U:世の中の仕組みについて
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18:お疲れさま金ちゃん

記者:固定資本という重たい大きな部分を抱えている資本は、そのために自由に動けません。その大きさ、重さは投資した産業分野の技術力に左右されていますことになります。たとえば、溶鉱炉をかかえる製鉄工場はパン工場より固定資本は大きいはずです。
 つまり、投資した分野によって利潤率が決まってしますことになります。これは自己増殖をめざす運動体である資本にとっては容認できないことでした。
 この問題を解決するために遊休資本を運用して信用経済の仕組みが作られましたが、信用経済は現実の経済を正しく反映しないという弱点があるため、恐慌が発生しました。
 これは過剰となった現実の資本を破壊し、新しい技術の導入によって克服されるしかない大規模で深刻な経済現象でした。
 そうすると、資本の絶えざる増殖は技術革新に左右されることになってしまいます。今回はこのことがテーマになります。

資本そのものが売買される

3世:結論から行きましょう。その問題は生産資本ごと売買することによって解決されます。
記者:生産資本ごと売買するってことは会社ごと売るってことですか。
3世:そうです。よくありますよね、一種の企業売買です。
記者:しかし、巨大企業を売り買いすることができますか。
3世:問題の核心はそこです。巨大企業を分割していろいろな人に売ってしまう。そんな方法があるのです。それが株です。

株の配当率株価はどうやって決まるか

3世:企業を集団で所有し、利潤は出資額に応じて配分する。経営と所有を分離し、経営は有能な人にゆだねる。これが株式会社の姿です。
記者:しかし、問題がありませんか。利潤が大きい会社には投資しようとする人が集まり、企業は拡大します。
 しかし、儲からなくなったらどうするのですか。一度投資し、生産施設に形をかえた資金は回収できないのではないのですか。
3世:そうですね。しかし、株価は変動します。利潤率が高ければ高配当を期待して投資家が集まります。利潤率が低くなれば投資家は配当を受ける権利を売却し、資金を引き揚げることができます。
記者:株が商品のように売買されるわけですね。
3世:そうです。株が売買されれば、不況期に利潤が減少した企業の株価は低落し、売買されやすくなります。再建しようとする人がいれば、少ない資金で企業を買収したり、合併したりして、その企業の固定資本を有効に活用できます。
記者:なるほど、まさに企業も商品のように扱われるのですね。

株の配当率とは

3世:株の売買にとって重要なのは配当率です。たとえば、100万円で買った企業から1年に5万円の配当を受けたとします。
 それは出資者にとって5%の利子で貯金したのと同じです。ですから、株が売買される株式市場は銀行利子と同じように貨幣市場の一部になるのです。

株の配当率はどのように決まるのか

3世:ただ、配当金は株主総会で人為的に決められます。儲かっているからといって配当が増えるわけではありません。事業拡大に利益を使うのか、出資者に配当するのかも株主の意志により株主総会で決められます。
記者:株価はどのように決まるのですか。

株価はどのように決まるのか

3世:例をあげます。額面100円で1万株が発行されて設立された企業がありました。資本金は100万円です。利子率(年)5%の経済環境で、この企業には10万円の利潤があったとします。
 この企業の株を100株持っている人に次のような配当がありました。
10万円×(100株÷10000株)=1000円
市場の金利は5%ですから、1000円の利子を得るには1000÷0.05=20000で元金2万円が必要です。ですから、
20000円÷100株=200円でこの企業の株を200円で買っても、銀行に預金して利子をもらうのと同じ利益が得られることになります。これが額面100円の株式が200円で売買される理屈です。
記者:なるほど。額面100円が貨幣市場から見ると200円に見えるのですね。2倍の倍率のレンズで見ているようなものですね。
3世:レンズで見ているようなものですね。
K3世:これで振り出しに戻りました。商品→貨幣→資本と転化してきた資本が、商品になったのです。これで私の征服物語は完結です。
記者:振り出しにもどっては、虚しくありませんか。
3世:いや。征服した王国に君臨したのでは、王国が完成したとは言えません。自分で作った王国に自分もその一国民となって住んでこそ、王国は完成するのです。
記者:すごい!
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