北海道以外の地域では招待制披露宴(招待客100名前後)が一般的ですが、北海道では会費制祝賀会(200名以上)というのがほとんどです。筆者は北海道在住ですので会費制祝賀会での撮影方法について述べますが、招待制披露宴でも出席者数が違うだけで基本的に内容(式次第)に違いはありません。ここでは一般的な式次第にしたがって撮影上の注意、テクニックを説明していきます。
まず、事前に式次第を見てある程度覚えておきましょう。撮影をしながら、次のイベントの用意をしておいて下さい(フィルムの残枚数の確認等)。新郎新婦の入場位置も確認しておきましょう。お色直し再入場の場所が最初の入場と同じとは限りません。予想もしないところからゴンドラで下りてくることもあります。席順もあらかじめ見ておき、新郎新婦の両親の席だけは覚えておきましょう。
いよいよ披露宴ですが、会場に入る前にぜひ、受付の風景も撮影しておきましょう。後で気が付くと受付の写真は意外と少なく、撮っておけばと思う写真の一つです。また、ホテルの外観や披露宴会場内部の飾りなども撮影しておくと良いようです。
撮影者としては、受付を早めに済ませ、披露宴式次第に目を通し、ある程度覚えておきます。また、会場前にくつろいでいる友人、親戚の方々のスナップ写真や、新郎新婦・親戚の控え室での撮影希望があれば、その様子も撮っておきます。ただし、親戚の方でもカメラを用意している場合が多いので、控え室では無理に撮影しなくても良いでしょう。
招待制披露宴では開場時に、新郎新婦そして両親が入り口手前で出迎えてくれるのが一般的です。ここでの様子も数枚撮影しておきましょう。披露宴会場に入ってから、新郎新婦の両親の席、新郎新婦の入場位置、会場内のスポットライトの位置等は必ず確認しておきましょう。特にフラッシュを使用しないで撮影する場合はスポットライトの位置が重要です。
さて、司会の方から「披露宴開会」が告げられると、いよいよ本番です。撮影者は緊張することはありません(^^;落ち着いて式次第の再確認などでも行い、新郎新婦の入場位置の方へ移動して入場を待ちます。
会費制祝賀会の場合、新郎新婦入場の前に、ここで発起人代表挨拶が入ります。ちなみに会費制祝賀会の場合は、新郎新婦の友人や同僚が発起人となり、発起人の方々が結婚祝賀会を企画するという形を取ります。したがって新郎新婦の両親・親戚の方々が上座になり、友人・同僚たちは下座になります。新郎新婦が招待する形の披露宴とは逆になります。ただし、祝賀会形式の場合でも両家の希望により、両親の席が下座になる場合もあります。慣れていない形式の場合には、新郎新婦の両親の席にとまどわないようにして下さい。なお、発起人代表挨拶の様子も必ず撮影しておきましょう。
開場が暗くなり、いよいよ新郎新婦の入場です。あらかじめ確認しておいた入場場所近くで、撮影に最適な場所を選び、腰を低くして新郎新婦の入場を待ちます。ドアが開き、新郎新婦にスポットライトがあたったら、表情を確認しながら撮影します。このとき、「非常口」という緑色の案内灯が目立ってしまわないようにフレーミングして下さい。新郎新婦が一礼をして歩き出したら、スポットライトを背にし、腰をかがめたまま追いかけます、というより新郎新婦の先を歩きます。このとき、ビデオ撮影の邪魔にならないよう心がけて下さい。スポットライトの当たり方、新郎新婦の位置が良好と思えたら、立ち上がり、数枚撮影します。AFはコンティニアス(連続)にし、動体予測モードをたらかせた方が良いでしょう。特に明るいレンズを使用時には被写界深度が浅くなるため、ピントには注意しましょう。たとえば、キャンドルサービスの時は新郎新婦のほぼ正面からの撮影になりますので、二人ともほとんど撮影者から等距離で問題はないのですが、入場の時は新婦が新郎より一歩、半歩と僅かに下がって歩く場合があります。ファインダーでは、まあ大丈夫かな、と思えてもできあがった写真を見てがっかりといったこともあります。また、カメラを縦位置にしてフラッシュを使用する場合は新郎、あるいは新婦がフラッシュの影にならないように注意しましょう。
このように、会場が暗い中で新郎新婦にスポットライトが当たっているような場合、マニュアル露出に自身のある方には、フラッシュなしで撮影してみることをお勧めします。
御媒酌人、新郎新婦が着席の後、御媒酌人による新郎新婦の紹介があります。この時の写真も1、2枚撮影しておきます。
