『熱帯語』の本の中で「日本で暮らすシンハラ人は自分たちのシンハラ語に日本語を混ぜて使っている」とありましたが、そんなことが出来るのでしょうか。あまりに唐突で信じられません。シンハラ語の「~カラナワ」が「~する」という意味だからといって「買い物する」を「買い物カラナワ」と日本語・シンハラ語をちゃんぽんに使って言う、などというのは出来すぎで信じがたいのですが……? (K・S)
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No-09 2004-07-10 2006-01-28
● そうですか、信じがたい。んん、その気持ちもわかりますが。 「日本語の気分でシンハラ語が話せる」と始めから強調しすぎてしまったかもしれません。そこにアレルギーを感じておられるのかも。日本語は特殊な言語だ、と思われているのかも。でもね、出来過ぎでも本当なんですよ。 外国語を自らの言語に取り入れるという作業はどんな言語でも行うことです。でも、それぞれの言語でそれぞれの取り入れ方がある。手前の言語文法の決まりを破ってまで取り入れることはありません。ですから、シンハラ語が「買い物カラナワ」という形を作るというのは特殊な外国語の取り入れ方と言えます。これが「~する」という言い方をする日本語とそっくりなのは、やはり、シンハラ語が”日本語っぽい”ことの証しになるのです。 『熱帯語』の本で、「 ![]() ![]() ![]() 少し日本語を離れてみましょう。 シンハラ語が英語を取り入れる時、どんな方法を選ぶか。これを考えてみましょう。実は、これも明治期の日本語が英語やフランス語、そして、ドイツ語を取り入れた時とまったく同じなんです。 「ヂ・アイランドThe island」という日刊紙があります。『熱帯語』でこの新聞を紹介しましたが、英語版とシンハラ語版があります。この「ヂ・アイランド」の英語版の1997年11月3日号に、読者の投書として「インハラ語を守ろう」という一文が紹介されました。(アイランド紙の記事『インハラ語を擁護する』を参照されたい方はここをクリック。) インハラ語。これはシンハラ語の誤植ではありません。投書者が「イングリッシュ」と「シンハラ」の二つの言語名を併せて作った造語です。 投書者が言うには、シンハラ人の話すシンハラ語には英語が多く混ざっているから、これをシンハラ語と言うには忍びない、イングリッシュ+シンハラ語だから「インハラ」と呼ぼう、そう主張するのです。そして、このインハラ語はもはや誰もが使っている”新しい言語”だからこの用法を認めよう、と呼びかけているのです。シンハラ語至上主義の方には面白くない呼びかけですが、私にすれば、これの現象は日本語の中のガイコク語氾濫の現状と寸分違わないと映るのです。「買い物カラナワ」の調子でシンハラ人が英語を自らの言語に取り入れていると見えてくるのです。 例えば、 meeting ekata yanna mama late yuna ミーティング エカタ ヤンナ ママ レィト ウナー。 という「インハラ語」の一文が紹介されています。この仕組みを考えてみましょう。これを英語とシンハラ語の単語に分けると、
になります。英語をそのままにしてシンハラ語の部分を日本語訳すれば次のようになります。
『熱帯語の記憶』でお話したようにmeeting(ミーティング)
に eka(
町の通りにたむろする物乞いの言葉として紹介されているので、例に上げるには気がひけるのですが、この「ランチ」も「ファイブ・ルピー」も英語の言い方です。シンハラ語でなら「 |