U:世の中の仕組みについて
金ちゃんの征服物語
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2:金ちゃんの誕生悲話

記者:自分がした苦労を他の人にどのようにわかってもらうか。人の世の基本問題について、引き続きキャピタル3世閣下にお話ししていただきます。よろしくお願いします。
3世:続きを話しましょう。

漁師さんがサンマをぶらさげてやってきた

3世:そんなことをぶつぶつ言いながら考えていたら、ひらめいたことがありました。物々交換です。こんなふうに考えました。
【手記】
漁師:サンマ2尾と梨1個となら交換してもいいよ。
農家:梨1個とサンマ3尾なら交換してもいい。
漁師:わかった。サンマ3尾=梨1個だね。
これでサンマ3尾の価値が梨1個で表された。でも、「俺のサンマは本当に3尾が梨1個の価値なのかな。」漁師は頭をかしげながら帰って行った。

職人がほうきをもってやってきた

3世:この話はさらに続きます。
【手記】
職人:おれの作った竹ぼうき1個と梨3個と交換してくれ。
農夫:ウ・・ン。梨1個だよ。
職人:おいおい、竹ぼうき作るのは大変なんだよ。
農夫:梨を育てるのはもっと大変だよ。
職人:わかった。では竹ぼうき1個と梨2個ではどうか。
農夫:それでいいよ。
これで、竹ぼうき1個と梨2個が同じ価値ということになった。でも職人も農夫も何となく釈然としない様子だ。

漁師と職人がばったり

3世:さらに、こんなふうに続きます。
【手記】

職人が梨をもって歩いていると、漁師にばったりあった。漁師のもっている梨を見た職人は漁師に尋ねた。

職人:もしかして、その梨は農夫のところで手に入れたのかい。
漁師:そうだよ。農夫はしっかりしていて、サンマ3尾なら梨1個と交換していい、と言ったんでそうしたよ。
それを聞いた職人は驚いてこう言った。
職人:俺は竹ぼうき1個と梨2個で交換したよ。
漁師:じゃ、おまえのほうき1個は俺のサンマ6尾の価値があるってわけか。おれのサンマそんなに価値がないのかな。
漁師はそう言うと、とぼとぼと港の方へ歩いていった。

梨がお金の役割をしている

【手記】

しかし、この話だけでは納得できないことが多すぎる。この話は秋のはじめのころで、みんな農家の果樹園に行っていろいろなものと交換して梨を手にれていたから、梨でいろいろな物の価値が比較できていたにすぎない。春ならタケノコだろうか。

しかし、誰でもが梨を欲しがるわけではない。梨が育たないところだってある。それに梨は日がたてばしなびて腐ってしまう。なにかいい手はないか・・・

金ならどうか

【手記】

「金ならどうか。金がいい。金は腐らない。柔らかくて小さく分割できる。珍しい。それに錆びないし、どこにも転がっていないからみんな欲しがる。」

「でも、何の役に立つのかい、あれが。だいたいウンコみたいな色だぜ。」「だからいいんだよ。役に立たてば、みんな手放さないから、物々交換できなくなってしまう。」

3世:まあ、こんなふうに考えたわけです。

金ちゃん参上

記者:これは金ちゃんの創作ですよね。若きころの金ちゃんはこのストーリーに納得されたのですか。
3世:そうです。そこです。理屈だけではこれで説明できます。しかし、納得はできません。だから、こんなことが書いてあります。
【手記】

ちょっと待ってよ。それじゃ俺は仲間はずれじゃないか。俺だってみんなと同じ商品だ。お姫様の首を飾ったりして、梨やサンマや竹ぼうきと同じように役にたってる。

なのになぜ、俺だけがみんなのために走り回らなければならないんだ。知らない人から人へ渡され、盗賊に拉致され、暗い金庫のなかに何年も閉じこめられたり、瓶に入れられて何百年も地面に埋められることだってあるよ。

記者:孤独な叫びですね。
3世:・・・・(K3世は黙って遠くを見つめるような眼をされていました。)
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