来賓祝辞では、新郎新婦の上司、あるいは親の知人でご立派な肩書きをお持ちの方が遥々遠くからいらっしゃって、面白くもない話を長々と・・・ではなくて(^^;新郎新婦の結婚を心から喜び、祝辞を述べて頂くのですが、私にとって、いつもつまらない・・・ではなくて(^^;ありがたくためになるお話を聞く良い機会ではあるのですが、撮影に忙しいこの先のことを考えると、ここで少し休憩をとっておくのが、自分の体のためにも、また写真の出来具合のためにも良いことだと思っています。撮影者の方はここで、来賓の方の写真とその姿を真面目な顔つきで見つめる新郎新婦の写真を1、2枚撮影しておいた後、一休みし、式次第の復習でもしておきましょう。
筆者が一番苦手にしているのが、この花束贈呈です。花束を持ってくる子供(新郎新婦の姪、甥が一般的)の行動が予測できない、被写体が低く撮りにくい、狭いところに撮影者が集中して撮影場所が確保できないなどが理由です。このときは、二人揃った写真を撮ることにこだわらないで一人一人を撮影する、より良い撮影場所を確保するといったことを心がけておくと良いかもしれません。どなたか、テクニックをご存じでしたら、教えて下さい。
友人代表祝辞は下記の祝杯の後、祝宴中で行われることもあります。祝辞を述べている友人の姿を撮るのはもちろんですが、新郎新婦の表情も撮っておきましょう。このときの撮影位置は、祝辞を述べている友人と新郎新婦を結んだ直線上がベストです。つまり、新郎新婦が撮影者の方を向いていることになります。友人が面白いエピソードなどを暴露、でなくて紹介したときがシャッターチャンスです。新郎新婦の表情をファインダーで確認しながら、撮影しましょう。
祝杯の発声をする方の写真を撮ることは当然ですが、さらに広角レンズで新郎新婦周辺の写真も撮っておきましょう。このときは、撮影場所が良さそうなところで、出席者の椅子を借りて、高い位置から撮影すると良いでしょう。
祝杯の後、祝宴が始まりますが、撮影者は飲んだり、食べたりしている暇はありません。まず、祝宴風景を撮ります。テーブルに料理がまだ残っていて、見た目が良いうちに撮影してしまいましょう。円形テーブルであれば、各テーブルで2、3枚撮影し、全ての出席者を確実に撮影しておきます。このときも広角レンズの方が便利です。筆者は上記の祝杯の撮影と祝宴風景の撮影にはコンパクトカメラ(Nikon 35Ti)を使用しています。
各テーブルを一通り撮影したころには、新郎新婦のところに友人・知人が飲み物を注ぎに行っているはずです。新郎新婦も緊張感から開放され、良い表情をしています。新郎あるいは新婦と友人のどちらも写るように真横から撮ります。AFの場合は特にピントに注意をしながら、数枚撮影しておきましょう。特に、親しい友人の時には必ず撮影しておいた方が良いでしょう。
余興をする方々の写真、各テーブルに挨拶にまわる新郎新婦の両親の姿も撮影しておくことをお忘れなく。
祝電を司会の方が披露する場合もあります。このときは特に撮影する必要はありません。新婦の友人や発起人の一人(会費制祝賀会の場合)が紹介する場合もあります。このときは撮影しておきましょう。
新郎新婦が一時中座して、お色直し(着替え)をして再入場しますが、このお色直しで退場する時にもシャッターチャンスがあります。特に新婦の友人は新婦を囲んで記念撮影したがりますが、このお色直し(着替え)前の衣装で記念撮影するチャンスはこの一瞬しかありません。あらかじめ、記念撮影したいという新婦の友人達には声をかけておいて、新婦が会場から退場した所で待ってもらい、撮影します。ただし、この撮影は手際よく行う必要があります。披露宴での新婦のスケジュールは過密状態です。このときの撮影に手間取っていると時間がなくなり、ひんしゅくをかいます。新郎新婦の迷惑にならない範囲で撮影しましょう。
お色直し再入場の時の撮影で、最初の入場の時と同じ所から入場する場合は、撮影に関しては新郎新婦入場の時と同様です。ゴンドラなどで登場する場合には登場場所を必ず確認しておきましょう。
このときもフラッシュなしで撮影すると光の演出効果を写すことができます。再入場のあと、引き続いてキャンドルサービスを行う場合もあります。
