16世紀までに家の中には、香りのよい花や、ハーブ(香草、薬草)やスパイス(香辛料)をミックスした香りがすでに広がりつつありましたが、「ポプリ」という言葉が一般的になったのは、18世紀半ばになってからでした。
もともと「ポプリ」とは料理用語で、野菜や肉を混ぜたスープストックを取る鍋(直訳すると「腐った鍋」)を意味していましたが、18世紀中にこの言葉は家の中を香りで満たすのに使用(利用)される香りのよい植物材料のミックスを意味するようになりました。
中でもローズ(バラ、ばら、薔薇)の花びらは最も大切な材料で、それゆえ「ローズボウル(バラの鉢)」という言葉もあり、ローズポプリ(バラのポプリ)は古いレシピにはほとんど必ず使用(利用)されていました。
その他、ラベンダー(ラヴェンダー)のポプリもよく使用(利用)されます。
一方で香りのよい柑橘類の花をローズ(バラ)の花びらに混ぜることも多く、おそらく主婦は乾燥させても香りが残るあらゆる花を試したはずです。
スパイス(香辛料)や揮発定着剤も同時に混ぜましたが、後者としてはムスク(麝香鹿からとれる)、シベット(麝香猫)、アンバーグリス(マッコウクジラ)、カストール(ビーバー)のような動物からとったものがよく使用(利用)されました。
伝統的なポプリ(ハーブポプリ)に含まれる材料は、芳香性の花ぴらもしくは木、根、樹皮、スパイス(香辛料)、揮発定着剤、ポプリオイル(アロマオイル、精油、エッセンシャルオイル)です。
今日でもポプリ(ハーブポプリ)の組成は変わっていません。
しかし、動物性の揮発定着剤よりはむしろ植物性のものを使用(利用)する傾向があります。
また、ポプリ(ハーブポプリ)の各レシピによって材料の比率はかなり変わり、手近にある材料によっても変わってきます。
しかしどんな場合でも、必要な材料のほとんどは花、花びらや木、根、樹皮で、それがミックスのテーマを決めるといえます。
最近では見た目を美しくするために、香りのない花も色々と加え、同時に鮮やかな色や面白い形をした木の実、ドライフルーツのスライスや種子(シード、たね)の粒を混ぜたりします。
今日ではそれぞれのミックスに好みの香りをつけるために、ポプリオイル(アロマオイル、精油、エッセンシャルオイル)に頼ることが昔よりもはるかに多くなりました。 |
最近ではフルーティーで東洋的な香り、あるいはもっとやわらかに香るバルサムの木の匂いといった、花以外の匂いを家の中に漂わせるのが流行りですが、ポプリ(ハーブポプリ)の香りは全く個人の好みによります。
ポプリ(ハーブポプリ)は思いきり伝統色豊かな香りにも、田含家風にもウッディにも、またムスク系、フルーティーにと仕立てられますし、深くカ強い香りが立つようにもできます。
見た目では同系色でまとめることもできるし、きわめて装飾的にも、かわいいチンツ更紗風に仕上げることもできます。
混ぜたり香りをかいだりするのに飽きることなど全くありません!!
私たちにとって花にまさる芸術表現の手段はなく、乾燥させたデリケートな花や葉を駆使して、色と質感と形のすばらしいコラージュを作り出そうとしているのです。
ポプリ(ハーブポプリ)は花びらがみずみずしい盛りを過ぎ、酔わせるような新鮮な香りを失ったとしても、デリケートな乾燥した花の中に変わらない優雅な魅カとほのかな香りが残ります。 |
参考文献 「トラディショナルポプリの本」 |
本文中の下線のあるハーブ(香草、薬草、植物)は、成分等、さらに詳しい説明がありますので、クリックしてみて下さい! |