U:世の中の仕組みについて
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4:キャピタル家の台頭

記者:誰もが納得する客観的な価値はわからない。人びとは自分の主観的な評価(=価格)をただ言っているにすぎない。それを金という商品で表して比較しているだけでした。それが貨幣になった金というわけでした。
多くの人びとの主観的な評価を経て、結果として平均化された価格を価値とみなすしかない。これが前回の最後の結論でした。

記者:さらに、キャピタル3世のインタビューを続けます。本日もよろしくお願いします。

金ちゃん一族の物語

3世:わかりました。それでは始めましょう。実はわが金一族には古くから対立がありました。金は貨幣か商品かという対立です。それぞれの意見はだいたい次のとおりです。
【商品派の主張】

私たちはあくまでも商品よ。ネックレス、指輪、金工芸品、金歯、工業原料としても役立っている。腐らない、錆びない私たちは高級商品なのよ。大衆の間を渡り歩いて手あかで汚れた旅ぐらしなんかまぴらよ。

【貨幣派の主張】

高級商品だって?何もわかっちゃいない。結局俺たちは役立つたたずの能なしさ。俺たちがいなくても人間様は困りはしない。俺たちにどんな使用価値があるんだ。

あるとすれば貨幣だってこと。いろいろな商品の価値を測ってやって、その交換を助ける。それだけが俺たちの存在理由だよ。

3世:こうして、金一族は商品家と貨幣家のふたつの血筋に分かれて長く激しい内部対立の時代が続いてきたというわけです。この対立を統一するのがわがキャピタル家の仕事となりました。

キャピタル1世の登場

記者:叔父のキャピタル1世はどんな人物でしたか。
3世:ユニークな人でした。かれはいつもこんなことを言っていました。
【キャピタル1世の言葉】

・・・どいつもこいつも能なしよ。商品家の奴らは何を考えているんだ。高級商品だって? 恥を知れ。己を知れってんだ。金一族は能なしの役立たずさ。だからこそ飾りぐらいにしかなれないのさ。いつまで宝石箱のなかで眠っていれば気が済むんだ。

貨幣家の奴らは元気だけが取り柄の能なし野郎さ。どんな商品とも交換できるんだって威張っていやがる。世間の奴らに利用されているだけってことに気づかないのかね。能なしと脳なしのいがみ合い。救いのない野郎どもだ。

3世:言葉は激しいのですが、キャピタル1世は対立激しい金一族の統一を心から願っていました。

キャピタル1世の作戦

3世:キャピタル1世はこんなことも言っています
【キャピタル1世の言葉】

確かに俺たちは商品さ。普通の商品は消費されれば消えてなくなってしまう。しかし、俺たちは錆びない、腐らない、壊れない。丈夫だけの役立たずだ。消費されても消えてなくならないおかげで、大切にしてもらってもいる。貨幣としての役割を兼ね備えているので財産としても大切にされている。ここんところをうまく利用すればちょっとおもしろいことになるぜ。

3世:商品としての金は貴金属として扱われたが、財産として所有される性格も合わせもっていた。一方、貨幣も流通手段としてではなく、いつ何とでも交換できる貨幣として蓄積される傾向があった。商品としての金も貨幣としての金も蓄積手段(財産)としての共通点をもっていたのです。ここに眼をつけたのがキャピタル1世だったのです。

貨幣家への呼びかけ

3世:そしてK1世はこう呼びかけました。
【キャピタル1世の言葉】

貨幣家の諸君、君たちは他の商品のために旅を続けていてはだめだ。そう言うのを脳なしと言う。人のために旅をするんだったら商品家の奴らのように宝石箱で眠っていた方がよっぽどましだ。旅は自分のためにこそするものさ。

私が言いたいことはこうだ。諸君が旅に出るときは諸君は100グラムだったとする。そして旅から返ってきたときは105グラムになっていたとする。つまり諸君は旅の間に大きく成長するってわけだ。

商品家への呼びかけ

3世:キャピタル1世はさらに商品家の人びとにも呼びかけました。
【キャピタル1世の言葉】

商品家の諸君、君たちはいつまでそこで高級商品だなんてうぬぼれているんだね。そのままでは変化がないではないか。

旅にでるんだ。そして大きくなるんだ。自分を鍛え、商品のなかの王にふさわしい存在になろうではないか。もちろん、旅の途中で身を減らすこともあるだろう。しかし、それをおそれてはならない。危険を冒す者だけが強く大きくなれるのだ。

俺たちは資本になろう

記者:それでは、キャピタル1世は資本になることをたくらんでいたのですか。
3世:そうなんです。そこがキャピタル1世のすごいところです。かれは、よく言っていました。「俺たち金一族に価値があるとすれば、それは絶えず巨大になろうとする王としての姿にこそある。俺たちは資本になるんだ。」とね。
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