U:世の中の仕組みについて
金ちゃんの征服物語
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3:金ちゃんの結論

記者:自分の価値をわかってもらいたいと願っておられた若いころの金ちゃんが、その願いとは反対に他の商品からのけ者にされるような事態になった。今回はそこからお話ください。

金ちゃんの決意

3世:私の叫びにはだれも耳をかさず、こうして私は貨幣という地位につけられてしまいました。このとき、心に誓いました。今にみていろ。おれはおまえたちの上に君臨し、思うようにおまえたちを動かしていやる、と。
記者:孤独な決意ですね。つらい境遇をバネにして活路を求められたのですね。
3世:しかし、問題はこれですべて解決したわけではなりませんでした。
【手記】

俺は他の商品の価値を表す道具となった。しかし、金自身の価値はどのように表されるのだろうか。

金の価値がわからなければ、他の商品の価値も表せないではないか。そこのところはどうなっているのだろうか。

金ちゃんの自問自答

3世:私の自問自答はまだ続きました。
【手記】

おれのおかげでみんなの価値がわかる。しかし、おれの価値はどうやって証明したらいいんだ。

だいたい俺は商品なのか貨幣なのか。鉱山で掘られたときは商品だ。

しかし、鉱夫たちは給料として俺を受け取っている。そして酒屋へと繰り出すじゃないか。もうその時は俺は貨幣だ。

俺は本当は商品なのか、貨幣なのか。

金の価値は変幻自在

【手記】

ある奴は俺10グラムで時計を買ったりする。同じ時計でも人によっては11グラムで交換したり、9グラムで交換したりする。時計屋の親父とお客の駆け引き次第だ。

つまり、俺自身の価値ははっきりしていないのか。でも10グラムの金は10グラムの金だ。何も変わりはしない。

価値はふたつあるのか

【手記】

俺の価値はふたつあると考えたらどうだろう。本当の価値。つまり俺が鉱山の奥深くから掘り出されたときの苦労。これは本当の俺の価値だ。

だけどそれは他の人には理解できない。鉱夫だけが知っている。そして、みんなは俺の価値をああじゃないか、こうじゃないかと想像していろんな物と交換する。

この時の俺の価値は仮の姿。いろんなところで、いろんな物と交換されながら俺の価値が証明されていく。ややこしいんで俺の仮の値打ちは価格と言っておこう。そうだ、価値と価格があるんだ。

3世:価値と価格をわけて考えることを思いついたら、何かがすこし見えてきたような気がしました。
記者:問題がだいぶ整理されましたね。価値は本当の価値、つまり作られるのにどれだけの苦労があったかを表している。しかし、それはわからない。価格は客観的には価値を表さないけれど、みんなの評価を表している。そう考えていいのですか。
3世:でもまだ、全部解決したわけではないのです。
【手記】

時計1個=金10グラム:これは思惑

背広1着=金10グラム:これも思惑

時計1個=背広1着:だけどこれで交換可能

こうして時計と背広が交換されればいいのだ。そもそもどんな物も価値なんかわかりはしない。交換がくり返されて、いろいろな人の主観的な評価(価格)が平均化されればそれが結果として価値を表している。そう考えればいい。

それでは、金はただの仲介者。交換が成立すればお役ご免。ご苦労様。これでいいのか。

3世:金一族は、いろいろな商品の価値を表すために、のけ者にされた。しかし、金(きん)で表すのはそれぞれの思惑、主観であって、本当の価値ではない。そもそも、金(きん)の価値だってわからない。
 それでは金はなんのために存在するのだ、それが最後に残った疑問だったのです。それでこんなふうに考えました。
3世:こうして、私の疑問は解決されずじまいになりました。
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