橋~新橋

7 .  水道橋~秋葉原

8 .  市ヶ谷~九段下

9 .  竹橋~東京

10 .  半蔵門~丸の内

11 .  四谷~日比谷

Vol.

      12.新橋~浜松町

      13.虎ノ門~赤羽橋

      14.三田周辺

      15.高輪周辺

      16.北品川宿

      17.南品川宿

      18.大井~鈴ヶ森

      19.白金周辺

      20.目黒周辺

      21.広尾~麻布

Vol.

      22.赤坂周辺

      23.青山~渋谷

      24.千駄ヶ谷~表参道

      25.四谷~新宿

      26.新宿~中野

      27.四谷~早稲田

      28.新宿~早稲田

      29.早稲田~雑司ヶ谷

      30.大久保~落合

      31.飯田橋~関口

      32.茗荷谷~護国寺

Vol.

      33.小石川~白山

      34.巣鴨~板橋

      35.秋葉原~本郷

      36.根津~駒込

      37.駒込~王子

      38.王子周辺

      39.豊島周辺

      40.上野(寛永寺跡)

      41.谷中~田畑

      42.上野~浅草

      43.根岸~三ノ輪

Vol.

      44.浅草橋~浅草

      45.浅草寺

      46.日本堤

      47.今戸~千住

      48.今戸~鐘ヶ淵

      49.千住宿

      50.両国周辺

      51.深川周辺

      52.業平~亀戸

      53.向島~墨田

 観光・交流によるまちづくり

 私は、2003年に45歳で広告会社を早期で退職し、11カ月後に失業手当が切れるまで、新たな仕事を模索する必要がありました。大学で非常勤講師をする話があり、論文替わりとなる著作物が必要だったので、退職の前に関心をもったテーマツーリズムについて執筆することにしました。自由になるお金と時間がある団塊世代をターゲットにしたシニアマーケティングの視点で、『ふるさとを元気にする「集人力」観光・交流によるまちづくり』を出版しました。

 「集人力」という言葉にこだわって大失敗

 居酒屋で飲んでいるとき、日本各地から東京に出て来て暮らしている多く人が、「ふるさとを元気にしたい」という思いを持っていることを知りました。「少子高齢化」「人口減少社会」と言われる中、地域を元気にするためには、その地域の出身者やファンの力を結集することが大切だと思い、「集人力」という言葉を思い付きました。本のタイトルにこの「集人力」入れることにこだわったため、「集塵力」がイメージされ、「ゴミを集めてどうするの?」などと言われました。

 歴史は地域のオンリーワンの資源

 定住人口が減少する中、地域を経済的に活性化させる「観光」にスポットが当たっています。交流人口が増えて新たなビジネスが生まれれば、定住人口を増やすことにもつながります。景観や文化だけでなく、それぞれの地域の歴史は、他の地域とは異なるオンリーワンの観光資源です。その歴史を掘り起こし、磨きをかけることが大切だと考えました。テーマツーリズムの中から歴史ツーリズムに着目しました。

 “歴史の駅”研究所

 2004年に自営業者として再スタートするにあたり、タイムトラベル体験を提供する観光案内所を“歴史の駅”と呼んで、全国に広げたいと考えました。これは、地域交流センターが建設省(現、国土交通省)へ提案した「道の駅」をヒントにしました。そして、自営業の屋号“歴史の駅”研究所としました。VRやMRの技術を利用してタイムトラベルをする観光について検討しました。そして、最新の技術を利用するよりも、『江戸名所図会』や錦絵、切絵図などを見ながら想像力を活かす方が楽しいと感じました。
 今は“歴史の駅”を、徳川家康が江戸へ入府した時代から、明治以降、江戸が失われていく時代へ繋がる時空の扉として位置づけています。

 「周年未来カレンダー」

 広告会社で地域や企業にイベントを提案する時のネタを見つけるデータベースが「周年未来カレンダー」です。この「周年未来カレンダー」が、歴史を活かすアイデアを提供してくれます。歴史的な出来事があってから、50年や100年などの周年のタイミングで、出来事を記念するイベントが開催されます。東京では2003年の「江戸開府400年」が開催されました。2018年の「明治維新150周年」に向けて提案したいと思い、戊辰戦争について勉強を始めました。はじめは官軍を応援する気持ちがありましたが、やがて江戸時代の魅力に引き込まれることになります。

「訪江戸まち歩き」

 インバウンドによる訪日観光(Visit Japan)が活況を呈していますので、東京で江戸に思いを寄せながら、江戸の庶民になった気分で、江戸を発見するまち歩きを「訪江戸まち歩き」と呼んでみました。英語表記はDiscover AmericaDiscover JapanをヒントにDiscover Edoとしました。『江戸名所図会』の挿絵や「江戸切絵図」、錦絵などを見て、実際に多くの人が暮らす東京、仕事や買い物、観光などで訪れる東京を歩いてみると、江戸の名残(なごり)を発見できます。

