EurActiv 2019年12月9日
EU は脳に損傷を与える二つの農薬を禁止する
クロルピリホスとクロルピリホスメチル

情報源:EurActiv, 9 December 2019
EU to ban two ‘brain-damaging’ pesticides
By Natasha Foote, EurActiv com.
https://www.euractiv.com/section/agriculture-food/news/
eu-to-ban-two-brain-damaging-pesticides/


訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年12月11日
更新日:2019年12月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/euractiv/
191209_EU_to_ban_two_brain-damaging_pesticides.html

 植物、動物、食品及び飼料に関するEU委員会(SCOPAFF)で加盟国の代表らは、議論ある農薬クロロピリホスとクロルピリホスメチルを EU 市場で禁止することを金曜日(12月6日)に採択した。

 欧州食品安全機関(EFSA)の声明にもとづき、欧州委員会は[訳注:2020年1月31日が失効期限であった]クロロピリホスとクロルピリホスメチルの再認可をしないとする規則案を加盟国に提示した。

 有機リン系として知られる農薬分類に属するその二つの農薬は、EU で広く使用されているが、子どもの発達に大きな問題を及ぼす可能性があるとして批判が増大していた。

 欧州委員会の報道担当は EURACTIV に次のように述べた。両方の物質について特定多数(訳注1)に達したが、そのことは、その規則が公式に採択されたなら、加盟国はその活性物質を含有する植物保護製品のための全ての認可を取り下げなくてはならないことを意味する。

 これらの規則の採択は2020年1月と予想される。

 報道担当官は、最終的な保管、処分、及び使用のための最大3か月の短期猶予期間が EU 諸国により与えられるかもしれず、その後はこれらの活性物質を含有する植物保護製品は最早 EU の市場に出されたり、使用されことはないと述べた。

 最近の声明の中で、欧州食品安全機関(EFSA)はその二つの農薬は遺伝毒性及び発達神経毒性と関連する可能性を指摘した。EFSA は、クロロピリホスとクロルピリホスメチルには、安全閾値はなく、したがってそれらは、”欧州市場での認可更新のための人間の健康基準に合致しない”と書いた。(訳注2)。

 これらの声明はその時に、欧州委員会が胎児にダメージを及ぼす可能性があると分類する両方の農薬の認可の更新をしないという提案のきっかけとなった。

 その禁止は健康及び環境団体により歓迎された。

 健康環境連合(Health and Environment Alliance /HEAL)の執行ディレクターであるゲノン・ジェンセンは、両方の形のクロロピリホスの禁止は、”現在の子どもたち及び将来の世代の健康な発達にとって大きな勝利である”と述べた。

 我々はこれらの物質への数十年間の暴露と関連する神経発達影響を取り除くことはできなかったが、新たな欧州委員会は、”ヨーロッパの農薬依存を減らし、評価プロセスにある抜け穴に対応するよう専心することにより、このようなことは他の物質には起きないようにする”ことができると彼女は付け加えた。

 農薬行動ネットワーク・ヨーロッパ(Pesticide Action Network Europe)の科学政策担当アンゲリキ・リュシマコスは、人、特に我々の子どもたちの健康を産業権益や個人利益より上に位置付けた欧州委員会と脳を損傷するクロルピホス殺虫剤を禁止することに投票した加盟国を祝福すると述べた。

 農業会社コルテバ(Corteva)の広報部長ジョセフ・メイトは EURACTIV に、”我々はクロロピリホスとクロルピリホスメチルを再認可しないという欧州連合の決議に失望した。この決定は EU の栽培者が彼らの農産物を保護するための他の重要なツールの使用をも否定するものである”と述べた。

 彼は、 EFSA (欧州食品安全機関)の結論は、アメリカ環境保護庁(US-EPA)、オーストラリア農薬獣医局(Australia-APVMA )又は世界保健機関(World Health Organisation)を含む他の主要な規制機関の結論と合わないと付け加えた。


訳注1:特定多数決方式
  • 特定多数決方式/ウィキペディア
     Qualified Majority Voting/QMV では、各構成国はあらかじめ決められた数の票を保持する。各国割り当ての票数は、おおよそその国の人口に従い定められているが、より小さな国が不利とならないよう漸進的に重みづけられている。QMVによる可決には、3つの全ての条件を満たさねばならない。・・・
訳注2:EFSA statement
訳注:クロルピリホス及びクロルピリホスメチルの日本における規制状況(19/12/17)
 建材中での使用は禁止されているが、作物用の農薬としては登録されている。
  • シックハウス症候群への対策として、居室を有する建築物へのクロルピリホスを含んだ建材の使用が、建築基準法の改正により2003年(平成15年)から禁じられた。

  • 農薬登録情報提供システム(農林水産消費安全技術センター)で[クロルピリホス]検索すると、クロルピリホス乳剤(3種)、クロルピリホス粒剤 (3種)、及びクロルピリホス水和剤 (1種)が登録されている。また農薬の種類毎に適用表が用意されており、作物名、適用病害虫名、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数、使用方法、クロルピリホスを含む農薬の総使用回数などが記されている。

  • クロルピリホスメチルについては、上記検索システムでは見つけることができなかったが、下記の農林水産消費安全技術センターのウェブページに1975年に初めて農薬登録され、ヨトウムシ、アブラムシ類等の害虫に効果があり、現在、1社から販売されているとし、その毒性、残留、及び規制についての詳細が示されている。
     クロルピリホスメチル(Chlorpyrifos-methyl)
訳注:クロルピリホス関連情報


化学物質問題市民研究会
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