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ヒューマン

HUMAN
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 前作「ニュー・ボーイズ」では“これぞロッド!!”のイメージのもとに意図的に創られた感があった、今思えばだが。いわばロッドのショーケース的アルバムだったと言える。そのせいか最初っから親しみやすく、ロッド・スチュワートを聴いている気持ちに満たされ安心して楽しめる・・・・・しつこいほどにソウルフル、あきれるほどにシャガレたロック、うんざるするほど甘いボーカル・・・・・、そんな魅力を1枚で楽しめた前作はファンとしては会心の作だった。どれもロッド・スチュワートの大きな魅力だし、今でもその気持ちは変わらないが、しかし逆に言えば新しいロッド像は何一つ見えてこなかった。新作はいったいどうなるんだろうか?アーティストである以上、変化が必要なのではないか?もっとも、そう旨く変化できればまったくもって楽な話なのだが・・・。

 アルバムリリース直前には『ロッドは2000年の4月に喉の手術を受け、9ヶ月間歌うことが出きなかった』という衝撃的なニュースが届けられた。驚くべきニュースなのだが、手術のニュースをアルバムのプロモーションに乗せてしまうぐらいだからファンとしては深刻に受け止めることもなかった。しかし当のロッドは声が出なかった期間は人生始まって以来の辛さを味わったことだろう。こんなときそばにいてくれたらよさそうな愛妻レイチェルとは99年に離婚してしまっていたから辛さもひとしお・・・・・いや、離婚はロッドの新しい恋人が原因だとしたらそうでもないのだろうか?

 そして今作「HUMAN」が届けられた。本作は恐らく手術以前にレコーディングはほとんど済んでいたと思われる。当初2000年11月リリース予定だったらしいが術後の仕上げのために3ヶ月ほど遅れた。術後にレコーディングした曲があるかどうかもわからない。アルバムからは喉の不調も離婚によるショックなども微塵も感じられない。そんなファンの心配をよそにアルバムは21世紀を迎えた30年のキャリアをほこるソロシンガーの決意と挑戦に満ちていた。はっきり言って素晴らしい出来なのである。しかもロッドは大きな変身をファンの前に見せてくれた!

 今作ほどアルバム全体からロッドのボーカルのパワーを感じたことはない。いや、今まで彼のボーカルにパワーを感じなかったとかそういうことではなく、これまでは楽曲自体の出来不出来やバックの演奏、そしてもちろん彼のボーカルが旨く出ているか否かのバランスが作品としての完成度のカギを握っていた。早い話が、ロッドがいくら旨く歌ってもいまひとつの曲では作品としても今一つだったし、逆に仮にロッドが“手抜き”をしても楽曲に救われる場合もあった、かもしれない。ところが今作はバックは良くも悪くも打ち込みが多用され(それはでき不出来と言うより好き嫌いのレベル)、楽曲についてはだれが歌っても一定の成功を得られそうなものが、はっきり言ってない。つまり作品の完成度はロッドのボーカル次第であり、今作においては、それはたいていの場合成功しているのだ!!
 ロッドのボーカルは近年にないくらい魅力的だ。これまで開拓されていなかった“うた”が聞えてきているようだ。彼はもはやバックの演奏や楽曲の良さにフォローされるボーカリストではなくなった。ロッド単独で“うた”の世界を創り上げていくことができるのだ。今作には従来のロックンロールでシャウトする姿も、スコティッシュの薫りを巧みにとり入れた甘いボーカルもないのだが、56歳を迎えた20世紀のロックシンガーが新世紀に生き残る新しい術を見出したかに見える。

 「何も変わっちゃいないよ」。ロッドにしてみたらとそう答えるだろう。好きなソウルミュージックを現代(いま)のセンスをとり入れてやってみただけ・・・・・。恐らくそんなところなのだろう。40年にも及ばんとするロッドのソウル(魂)は枯れることのない泉のようである。ロッドは過去のヒット曲を歌うだけのロートル・シンガーではないことがまたひとつ証明できた。現役感覚バリバリのロックン&ソウル・シンガーである。21世紀最初のアルバムとしてこれ以上の作品はない。完成度の高い作品である。



ps:しかしこれだけ書いても、要は売れてくれなきゃ机上の空論、ファンのひとりよがりな思いこみなのかなぁ〜?

(2001年02月18日)(同年2月26日改訂)





 1 I Can't Deny It
 ピアニッシモなタッチからロッドの若々しい掛け声"yeah!×3"で幕を明けるポップなナンバーでセカンドシングル曲。“どんなに愛してるかなんて言えっこないさ、君より大切な人なんてひとりもいやしない”、とロッド十八番なセリフが聞けるが(笑)、3番目の奥様レイチェルとは離婚して今は独身貴族のロッド。本作に収められたラブ・ソングは新しい恋人に捧げられているのだろうか??欧州では1stシングルでアルバムのラスト曲ですが日本盤では頭に収録。

 2 Human
 タイトル曲で、本作での音作りを代表する曲。ロッドのアルバムに打ちこみサウンドはこれまでにも幾多あったがこれまでのように生音を単にデジタルに置き換えただけではなく、今までになかった作風に仕上げることに成功している。最後に元ガンズ・アンド・ローゼズのギタリストのスラッシュがたたみ掛けるようなギターソロが聴けるのが劇的。シングルヒットするような曲ではないかもしれないが、新しいロッドのイメージとしてもっとプッシュしてもいい曲だ。

