Environmental Health News 2019年9月29日
ピーター・ダイクストラ:いつわりの利益
フラッキング、電子タバコ、そしてグリホサートは、
当初は健康と環境のためにより安全な解決策であるとして歓迎された。
しかし、そうではなかった。ここににその歴史を示す。

ピーター・ダイクストラ
情報源:Environmental Health News, September 29, 2019
Peter Dykstra: False profits
Fracking, vaping, and glyphosate were originally touted
as safer solutions for health and environment.
They weren't, and there's a history to this.

Peter Dykstra
https://www.ehn.org/chemistry-creating-environmental-problems-
2640659292.html?rebelltitem=1#rebelltitem1


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年10月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_19/
190929_EHN_Peter_Dykstra_False_profits.html

 私の家のガレージにラウンドアップのかなり古い1ガロン容器がある。私は、ラウンドアップ及びその主成分グリホサートが他の除草剤の安全な代替であると広く考えれていた時に、それを購入した。

 そのメーカー、バイエルは、それを同じようにまだ市場に出している

 グリホサートは有害物質であると指摘する多くの研究が続々と出てきて、法廷弁護士は病気になったグリホサート使用者のために目が眩むほど高額の金銭的評価をし(訳注1)、グリホサートのイメージは悪くなり、そして崩壊した。

 そして私はグリホサート取っ手付きガロン容器を使用することも、捨てることもできず、棚の上にそのま置いてある。

 それは、解決又は”奇跡”の化学物質を求める、もどかしい探索における共通のテーマである。フラッキングからの天然ガスは、化石燃料からゼロ排出の風力や太陽光へ進歩するまでの間の、比較的無害な架け橋としてもてはやされたのは、それほど大昔のことではない(訳注2)。

 それでは、元のものと同様に内分泌かく乱リスクがあることが分かったビスフェノールAの代替物質の開発はどうであろうか(訳注3)。あるいは、アジアの埋め立て場から、かつてはきれいであった海まで、リサイクルできないゴミの山を我々にもたらしたプラスチック・リサイクルという偽の予言はどうか?訳注4

 そして、かつてはタバコ中毒者の救いの道であると見られた電子タバコがある。それは、それ自身の厄介な問題がますます増大していることが分かってきている(訳注5)。

 アメリカの科学が新しい製品を製造することにより生じる問題を克服するのに一世紀かかるものがあることが分かっている。

 間違いなく最も影響力のあった20世紀の化学者トマス・ミジリー(訳注6)は、自動車がアメリカを席巻した時代にゼネラルモーターズで働いた。彼は不着火とエンジンノックを止めるのに役立つガソリン添加剤に取り組んだ。最小のコストで最もよく機能を果たしたのは 四エチル鉛(TEL)であった。他の鉛ベースの化学物質も効果があったがエンジンを詰まらせる傾向があった。

 鉛の恐ろしい健康影響、特にそれが子どもの脳や神経系に引き起こすダメージはこの時までに既によく知られていた。

 ”加鉛”ガソリンは、狂騒の20年代(Roaring Twenties)に大ヒットし、浮遊鉛粒子の残酷で効果的な供給システムの発明によって、ミジリーは稀に見る著名で裕福な化学者になった。

 彼は1923年に研究休暇(sabbatical)をとり、(なぜそのような展開になったのか不思議なことであるが)鉛中毒から回復するためにマイアミで数か月を過ごした。その滞在は、蒸し暑い南フロリダの夏をもっとすごしやすくすであろう冷媒を探すというひらめきをミジリーに与えた。

 1930年に彼は、安全でコスト効果のある冷却剤として、フレオンという商標で知られるジクロロジフルオロメタン(Dichlorodifluoromethane)にたどり着いた。その世紀の残りを通じて、空調設備は贅沢品から必需品になり、一方フレオン及びその他のクロロフルオロカーボン(CFC)は地球を保護するオゾン層に穴をあけた。

 フロン類(CFCs)は温室効果ガスである。最終的な空調設備の遍在(どこにでも存在する)は、ダラスやヒューストンのような 100万を超える都市が巨大都市に成長し、フェニックスやラスベガスの様な埃っぽい砂漠の辺境地が100万を超える大都市に成長することを可能にした。

 ミジリーはまた、臭素を抽出するプロセスの開発を支援したが、それは海水から塩素化化合物を製造するために重要である。

 トマス・ミジリーは晩年、ポリオを患った。彼は、科学と工学にについての優れた能力を彼自身及び仲間の患者を助けることに向け、ベッドに出入りする彼ら自身を引っ張るための精巧なロープ滑車システムを開発した。

 1944年11月2日にトマス・ミジリーの最後の発明が、彼の方に向きを変え、滑車が跳ね上がり、彼を窒息死させた。

 2003年、ミジリーは全米発明家殿堂(Inventors Hall of Fame)に殿堂入りした。そこにある彼の経歴データには鉛やフロン類の予想外の副次的影響についての記述はない。

 比較のため、私はプロフットボール殿堂ウェブサイトの O.J. シンプソンのページを見た。それは O.J. シンプソンのタッチダウンや獲得ヤードに関する情報の奔流であるが、彼がその後、どのように過ごしたか(O.J. シンプソン事件)の記述はわずかしかない。

 そして環境に関しては、その反規制的熱意が真の殺人者をみつけることを以前より難しくしている EPAを我々は現在持っている。


訳注1:モンサント裁判
訳注2:フラッキング
訳注3:ビスフェノールAの問題
訳注4:廃棄物プラスチック輸出問題
訳注5:電子タバコ
訳注6:トマス・ミジリー


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る