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韓国ソウル訪問記 2007.8.26-28

No.6 2日目夜

一山新都心

夜は、昨晩Sさんから「一山にある自分の勤務先に寄って」と言われていたので、地下鉄3号線で一山に向かう。車両はアメリカ型のようなおむすび型の断面をした型で、車内にはテレビがある。日本やアメリカの地下鉄と異なり郊外も地下をずっと走っているから、こういうテレビ等があるとヒマツブシになって大変良い。

景福宮から40〜50分くらい電車に乗って、終点の一山に到着。ここは地下鉄の延長に伴って1990年代に開発された新しい市街地であり、国際展示場や政府研究機関の一部もここに移転している。その割には駅前のビル等は、新都心というには使い込まれた外観になっている。

6時の定時を過ぎた後だったが、一山に移転したSさんの会社に招いて頂き、仕事の話とかををする。一時間くらい話をした後、昨日同様食事に連れていって頂くことになった。Sさんの自家用車に招かれて、車が走るのは「自由路」と呼ばれる無料の高速道路である。この道路は漢江の支流であるイムジン河沿いを北に向かう幹線道路である。

つまり・・・・・この道路に沿って北に走ってゆくと北朝鮮に辿り着く。標識にも「板門店」とか「イムジン(臨津)閣」とか聞き覚えのある割には重い地名が連なっている。

そんな高速道路に需要があるのかと問い合わせが来そうだが、現在、韓国は「太陽政策」に基づいて北朝鮮に様々な支援を行っている。食糧等の援助物資の運搬ルートになっている他、38度線を北に渡った最初の街である開城(ケソン)にある工業団地への物資の搬出入を担っている。

とはいってもSさんも「分断国家の哀しいところ」と言っていたように、道路沿いには北朝鮮から侵入するスパイに備えて鉄条網が張り巡らされており、また道路沿いには韓国軍の作戦用と思われる軍事区域がずっと張り巡らされている。

「自由路」は最高速度90km/hの道路で、ソウル以北からの幹線交通を担っており車線数は4車線ある。Sさんも毎日の通勤で「自由路」を使っている。無料で規格の高い道路を自由に使えるとあって、日本人にはうらやましい話だが、「自動車税がかかるガソリン代が高い。1リットルで180円くらいする。日本の1リットル150円はびっくりするくらい安い」と漏らしていた。世の中うまくは行かないものである。

自由路の車線数が2車線に減り、風景も鄙びてきた中を30分くらい走り、板門店まであと数kmという場所に位置するムンサンで幹線道路を降りる。

連れていっていただいた店は川魚の有名店である「伴鴎亭(パングジョン ナルトジブ)」である。土日は予約しないと入れない人気店らしい。

店内に入ると座敷があるがガラガラ。あれれと思っていると外がオープンデッキになっており、みんなそこで飲み食いしている。また、おばさんがウナギをタレをつけて片端から焼いている。香りは日本のウナギ蒲焼きにそっくりである。

オープンデッキに腰を下ろしてしばらく待つと、料理が盛られたテーブルが運ばれてくる。すぐに焼き立てのウナギも運ばれてくる。ウナギは日本と同じ蒲焼きにされており、ゴハンが欲しくなる。しかしゴハンは我慢して、昨日食べた焼き肉同様、香味野菜を挟んでサンチュ・エゴマ等の葉野菜で巻いて食べる。こういう食べ方もあるんだとカルチャーショックを受けるが、これが韓国焼酎に合うのでおいしく頂く。昨日と同様、テーブルの上には野菜やキムチ等が並んでいる。Sさんは沢庵みたいな味のする大根漬けの漬け汁を「美味しい」といって啜っている。試しに啜ってみると、味が薄く若干野菜のクセがしみ出た漬物の汁であるが、日本のそれと違い「塩辛い」というよりも「酸味が効いている」味わいである。暑い季節向きの食べ物である。

Sさん曰く「ここのキムチは味がある。巷で売っているキムチは中国産のものが多くて全然駄目」と言っている。確かに考えてみると、発酵食品であるキムチは辛いだけでなく若干の酸味あるが、昨日・今日頂いたキムチは上品かつ複雑な酸味が加わっていた。(この原稿はチェーン店の居酒屋に籠って書いているが、頼んだキムチは辛いだけで味が単純であった。)

話し込んでいる片隅を、銃を構えた韓国軍兵士の一団が歩いて通ってゆく。この店は直接川面に面しているのではなく、店の外はすぐ鉄条網である。その外側は韓国軍の作戦用地になっている。兵士の一団が通り過ぎた後、Sさんは「悪いねぇ」といって盃を捧げたが、Sさんのお子さんも政策の如何に関わらずそろそろ徴兵の対象となる(韓国では徴兵制が敷かれている)はず、Sさんの心中も穏やかではなかったはずである。

酒を呑みウナギを頂きながら、いろんな話をした。日本と韓国の国のこと、仮に国家レベルでそれがうまく行かない場合でも民間の交流は進めるべきこと、隣の北朝鮮とのこと、韓国の文化のこと、そしてお互いの身のうちのこと、できれば聞かずに済ませたかったことも含めて、かなりいろんな事を突っ込んで話した。

昔の人はうまいことを言ったものである「百聞は一見に如かず」。情報化社会の進展でいろんな事が自宅に居ながら分かるようになったが、実際に訪れ訪られないと分からない現実もあるし、それだけでは分からない事も恐らくある。しかし、とりあえず一旦は外に出てみるべきだと今回の旅行を通じて改めて思った。

店を訪れた時にはすこし日が傾いていたが、だいぶ日が暮れてきた。話がはずんでいるうちに、目の前ではナマズの鍋物が運ばれてきた。韓国風の赤い色がついているが、あっさりしているはずのナマズからいい出汁が出ており、汁を啜ると大変おいしい。K氏もしきりに「おいしい」といって汁を啜っている。最後の締めに出てきたゴハンに、最初は日本式にナマズのチゲとゴハンを別々に口に運び、それが終わったら韓国式に汁をごはんにかけて混ぜてからスプーンで口に運んだ。

もう夜の10時頃になろうかという頃、Sさんに再びソウル市内まで送ってもらう。高速道路の反対側は、ムンサンの方角へ向かう車がひっきりなしに走り去っていった。

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更新日 2008.1.10
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