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No.116 十勝岳
所用で北海道まで出かけたついでに、3泊4日で北海道の山を登る計画を立てました。十勝岳(2077m)は、その最初の山行です。北海道の山を登るのは初めてですが、幸い天候に恵まれて頂上に立つことができました。

日時 2009年(平成21年)5月30日(土)
天候 晴
同行 なし

所要時間
望岳台(9.35) ←1時間5分→ (10.40)雲ノ平分岐(10.40) ←15分→ (10.55)避難小屋(10.55) ←1時間35分→ (12.30)スリバチ火口(12.45) ←1時間40分→ (14.25)十勝岳頂上(14.45) ←50分→ (15.35)スリバチ火口(15.35) ←25分→ (16.00)避難小屋(16.15) ←45分→ (17.00)望岳台

山行概要

十勝岳頂上から見た富良野岳
十勝岳山頂からの富良野岳
旭川駅前のレンタカー会社は、朝8時から営業開始です。入口が開くのももどかしく中へ入り、車を借りる手続きを済ませました。8時15分にレンタカー会社を出発し、望岳台にはちょうど1時間で着きました。望岳台の駐車場には車が何台か止まっていますが、不思議なことに人影は見えません。いつものように身支度をして歩き始めました。登山道周辺に雪はあまり残っておらず、乾いた砂利道の上を歩きます。やがて右手に白銀荘を示す導標が現れ、その先で目の前に雪面が広がっています。緩い斜面なので、そのまま雪面の上を歩き始めました。この雪はすぐ終わるのかと思っていると、なかなか終わりません。やがて、目の前に雪のない夏道が現れ、この夏道を少し歩くと、雲ノ平分岐に着きました。ここには美瑛岳方向と十勝岳方向を示す導標が立っています。ここからは、少し上の方に十勝岳避難小屋が見えます。
雲ノ平分岐で休もうかとも思ったのですが、時間が中途半端だったので、十勝岳避難小屋で一息入れることにしました。ところが、避難小屋に着いてみると、先客が入口に陣取っていてなんとなく小屋の中に入り難いので、ここも素通りし、小屋の少し先で一息入れました。目の前には雪渓が広がっており、この上を2組のパーティーが上を目指しています。雪渓の上をどのように歩くか大体目処をつけ、腰を上げました。雪の上を歩くのは疲れます。避難小屋からは少しの間ですが、雪渓と平行して雪のない斜面が続くので、この上を歩きました。やがて、これが終り雪渓に入ります。雪は思ったとおり、陽射しを受けてくさっており、ぐさぐさです。斜面はそれほどきつくはありませんが、つぼ足では頻繁に滑ります。持参した簡易アイゼンを付けてみました。しかし、爪が短く殆ど効果がありません。されば、ということで8本歯のアイゼンに履き替えてみました。こちらは、確かにある程度効果があるので、しばらくこちらを付けてあるきました。アイゼンの重さが気になりだした頃、雪渓上を左にトラバースして、登りが緩やかになったので、アイゼンを外しました。少し先に雪のない尾根が見えるので、ここに取り付き、僅かに歩いたところで夏道が現れました。
急な斜面に九十九折の夏道が続いており、どんどん高度を稼げます。ところが、この夏道を歩き始めると風が出てきて、みるみるうちに強風になりました。更に進むと上から男女2人のパーティーが下ってきました。私を途中で追い越し、少し前を先行していたパーティーです。真剣な表情で、「上はものすごい」、と言って下って行きました。風が一段と強くなり、導標を立てたケルンが現れ、スリバチ火口の縁に着きました。目の前に美瑛岳、その左に大雪山、これから向かう十勝岳山頂と見晴らしは素晴らしいのですが、強風が吹いています。先ほどのパーティーが言っていたとおり、ものすごい風で、今年3月に登った茶臼岳を思い出しました。風に圧倒され、気持ちは下山する方に少し傾きかけましたが、このまま下るのはなんとも惜しい気がします。近くのケルンの風下に身を寄せ、一息入れることにしました。
