EcoWatch 2016年4月6日
高レベルの内分泌かく乱化学物質が フラッキング廃水処理場周辺で見つかる ロレーヌ・チャウ 情報源:EcoWatch April 6, 2016 High Levels of Endocrine Disrupting Chemicals Found Near Fracking Wastewater Site By Lorraine Chow http://ecowatch.com/2016/04/06/endocrine-disrupting-chemicals-fracking/ 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2016年4月21日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/ 160406_EcoWatch_High_Levels_of_EDCs_near_Fracking_Wastewater_Site.html ミズーリ大学(MU)による新たな研究が、ウェストバージニア州にあるフラッキング廃水処理施設の周辺の地表水中に高いレベルの内分泌かく乱化学物質(EDCs)が存在することを報告したことを紹介し、全米には 36,000 のフラッキング処理場があるので、同様な状況が全米で生じているのではないかという懸念が生じているとしている。 報告書 Endocrine Disrupting Activity in Surface Water Associated with a West Virginia Oil and Gas Industry Wastewater Injection Disposal Site (ウェストバージニア州における石油・ガス産業廃水注入処理場に関連する地表水中の内分泌かく乱作用)が本日、ピアレビュー・ジャーナル 『Science of the Total Environment』 に発表された(訳注1)。 この研究に基づき、BuzzFeed News は次のように報告している。 ウェストバージニア州のファイエットビル近くの汚染は、11,300人の住民のための飲料水処理施設の数マイル上流のウォルフ・グリークと呼ばれる小川から流れ込んでいる。深い廃棄物井戸、いくつかの滞水池、及び保管タンクを含む処理場は小川の上流の丘陵斜面に位置しており、その認可については論争があり、2014年に一旦取り消され、その後ウェストバージニア州環境保護局により8月に更新された処理場である。 ”私は、ウォルフ・グリークからの水を飲みたくない”と、この研究の著者であるミズーリ大学のスーザン・ナーゲルは BuzzFeed News に語った。汚染が住民の飲料水系にまで達しているのかどうかは明確ではないが、それはテストされるべきであるとナーゲルは述べた。 内分泌かく乱化学物質(EDCs)は、免疫系機能の変更はもとより、男と女の生殖機能の変更、乳がん、子どもの異常な成長パターンと神経系発達の遅れのような多くの健康リスクに関連している。 その研究は、処理場及びすぐ下流で収集された地表水のサンプルは、すぐ上流及び近くの参照水系で収集された地表水のサンプルより EDC 作用がかなり大きいことを示したと報告した。”この施設の下流の水生生物は内分泌系をかく乱するのに十分に高いレベルの石油とガスによる化学物質を含む水中を泳いでいるように見える”。 フラッキング流体は多くの有害化学物質を含んでいることがすでに知られているが、石油・ガス会社はそれらが何であるかを正確に発表することを求められていない。 ナーゲルは EcoWatch に、理想的なフラッキングと廃水処理の操業の下では、地表水に及ぼす多くの潜在的な影響は生じないであろうということに留意することは重要であると述べた。 ”地表流出、かつての滞水池、又はこの場所で混合する地表/地下水を通じて化学物質が地表水に達することがあるかどうかはわからない”と彼女は述べた。”今回の研究で、この場所での操業に起因して地域の環境に及ぼす影響を特定したが、これらの操業からこの川へいたる汚染物質の特定の経路を評価するために更なる研究が必要である”。 この研究に関するプレスリリース(訳注1)によれば、一か所でのフラッキングにおそらく数十種の化学物質が使われているので、全国では概略1,000種以上のこれらの化学物質が使用されていると言われている。それだけではなく、これらの化学物質のうち100以上が EDCs であることが知られている、あるいは疑われている。 フラッキングの過程で生成される大量の廃水は、化学物質で汚染されており、また深い地下から放出される放射性物質や重金属を含んでいるかもしれないと、この研究のプレスリリースは言及した。 ”我々の研究は一か所の注入処理井戸施設による地表水への影響を評価しただけである”とナーゲル研究室のかつての大学院生で現在はデューク大学の博士研究員であるクリストファー・カソティスは EcoWatch に述べた。”このような井戸は全米で 30,000 以上操業されているが、我々はまだ他の施設は評価していない。ここに示された研究は、このことは他の同様な操業においても起きている可能性がある問題であるが、そのような状況であるかどうか更なる調査が必要である”。 新たな報告書によれば、”フラッキング化学物質はがんに関連” −EcoWatch (@EcoWatch) August 12, 2015 科学者らは、人への影響に加えて、このレベルのEDCsはまた、水生生物や他の動物の有害健康影響に関連するかもしれないと警告している。 内分泌学会誌 ”Endocrinology” に昨年発表された研究によれば、環境中で見いだされるレベルでのフラッキング流体への胎児期の雄マウスの暴露は、成獣となったときの精子数を低下させる。 エンドクリン・ニュースによれば、”この研究は、フラッキングで一般的に使用される EDCs は、これらの地域での人や動物の暴露に現実的なレベルにおいて、マウスの生殖健康に有害影響を及ぼすことができることを初めて実証したものである”と、この研究の上席著者でもあるナーゲルは述べた。”精子数の低下に加えて、この化学物質の混合物に暴露した雄マウスは、血中のテストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)が高まり、大きな睾丸を持つ。これらの発見は、石油及び/又はガス製造施設が多いこの地域に住む男性の強い生殖力と密接に関係しているかも知れない”。エネルギー情報局は、フラッキングは 2000年には全米の石油・ガスの生産量のわずか2%以下であったものが、現在ではその半分以上を占めていることを明らかにした。石油・ガスの廃水の地下井戸への注水処理はまた、地震活動、特にオクラホマのフラック・ハッピーの増加と関連している。 ”主要な結論は、石油・ガス注入井戸の操業は、石油・ガス生産で使用された EDCs による地表水のもう一つの汚染源かもしれない”と、ナーゲルは EcoWatch に説明した。”我々は、この研究が、石油・ガス廃水処理が地表水と地下水にどの様に影響を及ぼすかを明確に定義するために、この地域における追加的な調査に拍車をかけることを望む”。 この研究についてのナーゲル博士とのインタビューは下記から聞くことができる。 Endocrine Disrupting Fracking Chemicals in West Virginia and Other Drilling States. 訳注1:フラッキング関連情報
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