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シンハラ語の名詞も活用する、を学ぶ Aウィバクティを作る助詞 2005-12-30 |
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Aウィバクティを作る助詞
かしゃぐら通信2005-12.30 / 2007-Dec-20 2008-Jan-15
シンハラ語を話すための
無意識の力
シンハラ語のニパータと呼ばれる品詞の中に格ニパータと呼ばれる一群の接辞があります。格ニパータは日本語の格助詞に相当する接辞で、格ニパータが名詞句を作るときその語形と文の中での役割は日本語の名詞句と対応します。シンハラ語が日本人にとって覚えやすいのは、ここに大部分の理由があるようです。
『シンハラ語の話し方』のニパータの章で触れたように、格ニパータは、日本語の格助詞感覚で扱えます。殊更にシンハラ文法を異形のものと意識せず、シンハラ文法を日本語風にアレンジして覚えればシンハラ語会話の上達は早いのです。
前回、「シンハラ語の名詞とウィバクティVibhakthi」では次の例文を取り上げました。
ラマヤー バッラーワ バンディナワ
子供が 犬を つなぐ
日本語の「が」「を」は格助詞。「が」は主格を、「を」は対格を示します。シンハラ語には主格を示すニパータがありません。「を」にはvワが対応します。この文の格関係は次のようになっています。
ラマヤー バッラーワ バンディナワ
子供が 犬を つなぐ
主格/主語 対格/目的語 動詞/述語
主格の「犬」が「犬を」という対格を取る時、シンハラ語では「バッラー(主格)→バッラーワ(対格)」となります。対格ニパータのワwaが日本語の対格助詞「をwo」なのです。W音を共有しているので、日本人にはすんなりと聞き取れます。「シンハラ語の話し方」のプレ^-ヤー用CDでWa音をお聞きになった方はこのことを実感されたと思います。もっとも、今では「をwo」を「おo」と同じに発音する日本人が大多数なので、「ワwa」と「をwo」はW音を共有するといってもピンと来ないかも知れません。
ただし、シンハラ語の対格にワを用いるのは生き物(動物)を表す名詞で、無生物や動かない生物(樹木など)にはワを名詞語尾に添えず名詞だけで対格を表します。ここからシンハラ語の主格と対格は同形という現象が生じます。
では、次の例文はどうでしょう。
彼女は猫が好き
この例文、クセのあることにお気づきですか。「が」は主格を表す格助詞です。でも、ここでは「好き」の主語にはならない。「彼女は」は「猫が好き」の補語という立場にあります。
もう一方の「は」ですが、これは副助詞(係助詞)。だから「彼女は」も統語上(形式上)、主語にはならない。「彼女は猫が好き」で「彼女は猫を好む」という意味が通るのに文法の原則からは理が通らないのです。
「彼女は猫が好き」をシンハラ語に変えてみましょう。
アヤ バララーワ カマティ
彼女は 猫を 好き
@の要領で文を作ればバララー(猫)にワを付けてAになります。でも、バララーワは「猫を」のことですから「猫が」にはなりません。しかも、シンハラ語ではA-1の言い回しはどこかおかしいとされます。次の例文をご覧ください。
アヤ バララータ カマティ
彼女は 猫が 好き
「猫が好き」の「が」はシンハラ語で「タ」になる。これはシンハラ語質問箱のQA57の「あなたは日本語に長けているのね」やQA55の「夢に見る」でお話したように動詞の種類の違いに原因があります。
シンハラ語のカマティ(好き)はカマティ・ウェナワ(好きになる)という自動詞なのです。そして、動詞が自動詞のとき主語のバッラーはニパータのTaタをつけて初めて主語となるのです。→詳細はQA55 QA57参照
A‐1の文はシンハラ文として正しくない、A−2が正しいということになります。ただし、「猫が」にあたる「バララータ」は主格ではなく与格で表示されています。でも与格の「猫に」は主格主語としての「猫が」にならないはず。
与格は主語になれるのか。主格主語とか、与格主語とか「格」にまつわる言い方をしていますが、シンハラ構文をはっきりと理解するのはこの格文法での捉え方が便利なのです。なぜか。それはシンハラ文法そのものが格文法で説明されているから、という至極もっともな理由なのですが、日本語が格文法を一般的に採用していないので(学校文法では教えない)、だいぶ違和感があるかと思います。
格という呼び名に違和感があるでしょうが、これまでお話してきたように、シンハラ語と日本語の構文は同じシステムで作られていますから、文法解釈が違っても、文法そのものは何も違いがあるわけではありません。
実は「彼女は猫が好き」という例文を先に挙げたのは、この文の成り立ちを日本語文法で説明しようとするとどうにもうまく説明が出来ないのに、シンハラ文法で説明すると、これがとても簡単だということを示すためだったのです。
文法規則というものは千差万別でいろいろある。日本語とシンハラには文を解析する手法である文法に大きな隔たりがあるが、日本語とシンハラ語は比較対照として実に相性がいい。日本では日本語とシンハラ語の比較研究が少ないのですが、米国からは多くの比較論文が提出されています。
残念なことに英語による日本語とシンハラ語の比較研究は英文法のルールの範囲内でしか表せないので、シンハラ文がシンハラ文法のルールで表している独特のニュアンスが消されています。シンハラ文に言語としての普遍性を見出すには英語のUG系の分析が有効ですが、シンハラ語の特殊性を見出すには適当ではないのです。このシンハラ語の特殊性を切り出すことが出来る言語は、おそらく、日本語がもっとも適しているでしょう。日本語はシンハラ語とは系統が異なり、言語間の接触が歴史上知られておらず、文法規範さえもまったく違っていることが互いの言語の特殊性を切り出す最初の前提条件にあります。そして、言語の実際の姿が近似していることも比較の条件として扱いやすいのです。
※シンハラ語の与格主語については「皿を割れたとなぜ言える」をご覧ください。
名詞は活用する
シンハラ文法では「名詞は活用する」と言います。日本語では名詞の語形変化を曲用と呼んでいましたが、その用語も今は使われないようです。ただ、動詞の語形変化との区別をつけるには曲用という用語も便利でしょう。
活用は「名詞+格ニパータ」で表され、その形は日本語の「名詞+助詞」と変わりません。
シンハラ語では名詞の活用をワラナギーマvaranagiima、活用した名詞の形態をウィバクティvibhakthiと呼んでいます。このウィバクティが英語では「case」と訳され、「格変化」はワラナグヌ・ウィバクティvaranagunu
vibhakthi(活用する-ウィバクティ)と言われます。ワラナギーマは動詞の変化にも使われるので、文法用語としては不足を感じさせるのですが、そもそも単語を変化する語、変化しない語の二つに分けるところから品詞の別が付けられた事を思うと、むしろワラナギーマの一語で名詞と動詞の語形変化を表したほうが明晰かもしれません。
シンハラ語の格変化は英語のI主格、my属格、me与格のように名詞の語形そのものを変えるのではなくて、「名詞+格ニパータ」、日本語の「名詞+格助詞」の類型で格変化を作ります。では、次回はその格変化を調べてみましょう。→B名詞格変化一覧1
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