12時を過ぎていたので昼食を取る事にしましたが、強風でガスバーナーは使えません。湯を沸かせないので、ラーメンをあきらめ、非常食兼行動食に持参したチョコレートサンドを食べました。今日の天気予報は、午後から曇りで、朝方は雲ひとつかかっていなかった十勝岳は、山頂付近に雲がかかり始めています。しかし、上空は青空が広がっていて、辺りがすぐ雲に覆われることはなさそうです。強風と天気が気になりますが、滅多に来ることが出来ない北海道の山なので、雲が広がりだしたら引き返すことにして、未練がましく行けるところまで行ってみることにして、歩き始めました。
十勝岳ルートマップスリバチ火口の縁は強風が吹いていましたが、ここを過ぎて少し下り始めると風は穏やかになってきました。風が穏やかになると、気持ちにも余裕が出てきます。周りの景色を楽しみながら、しばらく続くフラットな火山礫の中の道を歩き、やがて頂上直下の雪の壁の下に着きました。風はありますが、先ほどまでの気持ちが萎えるような強風ではありません。但し、頂上は既に雲に包まれています。引き返す気持ちは、失せていましたが、結構な雪の壁なので、しばし気持ちを整理しました。雪の壁の上の方で、声がしたのをきっかけに登り始めました。登り始めるとすぐ、外国人(欧米系)男性2人と日本人男性1人のパーティーとすれ違いました。外国人とは思っていなかったので、いきなり、片言の日本語で「こんにちわ」、と挨拶された時はビックリです。この雪の壁は、最初緩やかですが、徐々にきつい斜面に変わります。稜線まであと僅か、一段ときつくなった斜面でステップを切りながら登っていると、左足が粘るような感じになり、痛みが走りました。今年4月の丹沢表尾根の山行の時と全く同じ症状です。足がつりました。休んでも立っていると左足の腿がきりきり痛みます。一歩歩いては立ち止まるようにして、上を目指し、雪のない稜線に着いた時はヤレヤレです。岩に腰掛けてしばらく休み、痛みが引いたところで立ち上がってみるのですが、立ち上がると左足に痛みが走ります。何回かこれを繰り返しましたが、旨く行きません。時間はどんどん経過するので、少々あせりも感じるようになりました。足の負担を少しでも軽くしたいので、結局ザックをここにデポし、空身で上を目指しました。数歩歩いては、立ち止まりを繰返し、やがて岩の上の石碑が目に入り、小さな雪の塊を乗り越えると、十勝岳の頂上でした。
頂上に雲はかかっていませんでしたが、周りは雲が流れていて真っ白です。それでも時折雲が切れ、辺りの景色が眺められます。美瑛岳とその向こうに大雪山、振り返ると富良野岳が眺められます。そのうち、眼下の雲も切れるようになり、今登ってきた雪の壁やスリバチ火口も見えます。雲の切れ目から現れる風景に、しばし目を奪われていました。しかし、時計を見ると既に午後2時半を回っています。心は残りましたが、下山の途につきました。
ザックをデポした場所で今日2回目の昼食をとり、ザックにつけたアイゼンなどを確認して下りの開始です。登りに難渋した頂上直下の雪の壁は、尻セードであっという間に下に着きました。この頃には左足の痛みはウソのように消えており、初めて北海道の山を登った満足感で、気持ちも浮き立ちます。スリバチ火口の縁は相変わらず強風でしたが、下りなので気になりません。その先の長い雪渓も下りは快適でした。雪渓を下り、登りの時見なかった避難小屋の中を見ようと、小屋へ入ったら、若い外国人のペアーが居て、ビックリ、一瞬言葉が出ませんでした。今日は、外国人に驚かされる日のようです。このペアーは今日はここに泊り、明日十勝岳〜十勝岳温泉のコースを歩くとのことでした。片言の英語で雑談をして、最後に記念撮影をして分かれましたが、聞いていたアドレスに下山後写真を送ると、返事があり、翌日は強風で登ることが出来ず、予定した十勝岳〜十勝岳温泉は歩かなかったとのことです。
望岳台に着いて見ると朝方静かだった駐車場付近は、家族連れや若いカップルで賑わっていました。駐車場で荷物をまとめ、今日の宿泊先である十勝岳温泉に向かいました。


