はじめに このページでは、電子・電気機器廃棄物、医療廃棄物、廃棄船、アスベスト廃材、その他有毒廃棄物の問題、特には展途上国で発生している問題に目を向け、主に海外廃棄物及びバーゼル条約に関連する情報を紹介します。 バーゼル条約 The Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal 1980年代に国際間の有害廃棄物不正輸出取引が相次いだため、国連環境計画(UNEP)を中心にルール作りを検討、有害廃棄物の輸出について許可制、事前審査制を導入、不適正な輸出入が行われた場合は政府に引き取りの義務づけなどを設けたバーゼル条約が1989年3月22日にスイスで採択され、92年5月5日に発効した。 これが「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」で、事務局はジュネーブの国連環境計画(UNEP)にある。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 有害廃棄物 バーゼル条約の第1条で、適用される「廃棄物」を次のように定義している。 1 この条約の適用上、次の廃棄物であって国境を超える移動の対象となるものは、「有害廃棄物」とする。 (a) ![]() ![]() (b) (a)に規定する廃棄物には該当しないが、輸出国、輸入国又は通過国である締約国の国内法令により有害であると定義され又は認められている廃棄物 2 この条約の適用上、 ![]() 3 放射能を有することにより、特に放射性物質について適用される国際文書による規制を含む他の国際的な規制の制度の対象となる廃棄物は、この条約の適用範囲から除外する。 4 船舶の通常の運航から生ずる廃棄物であってその排出について他の国際文書の適用があるものは、この条約の適用範囲から除外する。 これらのことを具体的に示したリストが附属書[ と附属書\ である。附属書[ には、原則として規制対象となるものが、附属書\ には、原則として規制対象外となるものが示されている。 附属書[、附属書\ は条約本文の附属書を参照ください。 ![]() バーゼル条約における一般義務 第4条一般的義務 1(a) 有害廃棄物又は他の廃棄物の処分のための輸入を禁止する権利を行使する締約国は、第13条の規定に従ってその決定を他の締約国に通報する。 (b) 締約国は、(a)の規定に従って通報を受けた場合には、有害廃棄物及び他の廃棄物の輸入を禁止している締約国に対する当該有害廃棄物及び他の廃棄物の輸出を許可せず、又は禁止する。 (c) 締約国は、輸入国が有害廃棄物及び他の廃棄物の輸入を禁止していない場合において当該輸入国がこれらの廃棄物の特定の輸入につき書面により同意しないときは、その輸入の同意のない廃棄物の輸出を許可せず、又は禁止する。 バーゼル条約の基本理念 バーゼル条約の基本理念は条約の前文に全て表されている。下記はバーゼル条約(環境省訳)の前文からの抜粋である。 前文 (抜粋) この条約の締約国は、 有害廃棄物及び他の廃棄物並びにこれらの廃棄物の国境を越える移動によって引き起こされる人の健康及び環境に対する損害の危険性を認識し、 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生の増加及び一層の複雑化並びにこれらの廃棄物の国境を越える移動によってもたらされる人の健康及び環境に対する脅威の増大に留意し、 これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護する最も効果的な方法は、これらの廃棄物の発生を量及び有害性の面から最小限度とすることであることに留意し、 諸国が、処分の場所のいかんを問わず、有害廃棄物及び他の廃棄物の処理(国境を越える移動及び処分を含む。)を人の健康及び環境の保護に適合させるために必要な措置をとるべきであることを確信し、 諸国が、処分の場所のいかんを問わず、発生者が有害廃棄物及び他の廃棄物の運搬及び処分に関する義務を環境の保護に適合する方法で履行することを確保すべきであることに留意し、 いずれの国も、自国の領域において外国の有害廃棄物及び他の廃棄物の搬入又は処分を禁止する主権的権利を有することを十分に認め、 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分を他の国特に開発途上国において行うことを禁止したいとの願望が増大していることを認め、 有害廃棄物及び他の廃棄物は、環境上適正かつ効率的な処理と両立する限り、これらの廃棄物の発生した国において処分されるべきであることを確信し、 