 3 Smitten
 かつてストーンズのミック・ジャガーは「悪魔を憐れむ歌」で“Please tell me introduce myself・・・・・・”と歌い、自らを悪魔または魔王と称し、ストーンズの魔性のイメージを広げることに成功した。かたやロッドはこの曲で“Hello,allow me to introduce myself・・・・”と歌い、女性の前で心を内を曝け出す自分を曲に投影している。そこにはミックのような演劇性はなく、自らを偽ることなく等身大のロッド・スチュワートがいる。大衆の前で虚勢を張るミックと愛する素直に自身を演じるロッド。女性ファンの多さから見て女性に受けいられやすいのはロッドということになるんだろうか?個人的にアルバム中で最高の曲のひとつ。

 4 Don't Come Around Here
 ティナ・ターナーやマギー・ベルなどR&B〜ブルーズ系女性ボーカルとデュエットヘリコプター・ガールしてきたロッドですが、この曲ではヘリコプター・ガールなるシンガーをパートナーに迎えています。“ヘリ〜”は実はユニット名で、本名はスコットランド生まれのジャッキー・ジョイスというシンガー。彼女はかつてブラジリアン・ラテン・バンドでバッキング・ボーカルを務めていたという経歴を持ち、古典的ソウル・ディーヴァのような歌を魅力にイギリスでは人気が高まっている、らしい。ささやくようなソフトなボーカルがロッドのシャウトを優しく包み込むように重なり合って歌っているようだ。まだまだ無名に近い彼女をデュエット相手に選んだロッドの眼は確かである。

 5 Soul On Soul
 本アルバム収録曲には数千、数万人収容のアリーナよりもクラブのような小さなステージの方が映えるような、じっくり耳を傾けたいものが多く、これなどがその筆頭だろう。分厚いゴスペル調のコーラス隊が、ピンスポットのあたるロッドの背中から熱く歌い支えているような様が浮かぶ。ロッドのボーカルを聴いていると、気持ちが高く高く昇っていくようだ・・・・。最高。
 
 6 Loveless
 個人的にこれまで積極的に聴いてこなかったようなタイプの曲。宇多田ヒカルなどのJ-R&B歌手が歌ったら似合いそう・・・・と言ったらロッドに失礼か、それともほんとに日本のティーンにウケたりして・・・・・?しかしさすがはロッド、見事に歌いこなしているし、悪くない。でもアリーナで歌われてもピンと来ないだろうな。やっぱりクラブで聞いてみたい。


 7 If I Had You
 正直言って、ボーカルがロッドでなかったら聴き流して終わりだったろう、という感じの曲。今作にはヘリコプター・ガールなど女性のボーカルやコーラスが多用されているが、ツアーには帯同するんだろうか?プライベートでは女性の影が目立つロッドだが、ステージとなると意外にもこれまでなかったと思う。実現すれば女性シンガーと共演する光景が毎度見られるかもしれない。チャーリー・パーカーところで、ギターには90年代のポール・マッカートニーバンドにいた元プリテンダーズのロビー・マッキントッシュが、ギターソロではダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーが弾いている。

 8 Charlie Parker Loves Me 
 チャリー・パーカーとは1940年代に活躍したサックス・プレイヤーで、ビー・バップを伴うアドリブを基調とする新しい音楽モダン・ジャズの礎を作ったジャズマンだ。それにしても果たしてロッド・スチュワートはパーカーを、いやジャズを聴いたりするのだろうか?もっとも、この曲のクレジットにはロッドは作者としては加わっていないから、自身の言葉で歌っているわけではないだろうが。曲は良い出来です。

 9 It Was Love That We Needed 

 オリジナルはカーティス・メンフィールド。アルバム「New World Order」に収録されている。雰囲気は同種のもので南国風な穏やかさが漂う。 ロッドにはジェフ・ベックとの共演で有名な「ピープル・ゲット・レディ」というカーティスの名カバーがあり、あちらは渾身のボーカルが聴けるが、本作はそれとは違ったレイドバックな雰囲気の曲である。夏場に聞けばもう少し好印象かも。

 10 To Be With You Needed
 “GSっぽい。”という意見が多く聞かれるほど、非常に軽いポップス。そうとられるのはギターリフが「想い出の渚」(ワイルドワンズ)に似ているからだろう。僕は60年代初期のアメリカン・ポップスを思い出したがイメージにそう大差はない。新境地を開拓した本作収録曲中では浮いてしまうぐらいシンプルなポップスだが、カーティス・メンフィールドバラエティ性を考えれば収録も妥当なところか。ファンとしては安心して聴ける・・・・・・・しかしこのてのばかりだとロッドファンでないリスナーには“ロッド=ナツメロ”の烙印を押されかねない。唯一のセルフ・プロデュースということでアルバムとは別に作ってあったのかも。

 11 Run Back Into Your Arms  
 欧州ではアルバムに先んじてシングルカット。カッコいいプロモビデオも見ることができます。ストリングスとシャウトするボーカル、ゆったりとしたリズムのニュアンスがフェイセズの「素敵なダンス」を連想させる。名曲とは言えないかもしれないが、こういう曲をコンスタントに発表してくれるとファンとしては嬉しい限りだ。外せない。

 12 Peach(日本盤のみのボーナストラック)
 本作関連では唯一のロックンロールナンバープリンス。サウンドを形作る上でなんといってもスラッシュの参加が大きい。最初から最後まで弾きまくっている。それにしてもちょっと恥かしいぐらいの歌詞なのがまたロッドの若さを表していると言えば言い過ぎか。オリジナルはプリンスで、アルバム「Hits And B-sides Collection」に収録。このアルバムにはロッドが1997年夏の「サウンド&ビジョン」のコンサートでカバーした「Nothing Compare To You」も収録されている。 ところで日本盤の歌詞には歌われていない歌詞部分が最初に付いている。これはいったい何なのだろう??





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