この日は土曜日、且つ好天だったので、多くの人が登っているのではないかと思っていたのですが、山で行き交ったのは、4パーティー、9人で、しかもそのうち4人が欧米系の外国人でした。

十勝岳温泉では、凌雲閣に泊りました。ここの温泉は錆止め塗料のような茶色で、温度は温めです。凌雲閣は県道291号線の終点にある1軒屋ですが、携帯電話(ドコモ・ムーバ)が使えました。翌5月31日は、富良野岳へ登るつもりだったので、宿に富良野岳の状況を聞いてみました。登山道は未だ雪に埋もれていて、今シーズン、途中まで登った人はあるが富良野岳の頂上まで登った人は知らないとのことでした。
31日は、朝起きてみると車を揺らすほどの強風で、昨日は見えていた凌雲閣の前の山(三段山?)はすっかり雲に覆われて、今にも雨が振り出しそうでした。初めての山、雪道、強風、悪天と悪条件が揃い過ぎるほどそろっているので、富良野岳に登るのは中止し、富良野町の観光に切り替え、富良野町とその周辺をドライブし、次の宿泊地の旭岳温泉に向かいました。

望岳台駐車場 望岳台
望岳台レストハウス朝着いた時は、車が10台ほど止まっていたが、人影は見当たらなかった
十勝岳は、写真中央の小さなピーク
写真の手前側にレストハウス(写真右)がある
この写真では分かり難いが、前十勝のピークの脇から噴煙が上がっている
十勝岳登山道入口 十勝岳登山口
上の望岳台駐車場のすぐ上にある
登山道に雪はなく、道は乾いていた
登山道周辺に雪は殆ど残っていない
また、樹木も殆ど生えていない
ここから、十勝岳頂上まで、登山道の周辺に樹木は殆ど生えていなかった
ここから、十勝岳頂上まで、日陰は途中にある避難小屋の1ヶ所だけ
十勝岳登山道 白銀荘分岐
白銀荘と表示した導標が立っており、その方向に広い道がずっと続いている

