IPEN 2022年9月30日
国連専門委員会
ふたつの有害プラスチック添加剤の
世界的廃絶を勧告


情報源:IPEN, 30 September 2022
U.N. Expert Committee Recommends Global Elimination of
Two Toxic Plastic Additives

https://ipen.org/news/un-expert-committee-recommends-
global-elimination-two-toxic-plastic-additives


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年10月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/220930_IPEN_UN_Expert_Committee_
Recommends_Global_Elimination_of_Two_Toxic_Plastic_Additives.html


【ローマ、イタリア】国連の専門科学審査委員会は、多くの一般的なプラスチックに含まれる 2 つの有害な化学添加物を評価し、これらの物質が健康と環境に有害であるという証拠があり、これらの化学物質を世界的に廃絶することが適切であり、これらの化学物質は残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約にリストされるべきであると結論付けた。同委員会は、これらの化学物質、UV-328(訳注1) 及びデクロランプラス(Dechlorane Plus)(訳注2)を含むプラスチック廃棄物を分別して、それらが新しい製品にリサイクルされないようにすることが重要であることに留意した。また、これら化学物質のひとつである UV-328を、人間の健康と環境に有害な影響を与える可能性のある他の関連する有害化学物質に置き換えるリスクについても警告した。

 決定は今週、ストックホルム条約の POPs 検討委員会 (POPRC) で行われた(訳注3:POPRC18)。これらの歓迎すべき決定にもかかわらず、会議に出席した IPEN の科学専門家らは、これらの有害化学物質の使用を不必要に永続させ、何十年にもわたって健康と環境に害を及ぼす一連の免除が勧告に導入されたと警告している。免除には、自動車や航空機での化学物質の使用が含まれる。これは、リサイクルされたプラスチックの広範囲かつ継続的な汚染につながった臭素系難燃剤の以前のリストの免除と同様である(訳注4)。

 IPEN 科学及び技術顧問のテレーズ・カールソン博士は、次のように述べている。”ふたつの有害プラスチック添加物を POPs 条約にリストするよう勧告されていることは素晴らしいことである。このことはプラスチックに使用される有害化学物質を段階的に廃止するために、相当な努力が緊急に必要であることを強調している。しかし、委員会が 2つの化学物質の一部の使用を何十年も継続的に使用できるようを許可することを推奨しているのは、非常に憂慮すべきことである。これらの許可された使用は、人間の健康と環境を危険にさらし続けるであろう”。

 会議はまた、そのふたつのクラスの化学物質、鎖状塩素化パラフィン (MCCPs) 及び長鎖パーフルオロカルボン酸が、それらの長距離の環境中移動の結果として、人間の健康と環境に重大な悪影響をもたらす可能性が高いため、地球規模での行動が必要であり、来年さらに評価されるであろうと結論付けた。

 MCCPs は、2017 年にリストされた短鎖塩素化パラフィン (SCCPs) の「残念な」毒性代替物として既に使用されている。今回の MCCPs の勧告は、重要ではあるが、同様な塩素化パラフィン類による追加の有害代替物質をもたらしそうな鎖長と塩素化レベルに関しては範囲が限定されてる。最近の研究では、長鎖の塩素化パラフィンはすでに北極に到達しており、廃絶する必要があることが示されている。

 IPEN の共同議長であり、毒物に関するアラスカ・コミュニティ・アクションの事務局長であるパメラ・ミラーは、次のように述べている。”MCCPs の問題は私にとっては科学的関心以上のものがある。私は米国のオハイオ州ドーバーにある小さな町で育った。そこは MCCP の主要な製造施設がある場所である。私たちの近隣の人々と私の家族は、空気、水、土地への目に余る不法な排出のために、がんやその他の健康格差に苦しんできた。これは地域だけの問題ではない。 MCCP は、私が現在住んで働いている北極圏の伝統的な食品や人々の健康にとって大きな懸念事項である。これはひどい不正義であり、人権の侵害である。このクラスの危険な化学物質全てを廃絶しなければならない。”

 長鎖パーフルオロカルボン酸は、有毒な PFAS の「永久化学物質」のグループであり、飲料水源、公衆衛生、及び消防士の職業上の健康を脅かす広範な汚染物質である。それらは環境中で分解されず、野生生物や人間の体内に蓄積される。それらは、消火用泡、繊維の防水加工、食品包装、その他の産業用途及び消費者用途など、さまざまな製品に使用されてる。  IPEN 科学顧問のサラ・ブロッシェ博士は次のように述べている。”委員会は、この大きな有害化学物質のグループについて、産業側はひとつの悪い PFAS をもうひとつの同じく悪い化学物質に代替するというやり方を変えるべき時であると勧告する明確なメッセージを送った。今はもういい加減にこの有害な化学物質のグループ全体を廃絶すべき時である。 POPs の基準を満たす可能性が高い有害化学物質の多くのグループが現在使用されていることに留意し、一度にひとつずつではなく、条約の下で化学物質のグループ全体にに対処するアプローチが、将来の指定の標準となるべきである。”

 毒性の強い農薬であるクロルピリホスも検討されたが、委員会は次の段階に進むことに同意しなかった. 2023年の委員会の次の会議で再び検討される予定である。

 (化学物質の詳細については、POPRC18 の IPEN ビューのクイック ガイド(Quick Guide to IPEN Views on POPRC18)を参照ください(訳注5)。

ストックホルム条約専門委員会について 残留性有機汚染物質審査委員会 (POPRC) は科学者の専門委員会であり、条約の下でのリストに提案されている化学物質を審査し、締約国会議に勧告を行います。 POPRC のメンバーは、政府が指定した化学物質の評価または管理の専門家です。
訳注1:UV-328
訳注2:デクロランプラス
訳注3:POPs 検討委員会第18回会合 (POPRC18)
訳注4:難燃剤含有廃棄物のリサイクル
訳注5Quick Guide to IPEN Views on POPRC18
 概要:
  • 残留性有機汚染物質審査委員会の第 18 回会合では、次の問題が取り上げられる予定である。 IPEN の見解については、この文書を参照してください。
    • デクロランプラスとUV-328
    • クロルピリホス、中鎖塩素化パラフィン (MCCP) および長鎖ペルフルオロカルボン酸 (LC-PFCA)、それらの塩および関連化合物
    • デカブロモジフェニル エーテルおよび短鎖塩素化パラフィン (SCCP) の特定の免除
    • パーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS)、その塩およびパーフルオロオクタンスルホニルフルオリド (POSF)
    • 長距離環境移動のガイダンス


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