U:世の中の仕組みについて
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6:金ちゃんの成功の秘密

記者:前回はすごいところで終わりました。みんな余分に働いているのに、それに気づいていない。他人が余分に働いた分を利益として自分の物にしている人がいる。これはおそろしい事実です。
記者:しかし、人びとはそのことになぜ気がつかないのでしょう。本日はここからお話いただきます。それではキャピタル3世、よろしくお願いします。

労働者はなぜ気づかない

3世:金一族にとってこれが残された唯一の活路でした。そして、それは必然的なことでもあったのです。
3世:労働者は自分が消費している生活資料(生活に必要な全物資)が全社会平均で一人あたり何時間の労働で生産されているかなんてことは知らない。誰も知らない。だから、自分が働いた分だけ給料をもらっていると信じている。理屈はこれだけなのです。

資本家にもわからない

3世:資本家だって、労働者が余分に働いた分はまず生産物のかたちで目の前にあり、それを売ってお金が回収されて増加分がわかる。だから、それは自分の経営手腕のおかげだと信じているのです。みんなが努力し競争する。そして文明が進歩する。
記者:しかし、このからくりに誰も気がついていないのですか。
3世:いや、マルクスというドイツ人はきづいていた。それで『資本論』を書いた。しかし、その説明があまりにも複雑なのでそれを理解するには大変な努力が必要なんです。マスルス自身すら混乱した部分もあったりしてます。

人によって能率が違う労働時間

記者:いくつかわからないところがあるから説明してください。商品のなかに含まれている労働時間で商品の価値を表すとおっしゃいましたけれど、人によっては能率が違いますよね。
3世:これは一人一人の労働について言っているわけではないのです。あくまでも社会全体で平均して計算できる数です。個々の製品について問題にしているわけじゃない。仕事が遅い人や速い人などいろいろあっていい。その平均なんだから。
記者:誰がその平均の計算しているのですか。
3世:市場でみんなが少しでも高く売り、少しでも安く買おうとしている。この競争によって自然に平均化される。だれも計算なんかしていない。労働の質や能率まで計算できませんから。
記者:では、頭の中で考えただけのことなのですね。
3世:そうです。

儲かる企業と儲からない企業

記者:同じ物をつくっても企業によって業績は異なっている。どうして差ができるのですか。
3世:企業の利益はあくまでも、(売り上げ)−(費用)=(利益)で計算されます。高く売れたり、安く生産したりするのは個々の企業の経営によります。
そうした企業努力を通して社会全体で余分に労働した分を企業で奪い合いの競争をしてるだけです。

社会全体で能率がよくなったらどうなる

記者:大きな技術革新があって、社会全体で生産効率がよくなった場合はどうなるんですか。
3世:技術革新以前の生産力では一人あたりの生活は一日・一人・平均5時間の労働で可能だったとします。これを必要労働時間といいます。
しかし、人びとにはそのことはわからないから一日・一人・8時間働いていたとする。そうすれば一日・一人あたり3時間、余分に労働していることになります。これを剰余労働時間といいます。これらの言葉もこれから何度でも出てきます。

技術革新と相対的剰余労働

3世:そしてたとえば製鉄技術で大きな技術革新があったとします。はじめはその技術を開発した企業やその技術を取り入れた企業には他より多くの利益が入ってきます。これを特別剰余価値といいます。これはお金で表しても労働時間で表してもいい。
3世:やがて、この技術で生産するのが当たり前になってくると、一人の人が一日生活するのに必要な平均労働時間(必要労働時間)はわずかながら減少する。社会全体で平均化されますからね。能率があがった分が全社会で配分されるわけです。
 たとえばそれが15分だったとします。しかし、人びとは同じようにこれまでどおり一日8時間働いていたとすれば、8時間−(5時間−15分)=3時間15分となり、剰余労働は15分増えたことになる。労働時間が長くなったわけではないのに、余分に働く時間が相対的に増えたのでこれを相対的剰余労働時間といいます。下の図でいい言えば黄色の15分の部分です。
全労働時間(8:00)
必要(3:00) 剰余(5:00)
必要(2:45) 剰余(0:15) 剰余(5:00)
必要(2:45) 剰余(5:15)
必要(2:45) 剰余(5:15) (1:00)
記者:大切な言葉がたくさん出てきましたが、労働時間と言ったり価値と言ったりされましたが、どのように使い分けておられるのですか。
3世:剰余労働の場合で言えば、生産物やそれを売ってお金の形にしたものは剰余価値です。それを生産するのにどれだけの労働時間が必要であったかと労働時間で考える場合は剰余労働時間となります。労働そのものを指す場合は剰余労働です。
しかし、何度も言いますが、社会全体で平均的に見た結果の話ですから、やはり、頭の中で考えているだけです。

労働時間と絶対的労働時間

3世:生産技術が向上しなくても、労働時間を延長すれば剰余労働時間は長くなる。これを絶対的剰余労働と言います。給料が安くなったり物価が上がったりすれば、労働者は残業する。この場合も絶対的剰余労働時間が長くなる。 反対に社会全体の生活水準が向上し、給料が上がったりすれば、必要労働時間が増えたことになり、剰余労働時間は減少する。
3世:いつも社会全体でみなければわからない仕組みです。個々の労働者も企業もみんな競争でこれをしているわけだね。
記者:人間って、悲しいですね。
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