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トップページ> 映画>レビュー> 2006年> 4月
April, 2006
ランド・オブ・プレンティ
Land Of Plenty
監督: ヴィム・ヴェンダース
脚本: ヴィム・ヴェンダース
マイケル・メレディス
音楽: トム&ナクト
(トーマス・ハンライヒ&パトリック・クリステンセン)
出演: ミシェル・ウィリアムズ
ジョン・ディール
ウェンデル・ピアース
リチャード・エドソン
バート・ヤング
公式サイト(ドイツ語)
公式サイト(日本語)
なんじゃ、この消化不良な気分は…。
ヴィム・ヴェンダースといえば『ベルリン/天使の詩』や
『パリ・テキサス』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などで
有名なドイツ人の映画監督です。

で、そんなドイツ人監督が「9・11」後のアメリカを題材にして
たったの16日間で一気に撮影したというのが、今回の
『ランド・オブ・プレンティ』(豊かな地)になります。

アメリカ生まれイスラエル育ちの娘ラナが故郷へ戻る。
伯父ポールにあるものを渡しに行こうと、彼を探すが
彼は傍から見れば戦争ゴッコのような真似を続け、
アメリカを守るという大義名分のために生きている男。
ある日、路上でアラブ人が殺害され、そこに居合わせた2人は
亡骸を家族に届けるという名目でアメリカ横断の旅に出る…。

というお話。

-----

まず、「戦争ゴッコのような真似を続け、アメリカを守るという
大義名分のために生きている」という伯父さんの気持ちというか
立場というか、そういうものが理解できるかどうか、が
この映画に入り込めるかどうかのカギではないかと思いますが

オレは、まったく理解できなかったので、ダメでした…。

で、伯父さんの孤独な戦いについては
けっこうきっちり描かれているのに、
ラナについての人物的背景はあまりよくわからないままで、
なんとなーく伯父さんのペースに巻き込まれてる、っていう
ただそれだけにしか見えませんでした。
ほんとはもっと深い過去の関係性なんかもあったはずなのに
そのへんはボカしたままでラストまで行ってしまい、なんか
ちょっと消化不良でしたねー、観てるほうからすると。

「16日間で一気に撮影した」というのが悪い方向へ
出たのかな?(粗い映像や物語の練りが足りない点)とも
思いましたが、よく考えてみると、オレ、
以前、ヴェンダース監督の『ミリオンダラーホテル』を
レンタルで借りてきて、あまりのつまんなさに
途中で観るのをやめたという実績があることを忘れておりました…。

いやぁ、ヴェンダース監督とは相性が悪いんだな、きっと。

あ、あとね、この映画の音楽が、ちょっと…。
どの音楽を聴いてもレディオヘッドのパクリにしか
聴こえなかったからなんですけども。
『Kid A』と『Hail To The Thief』の音感を
足して2で割ったものがそのまま使われてたような感じで、
いただけませんでした…。
映画の雰囲気にも合ってなかった気がするし。

っつうわけで、久々の低得点。
相性というのは大事ですね。
posted on 2006.04.22
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かもめ食堂
Ruokala Lokki
監督: 荻上直子
原作: 群ようこ
脚本: 荻上直子
音楽: 近藤達郎
出演: 小林聡美
片桐はいり
もたいまさこ
ヤルッコ・ニエミ
タリア・マルクス
マルック・ペルトラ
公式サイト(日本語)
これまた超おもしろい! ★★★★★
前作『バーバー吉野』も観ましたが、
この荻上直子さんという映画監督、おもしろいですねー!
『バーバー』のほうは、少しシニカルな笑いのツボを
刺激してくるタイプでしたけど、今回の『かもめ食堂』は
もう超ど真ん中!心温まる人間ドラマに仕上がっています!

小林聡美を主人公にした映画、という前提のもとに書かれた
この物語は、フィンランドが舞台です。
そこでひとり、食堂を開店させたのが主人公・サチエさん。
お店イチオシのメニューが「おにぎり」であったせいか(?)
開店当初はしばらくお客がひとりも来ませんでしたが、
ふらっとフィンランドまで来た"わけありのオンナ"
ミドリさん(片桐はいり)や
飛行機の乗り継ぎ中に手荷物がなくなってしまったマサコさん
(もたいまさこ)など、個性的な日本人と知り合い、
そしてフィンランドの人々にも次第に受け入れられていく姿を
コミカルに描いています。

「コミカルに」なんつって、一見冷静に書いてますけど、
もうね、出だしから大爆笑っすよ!
笑いの落とし穴がそこたら中に存在していて、オレなんか
もうものの見事に落ちまくりでした!

はっきり言って、
小林聡美・片桐はいり・もたいまさこという3人を並べるのは
反則です。単品で置いてあっても面白いのに、
3人がそばにいたらもう、30倍面白くなってました!
特に、もたいまさこさん。
あの人はすげぇな。
海辺に立ってる後ろ姿、ただそれだけで、
マサコさんが抱える人生のバックグラウンドとか、
いろんなことを表現できてる気がしましたから。
「わたしの荷物、届かないんだけど」
って、このセリフだけで笑わせられる人って
なかなかいないと思った!

