U:世の中の仕組みについて
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16:元祖金ちゃんと影武者

記者:前回は、商品の信用売買にもとづいた商業手形によって、各資本家相互の債権(貨幣を受け取る権利)と債務(貨幣を支払う義務)を銀行が発行する銀行手形(=銀行券)のやり取りに組み替える仕組み、つまり銀行制度の成立について話していただきました。
 しかし、そもそもの問題は固定資本によって拘束されている資本の流動性をいかに高めるかにありました。このことと、銀行制度とどのようにつながっていくのでしょうか。

銀行の収入はどこから

3世:前回の続きでいえば、センターになって銀行の役割をする資本(企業)には利益はないのか、という問題から始めましょう。 実は企業経営者の世界には手形割引という制度があります。それは次のような仕組みです。 受け取った手形には支払い額と支払い期日が明記されています。しかし、どうしても現金が必要で支払期日以前に支払いを受けたい場合もあります。 そんな時はどうするかといえば、支払額から多少減額されてもいいから期日前に現金を払ってくれる人を見つければいいのです。これを手形割引といいます。 たとえば100万円の手形を支払期日より1ヶ月前に90万円で割り引いたとすれば、100−90で1ヶ月を10万円で売買したことになります。割り引いた人はこの手形の支払期日がきたら、100万円支払ってもらい、10万円の利益が生じます。
記者:それは利子と同じですね。月に10万円÷100万円=0.1ですから1年に直すと1.2、つまり120%の利子です。高いですね。
3世:まさに、これが利子の根拠です。割り引く人は経営に行き詰まっている企業の手形を割り引けば、支払い期日前に倒産するというリスクを覚悟しなければなりません。

利子の成立

3世:再生産のための準備金や支払準備金が商業信用を生み、商業信用が拡大して銀行信用が成立した事情をみてきましたが、銀行で手形が決済されることが多くなると、各資本のもとにあった準備金が銀行に集まるようになります。
なぜなら、その分銀行は支払いのために準備していた自己資本を節約でき、銀行券の発行を増やすことができます。
当然、銀行に資金を預託した資本家は新たに生じた銀行の利潤の分け前を請求します。これが預金利子です。
記者:割引手形の割引額が借り入れ利子で、余っている資金で生まれた銀行利潤の配分が預け入れ利子なんですね。

貨幣になった銀行券

3世:銀行信用が拡大していくと、貨幣(きん)ではなく銀行券の形で資本家は諸準備金を銀行に預けるケースもでてきます。
銀行は自分か発行した銀行券(借用証書にすぎない)を貨幣のように扱わなければならなくなります。利子も銀行券で支払われるようになります。
記者:まさに貨幣(金)と同じですね。
3世:しかし、ここで気をつけなければならないのは、銀行券はあくまでも現実の貨幣(金)の流通量を節約するために流通している貨幣の代理物でしかないという事実です。
 いいかえれば、商品の信用売りをとおして貸し付けられた債権を社会的に流通させているにすぎないということです。
記者:そう聞くと、なにか心配にもなります。

中央銀行の成立

3世:中央銀行が全社会(国内)の信用を組織するようになると、他の銀行の銀行券にとってかわって中央銀行の銀行券が唯一の銀行券として流通するようになります。
 中央銀行以外の銀行は普通銀行となり銀行券を発行しなくなります。
記者:流通が中央銀行・普通銀行・商業信用の三層になるわけですね。
3世:どのような流れになるか、整理してみます。

【貨幣に対する需要が多く、信用が拡大する場合】

  1. 商業手形の発行が増え、普通銀行での割引額が多くなる
  2. 預金が減少し銀行券の流通量も多くなる
  3. 普通銀行も資金不足になり中央銀行で手形を再割引するか中央銀行へ預けている預金をおろす
  4. 中央銀行が発行する銀行券が増える
  5. 発行した銀行券と中央銀行の保有する金との比がさがる
  6. 中央銀行の保有する金が銀行券と交換される
  7. 中央銀行の保有する金が流出する
  8. 中央銀行は手形割引率と預金の利子率(公定歩合)をあげて金の流出を防ぐ。

【貨幣に対する需要が減り、信用が収縮する場合】

  1. 商業手形の発行が減少する
  2. 手形割引量の減少
  3. 余った銀行券が銀行に預金される
  4. 普通銀行が中央銀行で割り引く手形の量が減る
  5. 普通銀行の中央銀行への預金も増える
  6. 中央銀行の発行した銀行券と中央銀行の保有する金との比が大きくなり、中央銀行は銀行券を発行して流出した金を買い戻す。
記者:銀行券と金(きん)が交換された金本位制の時代の仕組みですね。銀行券はまるで貨幣つまりキャピタル3世の影武者ですね。
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