不器用でも、我が道を往く。 |
よく「日本のアニメやマンガのレベルはすごく高い!」と
言われていますよね。日本人から見たらそうなのかもしれないし、
諸外国でもそういう点は認められているのかもしれません。
一方、アメリカのマンガ(コミックといったほうが正しい?)は
日本ではイマイチ馴染みが薄いような気がします。
親近感が湧かないというか、大雑把に見えてしまうというか。
アメコミ原作の映画なんかを観ても、同じことが言えるのも事実。
それまでフツーの市民だった人間が、ある日突然すごいパワーを
手にし、ヒーローとして活躍する(苦悩する)みたいなもの
ばかりで、「アメリカのマンガって、こんなやつばっか?」
みたいな感覚に陥ってしまいます。
でも、アメリカにもこんなマンガがあったんですね!
『アメリカン・スプレンダー』!
ダメ男のダメっぷりや、冴えない日常に起きる些細な出来事を
ありのままに(そして自虐的に)描くセルフ・ポートレートな
作品なんですねぇ。最近ではマンガをほとんど読まなくなった
オレのイメージでは、吉田戦車や西原理恵子、中川いさみ、
リリー・フランキーなんかに通じる作風なのかな?と思います。
(『アメスプ』のほうがずいぶん先に発表されていますが)
その原作者にして主人公であるハーヴィー・ピーカーの半生を
漫画的な手法を取り入れた斬新な映像と構成で描いた映画が
本作になります。
非常にいい映画でした。
『サイドウェイ』でもダメ男っぷり全開で好演していた
ポール・ジアマッティが、ここでも素晴らしいヘタレ中年を熱演!
背中を見ただけで人格のすべてを物語ってしまえるような
あのなりきり方は尋常ではありません。
わたくし、この俳優さんを初めて認識したのが
『マン・オン・ザ・ムーン』だったのですが、これからも
注目していかなければならないことを再確認した次第です。
そして、ハーヴィーの奥さん役を演じたホープ・デイヴィス。
『ワンダーランド駅で』の美しいイメージとは真逆の
「自称:鬱病」なオタク中年女性の役柄なんですが、
これまた不思議なくらいハマっておりましたね。
っていうか、観ているうちにだんだん、奥さん本人の顔に
そっくりに見えてくるから、余計に不思議なんですよ〜。
メイクの力もさることながら、ホープ自身のなりきり度が
反映されている結果だと思いました。
この映画、マンガと実写の融合、
主人公本人へのインタビューと役者による演技の融合、
空想と現実の融合、みたいないろんな要素を混ぜ合わせて
映像化されている、非常に実験的な作品です。
で、登場する主人公たちのアタマの中も
一筋縄ではいかない複雑さを持ち合わせているため、
さまざまな意味でハードルの高い題材だったんじゃないかと
思いますが、ものの見事に整理整頓され、完璧にまとまって
いたなぁ、と、ジワジワ感動してしまいました。 |
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