あとね、やっぱ、小林聡美さんは
今もっとも輝いてる俳優のうちのひとりですね。
冒険しつつも安定している、という絶妙なバランス感覚を
作品に与えてくれる人です。
今、彼女と同じレベルにいるのは、
宮沢りえ、小泉今日子くらいかなぁ、オレの見立てによると。
(信憑性低いね…)
この人たちの出る作品は見逃せない!と
そんな気分にさせてくれます。
(実際、かなり見逃してますけども…)

-----

日常生活って、毎日毎日、
意識しないでも続いていくものですよね。
そんな連続感・日常感に満ち満ちた映画でした。
いつ終わってもおかしくない一方、
いつまでも続くんじゃないかと思えた映画でした。
いつまで観続けても、きっと飽きないだろうな、と思わせてくれた
この映画に、オレは感謝したいと思います。
そして、おいしそうな日本の家庭料理と
フィンランドのお国柄にも感謝!
素晴らしい102分をありがとう。

p.s.
この映画を観に行く際、
同行者に「今日は何ていう映画を観に行くのだ?」と聞かれたので
『かもめ食堂』と答えたところ、信じてもらえませんでした!
そんなにありえないタイトルでしょうか!?
posted on 2006.04.17
▲TOP
クラッシュ
Crash
監督: ポール・ハギス
脚本: ポール・ハギス
ボビー・モレスコ
音楽: マーク・アイシャム
出演: サンドラ・ブロック
ドン・チードル
マット・ディロン
ジェニファー・エスポジート
ウィリアム・フィッチナー
ブレンダン・フレイザー
テレンス・ハワード
クリス・"リュダクリス"・ブリッジス
サンディ・ニュートン
ライアン・フィリップ
ラレンツ・テイト
マイケル・ペニャ
公式サイト(英語)
公式サイト(日本語)
第78回アカデミー賞最優秀作品賞・脚本賞・編集賞受賞
何年かに一度の「ど真ん中」映画! ★★★★★
ロスのハイウェイで起きた交通事故をきっかけに、
さまざまな人種、階層、職業の人々の人生が連鎖反応を起こす
ヒューマンドラマ。今年のアカデミー賞を獲った作品です。

話の前半部は、ひたすら「人種差別」のオンパレードのような
展開で、え?アメリカってこんなにひどいの…?みたいな
誤解(誤解じゃないのかもしれないけど)をしてしまいそうな
ほど、イヤなムード。

特に、マット・ディロン演じる警察官は悪人でした。

警官は、小悪人。

職権を乱用して、人をコテンパンに侮辱する。
人種差別なんか当たり前。
サイテーなヤツです。そう見えました。
でも、そのウラで、彼には病気を抱えた父親がいて
そんな父を健気に看病する孝行息子でもあったのです。

警官は、小悪人だけど孝行息子だった。

小悪人かつ孝行息子である警官は、パトロール中に
交通事故の現場に遭遇し、クルマに閉じ込められた女性を
間一髪のところで救助しました。

警官は、小悪人だけど孝行息子で、しかもけっこう勇気がある。

人の印象ってのは、見る角度によって全然違う!
ということが、よーくわかるエピソードでした。
果たして、あの警官は「いい人」なのか「悪い人」なのか?
どっちでもあり、どっちでもない。
どっちだなんて決められねぇよ!って感じです。
でも、人種とか見た目だけでイメージを決め付けてしまう傾向が
ありますよね、特に最近は9・11の影響なんかもあり。
それがいかにウソくさくて、一方的で、真実を捉えていないかが、
こういうエピソードを見ると、よーくわかります。

オレも、そういう、人の見方、するもんな、反省せねば。
反省。

-----

この映画は、いろいろな登場人物といろんなエピソードが
微妙に絡み合いつつ進行していく「群像劇」です。
そして「群像劇」の中にも、上に書いたような
多面的な人物描写がなされていて、とても素晴らしい映画でした。
作品賞、脚本賞、編集賞を獲ったのもうなずける感じ。
一見、かなり暗い内容だけど、実は深い。相当深い。
でね、映画の終盤、キーとなる時間帯に、女性の声で
切々と歌い上げられる主題歌が流れるんですね。

これが、また、いいんだ!
(エンディングに流れたステレオフォニックスの歌もよかった!)

同じような「群像劇」で、主題歌が素晴らしい映画を
ぼくはもう一本知っているんですけど、っていうか、
その映画は『マグノリア』っていいまして、ぼくの大好きな
映画なんですけど、この2本には何か共通する雰囲気がありました。

生きるって、簡単なことじゃない。
正直ツラいことも多い。
でも、救いはある。時々だけどいいこともある。
変わるきっかけは、どこかにきっとある。
だから、あきらめたらダメ。
幸せをつかむそのときまで、がんばろう。
歯を食いしばって、がんばろう。

と、この2本の映画は言っているような気がします。
『マグノリア』は、そのことを伝えるために3時間かかってますが、
この『クラッシュ』は2時間以内。
濃縮されているのに、作品としての完成度が異常に高いです。
大好きです。傑作です。
posted on 2006.04.10
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