高鶴礼子

 

もう二度と

大事な人を見送って泣く女のないように

もう二度と

帰らぬ骨を待ち続ける母のないように

もう二度と

ひもじい思いをする子のないように

 

理不尽を耐えなければならない人がいなくなるように

押しつけられた価値の転換に

誠実な人が苦しむことのないように

 

誰も殺されないために

誰にも殺させないために

 

鳥が鳥でいられるように

花が花でいられるように

人が人でいられるように

あなたがあなたでいられるように

私が私でいられるように

 

女であり母であり妻であり人間である私は

声を上げることにしよう

小さく無力ではあるが

たしかなひと声を

 

鎮魂の時がいつしか夜明けへとつながるように

逝ってしまった人たちの言葉を

聞き違えることのないように

間違った現実に合わせて

たいせつなものを変えてしまうことなどないように

 

花は花たちのことばで

鳥は鳥たちのことばで

訴えているその傍らに立って

 


生年 1955年

在住都道府県名 埼玉県

所属詩誌(団体・グループ)詩人会議、川柳大学会員

代表詩集(著作)川柳集『向日葵』


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