U:世の中の仕組みについて
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1: 「こんにちは。キャピタル3世」

記者:お会いできて光栄です。お忙しい中、時間をつくっていただき、本当にありがとうござました。
 近年、経済をめぐる問題が次々に起こっています。これまでの考え方だけでは、これらの変化に対応できないのではないかという意見もあります。
 そんななか、そもそも資本主義経済とはどんな仕組みなのかと根本から問い直す動きも見られます。マルクスの資本論が見直され始めたのもそうした動きのひとつだと思われます。
 そこで、今回、資本主義の仕組みを完成させたとされる金一族を代表するキャピタル家のキャピタル3世にシリーズでお話を伺うことになりました。よろしく、お願いします。
3世:こちらこそ。(記者:謙虚な方だ・・・)
記者:さっそくですが、閣下が現在の資本主義経済の仕組みを作られたとされていますが、それは本当のことですかですか。
3世:私は、資本主義経済の仕組みの考え方をデザインしただけです。私の仕事のまえには金一族の苦労があります。話せば長い話ですが。
記者:それでは、まず金一族のことからお話ください。
3世:わかりました。(3世は何かを思い出すように話し始めました。)

すべては人間からはじまるのだ

3世:若いころの私にはいろいろ悩みがありました。そのころの私の日記にはこんなことが書かれています。今では懐かしいことですが。
【手記】

確かに、地上に人類が誕生するまで、自然はただの自然でしかなかった。自然界のどんな物も、たとえばダイヤモンドでも金でもはじめは価値も使用価値もなかった。

変わってしまったのはあの瞬間からだ。人間が直立歩行により自由になった手で物を作るようになった時だ。その瞬間から自然界の物は人間によって生産物にされる対象となったのだ。

【手記】

人間は目的を持って活動し、物に労働力を加え、使用価値として物(生産物)を獲得するようになった。ここまでは間違いない事実だ。

3世:この頃の私はまるで霧のなかにいるようで、混乱していました。自分なりに冷静になって客観的に考えようと努力していました。
記者:この頃から閣下は何かお悩みになっておられたのですか。
3世:その閣下はやめていただけませんか。
記者:それでは何とお呼びしたらいいのでしょうか。
3世:そうですね。金ちゃんでどうでしょう。
記者:金ちゃんですか。ちょっど言いづらいですが・・・
3世:それでいいです。金(キン)だってただの金属。鉄や銅と同じなのに、だからといって、なぜ自分たちだけが貨幣にされたのか、その理由が知りたかったのです。私としては特別扱いされるのがイヤでたまりませんでしたから。
記者:なるほど。

「俺の価値をわかって欲しい」

3世:続けましょう。
【手記】

目的をもって労働するから他人のためにも労働できる。これも納得できる。他人のために労働したとき生産物には価値が生じる。そのとおりだ。

自分が作った物を他人が使う。つまり自分の労働(苦労=汗の結晶)を他人が消費する。ここから怪しくなってくる。知ってる奴が消費するならまだいい。いつ自分の方がお世話になるしかわからない。感謝だってしてくれる。

【手記】

しかしだ。まったく知らない奴の分まで苦労はしたくない。おれの労働(苦労)の成果(生産物)を使いたいならお礼をしてくれなければ納得できない。俺はバカを見ることになる。

だけど山の向こうの奴や海の向こうの見知らぬ奴に俺の苦労をわからせるにはどうしたらいいんだ。

記者:これは閣下が何歳のころのことですか。
3世:やはり、思春期のころだったかな。
記者:閣下は、いや金ちゃんは、物をつくった時の苦労をどのように表すかで悩んでおられたのですね。
3世:そう言うことになるね。あなただって、自分の苦労を人にはきちんと評価してもらいたいでしょう。
記者:そうですね。それは社会における人間関係の基本テーマですね。金ちゃんの結論はどうなったのでしょうか。先が楽しみです。本日はありがとうございました。
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