 「訪江戸五十三迷路」

 江戸の名残(なごり)を感じられるスポットとなる場所を“歴史の駅”とし、53のコース毎に“歴史の駅”を繋いで23時間で歩けるルートを決めました。『訪江戸まち歩き 東京観光ガイドブック Vol.Ⅰ』では、江戸城外濠の内側を巡る11のコースを紹介しています。現在、江戸城の南側の10コースをVol.Ⅱとして執筆しています。
 また、一緒に歩いてくれる人を集って、毎月23回訪江戸まち歩きを楽しんでいます。しっかりとした組織があるわけではありませんが、サポートしてくれるメンバーも増えてきました。 

 「ありえる」、「なるほど」、「面白い」、「確かに」、「それもいい」

 江戸時代に多くの人が「庚申の日に寝ると、体の中にいる三尸虫(さんしちゅう)が天帝に告げ口する」ということで、徹夜で飲み食いして告げ口を防いだそうです。明治政府はそれを迷信として禁止しました。迷信であっても「ありえる」、「なるほど」、「面白い」、「確かに」、「それもいい」といった感覚を大切にしたいと思います。現代人でも「振袖火事」の物語を信じて一般的な名称としています。

 「火事と喧嘩は江戸の華(花)」と言い切った江戸っ子

 江戸時代後期、泰平の世が長く続き、庶民の暮らしは密でプライバシーも希薄でしたが、人情味にはあふれていたようです。しかし、地震や火事、飢饉などにも見舞われ、稼ぎの少ない浪人による事件も多かったようです。「火事と喧嘩は江戸の華(花)」と言い切った江戸っ子の感覚や、「粋」を体感してみたいと思います。火事で焼け出されても幕府が備蓄している米をすぐに放出してくれるという安心感があったのでしょうか。

 「きれいな下水」から「臭くて汚い下水」へ

 明治以降、「地球のガン」とも言われる産業革命が欧米から日本に転移し、科学・技術の進歩し、都市空間や生活空間に取り入れることで健康的で快適な暮らしを手に入れることができました。一方で江戸から東京への変化は、江戸の街を流れていた「きれいな下水」は「ドブ」や「ドブ川」と呼ばれる「臭くて汚い下水」となり、それらを地下に埋設することで見えたり、匂ったりしないようにしました。川を再生するため、下水処理場できれいになった水を再び川に流す取り組みも行われています。

 過去の私たちが、現在の私たちに残した「置き手紙」

 それらの原点は、『江戸名所図会』に代表される地誌や『東都歳時記』、江戸の切絵図、錦絵、娯楽のための冊子類などの出版物です。それらの中には、自然と共生していた江戸の姿が描かれています。江戸の出版物は、自然と共に暮らす知恵を、未来の私たちのために残した「置き手紙」とも言えるのではないでしょうか。

 200年以上の歴史があるエンタメ

 江戸時代のマスメディアだった出版は、寛政の改革(1787-93)と天保の改革(1841-1843)の間や、天保の改革後に隆盛を極めました。新吉原や芝居町で創出される新しい文化が印刷物によって江戸市中だけでなく全国へ広がって行きました。寛政の改革後、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』、式亭三馬の『浮世風呂』、曲亭馬琴の伝奇ロマン長編『南総里見八犬伝』などが出版されました。それらは現代でも楽しめるエンタメです。
 私が江戸時代に関心を持つようになったきっかけの一つが、2009年に森下恵子さんが脚本を担当したTBSのテレビドラマ『JIN--』(じん)です。そして2025年、NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」を楽しんで見ています。

現世のご利益

 訪江戸まち歩きの楽しみは、「知的満足と感動」「出会いと交流」「健康と生きがい」です。私は、池波正太郎の『剣客商売』を楽しく読んでいますが、『江戸名所図会』を読んで、場所を「江戸切絵図」で確認することで得た知識が役に立っていることがご利益だと感じます。来世で「成仏したい」といったご利益より、まだ、現世のご利益を求めてしまいます。

「歴史迷探偵ご難」

 私は、戦国武将にもほとんど関心がありませんでした。戊辰戦争でも官軍ひいきでしたが、会津の女性の悲劇を知り、太平洋戦争へ繋がる歴史を思い、「江戸」や「徳川」が好きになっていました。勝海舟が嫌いでしたが、今では好きな人物の一人です。歴史の迷路に迷い込んで、いつまでも迷路から脱出できませんが、見た目は「センセ(先生)」、頭脳は「まだら」その名は「歴史迷探偵ゴナン(御難)」と共に「訪江戸まち歩き」を楽しみましょう。

  

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