筆者にとって披露宴中での最大のイベントがこのキャンドルサービスです。ここでも、フラッシュなしで撮影が効果的です。暗い中に浮かび上がった新郎新婦だけを写すことができます。このころになると、テーブルの上は悲惨な状況ですから(^^)写し込まないノーフラッシュ撮影方法が良いと思います。また、筆者がこだわっている85mmというレンズの威力が最大限に発揮されるのがこのときです。10人掛けくらいの円形テーブルで、キャンドルサービスをしている新郎新婦のツーショットをその対面から撮影する場合、この85mmというのがちょうど良いのです。それにしても85mmというレンズ、このときの撮影のためにあるんだろうか?(そんなわけはない^^;)なお、新郎新婦とその両側の人物も写したい場合は、フラッシュを使用して、焦点距離50mm程度のレンズを使用すると良いでしょう。
筆者のようにノーフラッシュで、フィルターC12使用、85mm付近の焦点距離が欲しいとなると、選択肢は85mmの単焦点しかありませんが、もちろんフラッシュを使用するなら、85mm単焦点レンズである必要はなく、この焦点距離付近を含むズームレンズでかまいません。また、キャンドルサービスの時には撮影は1テーブル1枚にこだわる必要はありません。ライティング、構成、表情が良いところでは何枚も撮影しておきましょう。当然このような撮影をするとフィルムを途中で何回か交換する必要が出てきます。カメラをもう一台持ち歩くことはもちろんですが、フィルムも多めにポケットに入れておきましょう。
筆者はキャンドルサービスでの撮影はほとんどフラッシュを使用しないのですが、唯一の例外が新郎新婦の両親の席です。このテーブルでの撮影だけはフラッシュを使います。やはり、両親の席は特別で、両親も写っていた方が良いでしょう。ただ、会場内が暗いと両親の席が何処なのかわからないことがあります。しつこく新郎新婦の両親の席を確認せよと書いてあるのはこのためです。
最近のカメラのTTL自動調光の精度はかなり良いです。ネガフィルムを使う分には機材の「フラッシュについて」のところで述べたように、絞り固定、TTL自動調光で問題なく適正露出の写真を撮影することができます。無理にノーフラッシュ撮影をすることはありません。また、キャンドルサービスをする新郎新婦の両側の人物も写したいというのであれば、当然フラッシュを使用した方が良いでしょうし、座席とスポットライトの位置関係から、どうしても新郎新婦にスポットライトがうまく当たらない場合があります。このようなときもフラッシュを使用する必要があるでしょう。フラッシュを使用して、キャンドルサービスをする新郎新婦を撮影する場合は、テーブル上の余計な物を写さない、出席者を上手に入れる、というようにフレーミングに工夫をして撮影すると良いでしょう。
この場合も、撮影位置の確保が重要です。まず、撮影の打ち合わせ時に、新婦が新郎の影にならないようにと、念を押しておいて下さい。少なくとも、顔だけにはスポットライトが当たるように心がけてもらうと良いでしょう。カメラを縦位置にしてフラッシュを使用する場合にも新郎、あるいは新婦がフラッシュの影にならないように注意しましょう。ウエディングドレスやケーキの模様も写し込みたいのであればフラッシュなしでの撮影を試してみて下さい。ウエディングケーキ全体も入ったカットを35mm〜50mm程度のレンズで撮影し、新郎新婦の頭からケーキカットしている手前までのカットを85mm〜135mm程度の中望遠で撮影しておきましょう。また、スポットライトが当たっている二人からはこちらの撮影者を認識することが難しくなります。手を振ってこちらを見てもらうのも作戦です。
新郎新婦が両親に花束を持っていく時の撮影方法は新郎新婦入場の時の撮影方法に準じます。このとき新婦による両親宛の手紙を司会の方が朗読したり、新婦がピアノ演奏などをする場合があります。感無量の両親の表情を撮影しておきます。特に新婦側の両親の表情を撮影しておきましょう。花束贈呈の瞬間はその様子を真横から撮ることになります。新婦側の表情をとらえるのが第一ですが、式場のビデオカメラの光源を利用して撮影するのも良いでしょう。
新郎側の父親、あるいは新郎からの挨拶があります。全員の写真と、挨拶をしている方のアップの写真を撮っておきましょう。
最後に乾杯(あるいは万歳三唱)の発声があります。撮影に関しては祝杯に準じます。そちらを参考にして下さい。
退場の時には会場内が暗くなることはありませんので、通常に数枚撮影しておきましょう。
これで、披露宴での撮影は終了です。お疲れさまでした。残った料理、飲み物をこの一瞬でたいらげて下さい(^^)。あまり遅くまで食べていると会場掃除の方に怒られます(経験談^^;)。披露宴会場から出たところで、新郎新婦が出迎えてくれます。この出迎え風景も撮影しておきましょう。そのあと、親戚や友人が集まり集合写真を撮ることもあります。