    
途中の雪原 最初の雪面
ここから、緩い傾斜の雪面が続く
この雪面は下の写真の雲ノ平分岐の手前まで続いていた
雲ノ平分岐 導標の標識雲ノ平分岐
美瑛岳と十勝岳方向を示す導標が立っている
導標には、写真右のような標識が取り付けられている
十勝岳避難小屋 小屋に居た外国人ペアー十勝岳避難小屋
真新しく、中はきれい
下山時、中へ入ったら若い外国人ペアーが休んでいた
片言の英語で話してみると、ドイツとフランスから来たとのことで、国際登山隊だと笑っていた
今晩ここに泊り、明日、十勝岳を越えて十勝岳温泉に下るとのことだった
メールのアドレスを聞き、この写真を送ったら風が強くて引き返したと返事をくれた
前十勝の噴煙 避難小屋から少しの間、雪のついていない斜面を歩ける
昔あったスキー場の施設の残骸と思われる建物跡等が散在している
写真中央右側に前十勝の噴火口の白い噴煙が写っている
十勝岳避難小屋前の雪渓 雪渓
雲ノ平分岐から、昭和噴火口近くまで続いている
そうきつい斜面ではないが、雪がグサグサになっていて結構歩きにくい
夏道は、この雪渓の左側の尾根にあるようだが、雪渓の上を先行するパーティーの後を辿ったため気が付かなかった
設計の上部 雪渓終端部
ここで雪渓から雪のついていない尾根に取り付いた
雪は更に上まであり、上方にはスキーのシュプールの後が残っていた
スリバチ火口 ケルンの標識スリバチ火口の縁
この日は強風で、ここに立っているのは少々つらかった
写真のケルンの向こう側に噴火口跡が広がっている
遠景は美瑛岳
この導標の標識(写真右)から、雲ノ平分岐より距離で1.6km、高さで460m、歩いたことになる
スリバチ火口からの眺め 上の写真から少し右に目を転じると、スリバチ火口の向こうに、十勝岳から美瑛岳へ続いている稜線が眺められる
写真のように、この辺りには草木1本生えていない
スリバチ火口から十勝岳山頂 十勝岳山頂
上の写真から更に右に目転じると、十勝岳の山頂が眺められる
写真中央右のピークが十勝岳
頂上直下の雪の壁まで、平坦な道が続いている
天気予報は午後から曇り
山頂に雲が纏わり付く頻度が多くなり、やきもきしながら山頂を見ていた
スリバチ火口から美瑛岳 美瑛岳
スリバチ火口の向こう側には美瑛岳が眺められる
大雪山 大雪の山々
上の写真の美瑛岳の左に、旭岳などの大雪の山々が眺められる
5月も終りだが、雪が未だかなり残っている
北海道は、初めてなので周りの山の名前は分からなかった
この山名も帰宅してから地図等で確認した
十勝岳山頂 スリバチ火口からは、フラットな道がしばらく続く
前述のように、ここは写真の左から右方向に強烈な風が吹いていた
しかしこの先で、火口の縁から離れると、この風はウソのように静かになった
火山礫の中の道 火山礫の中のケルンスリバチ火口を過ぎると、火山礫のフラットな尾根の上、というよりだだっ広い広場の中を歩く
ガイドブックには、コースを外しやすい、とあるが、小さなケルンや石が点々とコース沿いに置かれており、よほど濃いガスでも出ない限り、迷うことは無い
頂上直下の雪の壁 頂上直下の雪面
この辺りから、十勝岳の頂上まで、標高差は約200m
下から見上げると結構な壁である
十勝岳の頂上は写真左上方で雲の中
夏道は雪の壁の右端辺りにあるようだが、気が付かなかった
雪の壁下部 雪の壁下部
下は緩いが上部は傾斜がある
上部は雪崩が気になる斜面だったがデブリは見当たらなかった
雪の壁上部 雪の壁上部
上の方は斜面がきつくなる
この少し上、写真左の岩が黒く露出している辺りで、左足の腿がつった
山で、足がつったのは、これが2回目
この斜面ですれ違った3人組のパーティーは、この辺りを尻セードで下っていた
私も下山時に試したが、尻はびしょ濡れ

雪の壁終端部 雪の壁上端
ここまで来ると、十勝岳の頂上は目と鼻の先
時折、十勝岳の頂上が雲の中から姿を現した
頂上直下 頂上直下
雪は殆どついていなかった
冷えた溶岩の中を九十九折の登山道が頂上まで続いており、きつい登りはない
十勝岳頂上 十勝岳頂上
十勝岳頂上には大きな岩が堆積しておりさほど広くはない
一番高いところに石碑が建てられおり、石碑には「光顔巍」と彫られている
この意味不明
頂上は無人、私一人で占有した
美瑛岳と大雪山 頂上からは美瑛岳が目の前に、その向こうに大雪山が眺められる
富良野岳 上の写真の反対側には富良野岳が目の前に聳えている
時折雲が切れ、全貌が眺められた

頂上からの眺め
眼下には、前十勝、スリバチ火口等が箱庭のように広がっている
スリバチ火口
富良野岳:一瞬雲が切れ、富良野岳の全貌が姿を現した
富良野岳

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