U:世の中の仕組みについて
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17:金ちゃんのハードボイルド

記者:流通資本が自立して流通を合理化し商業資本として利潤をあげるようになりました。そして諸準備金として一時的に遊んでる貨幣を基盤に商業信用・銀行信用のシステムが成立しました。これにより貨幣の流通が合理化され、貨幣資本の利潤つまり利子が生まれ、貨幣市場が成立しました。
 これにより、超過利潤の均等化がますます進んだわけですが、やはり信用というなにかブヨブヨしたものの上にできた建物のようで、心配です。そこのところを伺いましょう。

基本テーマ:利潤はどう分配されるか

3世:もう一度出発点を確認します。全社会の剰余価値、つまり労働者が余分に働いて生産した生産物を利潤としてどのように分配するかを見てきました。
 全剰余価値つまり全利潤は市場の価格競争をとおして平均化され平均利潤として全資本に分配されました。生産条件のよい企業に生じた超過利潤も同一分野の企業間の競争、分野を超えた資本の投資によりやがて均等化されました。

派生テーマ:固定資本のために資本は移動しづらい

3世:しかし、ここに問題がありました。産業資本はその資本の大きな部分を固定資本(工場や機械)として投資をしているため、簡単には移動できません。それは超過利潤の均等化には障害となりました。
 諸準備金として一時的に遊休していた資本が信用経済の仕組みを作り出し、部分的ながら資本の流通性を高めることが可能になりました。

商業信用は信用できるか

3世:信用とはあなたがおっしゃるとおりブヨブヨしたものです。いや、ものではなく状態に過ぎません。貨幣(金)は商品です。つまりものです。
 しかし、銀行券は紙切れではありますが信用という状態にすぎませんから、収縮したり肥大化したりします。
 貨幣市場が正確に生産の拡大を貨幣の需要として反映されれば問題ないのですが、過小にまたは過大に反映してしまうと、現実資本の量と貨幣資本の量にアンバランスが生じ、利子率(貨幣の世界の利潤率)が利潤率(現実の世界の利潤率)を正確に反映しなくなる危険性があるのです。
記者:具体的にはどんなことがおきるのですか。
3世:つまり、貨幣だけどんどん多くなり、実際にはない需要をあてこんで投資されたりします。そうすれば、過剰に生産が行われ、市場価格は急激にさがります。
 そうすると今度は利子が急激にさがり、投資はストップしてしまいます。つまり、利子率が経済の現実を表さなくなってしますのです。
記者:深刻ですね。
3世:そのへんの事情をもう少し詳しく見てみましょう。資本の蓄積が進み、生産が拡大されている場面から始めます。

好況期:資本家的な蓄積が進む

【 活況期 】

  1. 生産を拡大すれば利潤が約束されています。
  2. 設備投資もさかんで貨幣市場では貨幣に対する需要も多い。
  3. したがって利子率は利潤率をこえてあがります。
  4. そして、生産の拡大がつづき貨幣の供給量も安定し、利子率も利潤率も安定します。
  5. しかし、生産の拡大により労働力の不足がちになるとともに、流通資本の社会的な節約も限界に近づきます。

【 最好況末期 】

  1. 信用が肥大したため、銀行券の流通量は増大し、銀行券の金に対する価値がさがり、中央銀行の金が流出しはじめます。
  2. 中央銀行は公定歩合を引き上げ、手形の割引料を減らして、銀行券を取り戻します。
  3. その結果、利子率は急激に上昇します。
  4. 信用によって肥大化した貨幣市場が金の登場によって一気に収縮したのです。
  5. 利子率は高くても、労賃が高くなったため利潤率が低下していますから、貨幣市場で貨幣を手に入れることが難しくなります。

最好況期末期

【 貨幣恐慌 】

  1. 現実資本の蓄積
  2. 労働者人口に対する過剰な設備投資
  3. 剰余価値率の低下
  4. 利潤率の低下
  5. 貨幣供給量の減少。
  6. このような状態にもかかわらず銀行券が中央銀行によって回収され、貨幣は絶対的に欠乏状態に陥ります。
  7. 貨幣市場の全面的な崩壊です。
  8. この貨幣恐慌は商業資本の破産と整理をとおして、商品の大量の投げる売りを引きおこし、商品価格を全面的に崩壊させます。商業資本の運転資金がないからです。

【 産業恐慌 】

  1. 商品価格の崩落によって、資本の価値増殖は望めなくなり、再生産を続けることが資本にとって無意味になります。
  2. このような状態になると、投資された生産設備はもはや資本ではなく単なる自然的な素材(物)でしかありません。
  3. このようにして、信用創造の拡大によって隠されてきた現実の資本が過剰に蓄積されていることがはっきりしてしまいます。
  4. 現実資本(工場や機械など)は文字どおり現実に破壊され廃棄されます。
  5. 固定資本という形で生産過程に縛られているために、現実の貨幣(金)によって資本価値が破壊されなければ、停止した資本の活動は再開されないのです。
  6. 固定資本の流通とは、古い生産設備が破壊され、新しい生産設備によって置き換えられることを意味するわけです。技術革新によって新しい生産力の水準が形成される過程が不況と呼ばれる過程なのです。

不況・個別資本的な蓄積

3世:恐慌は不況期を経て再び好況期へと向かいます。

【技術革新の成果】

技術革新による合理化によって、いろいろな商品の価格がさがります。労働時間も短縮ます。

【労働力の価値の低下】

商品の価格がさがれば、労働力の価値もさがります。労働力を再生産するための平均労働時間もさがるからです。

【剰余価値率の低下】

必要労働時間が減少すれば、労働時間が一定なら余分に働く時間である剰余労働時間は増えます。ですから剰余価値率が上昇します。

【資本構成の高度化】

固定資本(c)と流動資本(v)の比を資本構成といいます。技術革新が進むとこの比が大きくなります。工場の設備は巨大化・高度化し、その分労働者は減らされます。

【労賃の低下】

仕事が少なく、労働者が余れば労賃はさがります。それは生産費用は少なくてすむわけですから、利潤が増えます。

【設備投資の増加】

貨幣はだぶつき、利子率は低い、労賃も安いですから、資本家は投資を増やします。こうして、不況は好況へと向かいます。

記者:これまでお話しいただいたとおりですね。
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