これらの廃棄物の発生した国から他の国への国境を越える移動は、人の健康及び環境を害することのない条件並びにこの条約の規定に従う条件の下で行われる場合に限り許可されるべきであることを認識し、 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動の規制を強化することが、これらの廃棄物を環境上適正に処理し、及びその国境を越える移動の量を削減するための誘因となることを考慮し、 (中略) 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を最小限度とするため、環境上適正な廃棄物低減技術、再生利用の方法並びに良好な管理及び処理の体制の開発及び実施を引き続き行うことの必要性を認識し、 (中略) 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生及び処理から生ずることがある悪影響から人の健康及び環境を厳重な規制によって保護することを決意して、 次のとおり協定した。 (以下略) バーゼル禁止令 (禁止修正条項)
1992年 バーゼル条約第1回締約国会議(COP1)|1994年 バーゼル禁止令 決議II/12|1995年 バーゼル禁止令 決議 III/1
発効に必要な批准国数についての論争|2011年のカルタヘナにおける COP10での結論|2019年9月6日に発効に必要な条件を達成 2019年12月5日に国際法として発効|バーゼル条約及びバーゼル禁止令の現在の状況 バーゼル禁止令は、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国が全ての非OECD諸国にいかなる有害廃棄物も輸出することを禁止するという、バーゼル条約の改正案(amendment)である。 1992年 バーゼル条約第1回締約国会議(COP1) 1992年12月3-4日 ピリアポリス、ウルグアイ http://www.basel.int/TheConvention/ConferenceoftheParties/Meetings/COP1/tabid/6154/Default.aspx COP1 は、先進国から発展途上国への処分(disposal)のための有害廃棄物の国境を超える移動を禁ずることを求めた。また、回収及びリサイクルされることになる有害廃棄物の国境を超える移動は環境的に適切な方法で行われるべきことに言及した。 (First Meeting of the Conference of the Parties to the Basel Convention) 経済的動機に基づく有害廃棄物の輸出と処分に反対する非営利組織であるBasel Action Network (BAN) の解説 Ban Amendment / What is the Basel Ban? は以下のように述べている。 1989年に採択されたバーゼル条約も実際は、多くの人々が犯罪行為であると感じていたことを禁止するものではなく、むしろ有害廃棄物の合法的取引に資するものであると非難された。アフリカ諸国、その他の発展途上国、グリーンピースなどがこの条約を糾弾し、この条約の枠組みの中で禁止を実現することに向けて精力的に活動を繰り広げた。 1994年 バーゼル禁止令 決議II/12 最終的には1994年に、発展途上国、東ヨーロパ、西ヨーロッパ諸国、グリーンピースからなるユニークな連合が働きかけ、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、カナダ、日本、イギリスなどの強い反対があったにもかかわらず、後に”バーゼル禁止令(Basel Ban)”として知られるようになった合意(決議II/12)が採択された。 ![]() ![]() (注):日本は1993年9月17日にバーゼル条約を批准、OECD加盟国としてバーゼル禁止令(Decision II/12)には合意したが、1995年、82カ国によって採択された(Decision III/1)には合意しなかった。 バーゼル条約及びバーゼル禁止令に関する国毎の状況は BAN の Country Status に示されています。 1995年 バーゼル禁止令 決議 III/1 この禁止令に対し反対勢力は、1994年の決定はバーゼル条約が改定されない限り法的拘束力はないと主張したので禁止令の決定は再び争われることとなり、1995年に、アメリカ、韓国、オーストラリア、カナダなどの諸国や、声高な産業界の強い反対があったにもかかわらず再び採決され、条約改定のための2回目の決定がバーゼル条約加盟国の賛同を得て可決された。 ![]() ![]() 発効に必要な批准国数についての論争 発効については二つの解釈があった。ひとつは1995年の採択時に実際にそこにいた国(82 カ国)の4分の3 以上の批准で発効するとし 62の批准で十分であり早期発効すべしとするものである。欧州連合、アフリカグループ、アラブグループ、ラテンアメリカグループ、ノルウェー、スイス、多くの東ヨーロッパ諸国、中国、その他アジア諸国などが早期発効を支持した。 もうひとつの解釈は現在のバーゼル条約の加盟国数(168)の4分の3、すなわち128カ国の批准が必要であるとするもので、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージランドが JUSCANZ グループとして禁止修正に反対してこの解釈を主張した。2006年のナイロビにおける第8回バーゼル条約締約国会議(COP8)でこの問題が議論されたが決着がつかなかった。韓国もこのグループであったが、ナイロビ会議で早期発効の意思表示をした。 2011年のカルタヘナにおける COP10の結論 (19/12/25) 更新 2011年のカルタヘナでのバーゼル条約第10回締約国会議(COP10)における 「BAN プレスリリース 2011年10月21日 178か国が有害廃棄物の途上国への輸出禁止の法制化に同意」によれば、1995年の禁止令の採択時(COP3)の締約国の 4分の 3の批准が発効に必要であるとの結論に達し、1995年の COP3 時の締約国(90か国)のうち 68か国の批准が発効に必要な条件であるとしている。現在、このプレスリリース原文へのリンクは切れているが、同様な内容の記事がウェブ上に存在するので、そのリンクを下記に示す。
2019年9月6日に発効に必要な条件を達成 (19/12/25) 更新 BAN ニュース 2019年9月8日によれば、2019年9月6日にクにロアチアが 1995年バーゼル禁止令(1995 Basel Ban Amendment)の批准書を寄託し、批准国は 97か国となった。このクロアチアの批准により、 1995年禁止令の発効に必要な 1995年の COP3 に出席し投票した締約国の3/4以上が批准というという条件に達したので(訳注:2011年カルタヘナにおける COP10の結論と齟齬があり、COP11 以降にこのように変更されたと思われるが経緯は不明なので、今後調査の予定)、その禁止令はバーゼル条約の新たな条項として、90日後、2019年12月5日に97か国に対して発効する。 ![]() 外務省 バーゼル条約 5 95年改正(通称「BAN改正」) (3)本条約改正は,バーゼル条約第17条5によると,改正を受け入れた締約国の少なくとも4分の3の批准・受諾・加入により当該改正を受け入れた締約国の間で効力を生ずることとなっている。なお,これまで締約国間で第17条5の解釈が分かれており,BAN改正の発効をめぐって議論が重ねられてきたが,第10回締約国会合において第17条5の解釈につき合意され,2019年12月5日に発効した(2019年12月現在,締約国数は97カ国及びEU)。 ![]() 2019年12月5日に国際法として発効 (19/12/25) 2019年9月6日に発効要件を満たして90日後の2019年12月5日にバーゼル条約禁止令は国際法となり、97国に対して発効した。この合意はバーゼル条約の新たな条項(4a)となる ![]() バーゼル条約及び禁止令の状況 ■バーゼル条約事務局のウェブサイト バーゼル条約批准国リスト: Parties to the Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal バーゼル禁止令批准国・署名国リスト: Amendment to the Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal つい最近コスタリカが98か国目として批准したので、同国に対し 2020年2月19日に発効する。 バーゼル条約プラスチック廃棄物 (20/06/09) 2019年5月、バーゼル条約の締約国会議(COP14)において、リサイクルに適さない汚れたプラスチック廃棄物を条約の規制対象とするというノルウェーの提案に関し、プラスチック廃棄物に関する条約の附属書 II、VIII、及び IX を改正する決議 BC-14/12が採択された。以下に関連情報を示す。 ■バーゼル条約事務局
開催日: 2019年5月3日(金)〜5月7日(火) 開催場所:ジュネーブ(スイス)
バーゼル条約関連国内報道
国際循環型社会形成におけるバーゼル条約の役割 2005.11.25 バーゼル条約事務局長 桑原幸子 |