TB53 春風 
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瀬戸内の旅 03年10月4日 
「春風」にはエアコンが無いので、暑からず寒からずの10月に家族で瀬戸内をクルージングしようと思い、まずは私一人で春風を係留場所の英虞湾から西宮まで回航することにした。
午前5時に起床したが準備や積込に手間取り、出航は午前8時になった。晴天で大王崎は北西の風5m、波1、うねり1と絶好のコンディションで、こんな天候に恵まれるのなら一緒に来たがっていた息子(6歳)も連れて来ればよかったと思った。
御座沖でかかり釣りをしている漁船群をかわしてから、フライブリッジ(FB)から下のブリッジに降りた。プレーニング状態では船首が上がるので、下のブリッジはどうしても視界が悪くなるが、下にはカローラのリクライニング・シートを肘掛つきで取り付けてあり、FBより揺れも少ないし風もあたらないので、長距離を走るにはここに限る。
春風は全長53ft、エンジンはGMの8気筒1基掛け、最大750馬力(定格出力は600馬力)2400回転で27ノットが出る。同じ長さのパワーボートに比較するとエンジンの馬力は半分程度、従って燃料消費も半分程度だがそれでも1800回転、21ノットで1時間に約70リットルを消費する。燃料タンクの容量は1.5キロリットルほどで免税の軽油は地元で1リットル46円(当時)。
ブリッジに降りてエンジン・リモコンに操作を切り替える。これはケーブルの先に舵、ガバナー、前後進を遠隔操作する3つのダイアルが付いていて親指一本で操船できる代物。一人でカツオ釣りをするには必需品みたいなもので、クルージングでも楽チンである。さらにオート・パイロットをかけるが、こちらはセンサーのコンパスにエアーが入っていて針路が5度ぐらいの範囲で振幅するために時折修正する。
それ以外にはすることもなく、誰も居ない海で景色を見て、タバコをふかして、ビールをごくチビチビ飲んで、時折20ノットで走る船のブリッジを無人にして船尾に行き、航跡に見とれながら用を足すことの繰り返しである。
熊野灘を紀伊半島に沿って220度で走り、1100に勝浦沖を通過した。海が荒れれば勝浦か串本で一泊することも考えていたが、ここまでは非常に順調で、串本港と大島の間を抜けて串本大橋(海抜21mでFair Windのマストの高さでぎりぎり)の下をくぐって、潮の岬を1140に通過した。北東から串本港に進入する場合は大島の北側に幾つかの暗礁がある。GPSはコーデンの10インチ・プロッターをフライブリッジに置いているが、下のブリッジでも家庭用のテレビでモニターできるようにしている(比較的安いオプションで可能)。有線のリモコンを移動して上下ブリッジのどちらからでもプロッターの操作ができる。このGPS魚探は平成14年に購入したがフソウとコーデンとはどちらがOEMなのかは知らないが全く同型である。今回のクルージングの為に瀬戸内海用のカートリッジも購入したが、コーデンのは定価4万円もするのでフソウのを購入した。詳しくは舵誌にも広告の出ている瞭電さんにどうぞ。3割程度は引いてくれるはずである。
これとは別にノートパソコンにPEC(水路誌が出しているパソコン用航海参考図)とGPSアンテナ(IOデータ製)をインストールしたのを積んだ。PECの画面は水深や暗礁の位置、ブイなどが詳細に出るが、難点はGPSで測位した船首尾線(船の針路)を表示しないことである。
そこでコーデンのプロッターは縮小図にして船の針路(潮流の影響も反映した対地方位)を表示し、PECでは拡大図を表示して現在位置付近の等深線や暗礁を表示すると、えらい便利だった。
潮の岬はそれまでの北東の風が東に変わり、波高2mぐらいの潮波がたっていたがプレーニング速度を維持して通過した。しかし周参見沖にさしかかる頃、風は予報どおり北西の風10mオーバーになり、悪い潮波が3m以上になった。遂には速度を8ノットまで落とすが、バウから青波が乗ってきた。
市江崎を漸くかわし、波を避けるために白浜の三段壁の0.5マイル沖を通過しながら速度を上げ、暗礁を避けながら由良湾沖を北北西に走り、日の御崎の陰に隠れるようにして北上する。船をかばいながらプレーニング速度で走ろうと思うと結構せこい走り方になる。こんなことをしている間に潮の岬沖ですぐ前方にいた外洋フェリーに引き離されてしまった。
日の御崎をかわすと針路は真北になるので、北西からの波を真正面から受けずに済むと期待していたのに御崎を廻ると今度は風が北に振れ、また真正面からの波になる。
紀伊半島を廻るときに風が北東→東→北西→北に振れるのは今年3月にFair Windを江ノ島から回航したときと同じパターンだった。
外洋フェリーは友が島水道の航路を走るが、こちらは少しでも近道をしようと波の収まった和歌山沖から加太の瀬をめざす。
和歌山沖ででかいヨットが東進していたので近寄ってみたらFair Windが鳥羽レースで負かされた夢ひょうたんだった。速度を落として写真をとったら手を振ってくれた。こちらも手を振るが、絶好のアビームの風なのにセールを揚げずに機走していた。やはりセールの消耗がもったいないのだろうかと思う。     
英虞湾の御座岬を後に オーパイ走行中
熊野灘を南下 串本の大島大橋を通過
紀伊水道で夢ひょうたんに遭遇

西宮沖で見慣れないヨットに遭遇

加太の瀬の手前で大型漁船が釣りをしているのに見とれていたらその陰に小さなボートがいた。船首の死角に入って船体は見えなかったが赤旗を揚げた竿に気づきヒヤリとした。見張りに集中することとブリッジの視界を改善することをあれこれ考えた。
加太の瀬を抜け大阪湾に入ると相変わらず10m前後の北の風だが、湖にでも入ったような気分になった。女房にあと1時間で西宮に着くからと言い、車の迎えを頼む。くだんの外洋フェリーは六甲アイランドをめざしていたが漸く並走し、神戸港の沖で抜いた。オリエントヨット(神戸マリーナ)の岡本さん達の笑顔に迎えられ、1700に無事桟橋に接舷した。波が悪かったので9時間かかったが体は意外と楽だった。 
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