U:世の中の仕組みについて
金ちゃんの征服物語
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15:超過利潤を均等化するすご腕金ちゃん

記者:競争には三種類ありました。まず同業者どおしの競争です。キリンとサッポロとアサヒの競争みたいなものです。この競争は市場での消費者の動向で決まります。
 さらに、ビール業界が儲かっているようですと、ジュースや食品などの産業もビール会社に投資したり、事業提携したりして、ビール業界は拡大していきます。
 その結果、ビール業界の競争が激しくなり、価格が下がっていきます。業界内競争、市場での消費者の競争、そして業界を超えた競争の三種類の競争がありますが、これらはすべて、市場での競争をとおして行われます。

準備金と商品在庫

3世:企業は利益のなかから、固定資本の買い換えのために資金を積み立てたり、価格の変動に備えて準備金を積み立てたりしています。
それらは投資されなかった資本です。これらは、再生産がスムースに流れるようにするための潤滑油的な役割を果たしています。
この一見無駄のような準備金や積立金が役割をすることになります。

商業信用と流通資本の節約

3世:最近は一般の消費者もキャッシュで売買しないことが多くなりましたが、企業どおしの取引では手形による信用取引が普通です。
たとえば、AとB、BとC、CとDの間で100万円の商品が別々に売買されたとします。
 この場合現金取引ですと、全部で300万円の現金が動きます。
 しかし、Aが支払準備金として100万円の現金を持っており、必ず支払うという信用が成立していれば、Aの振り出す100万円の手形がA→B→C→Dへと渡り、最後のDがAに支払いを要求し、AがDに100万円を支払うことになります。その結果、300万円−100万円=200万円の資本が節約され、それが再生産の拡張に回され、利潤を生みだします。
 これを商業信用と言います。あくまでも約束どおりきちんと支払うという信用が確立しててのことです。
記者:うまい仕組みですね。商売の経験がないとなかなかわからない世界ですね。

商業信用の限界

3世:しかし、商業信用といえども万能ではありません。なぜなら、手形で商品を購入したBとCの資本家はAが確実に支払いを行うまでは、その手形に対して共同保証人であり、実際に貨幣の支払いを負担する可能性は残されているのです。
また、Aは必ず貨幣を支払わなければならないのですから、貨幣の節約は部分的に行われているに過ぎません。
さらに、Aという特定の支払者、特定の金額、特定の支払日に制約を受けた特定の条件の下での信用に過ぎないということです。上の例でいえば、同じ100万円の取引が順番に行われたという偶然でしか成りたたない話でした。
記者:そうですね。これが100万円でなく90万円だったり110万円だったりすれば過不足が出ますね。

不特定手形が銀行券になった

3世:この限界は簡単に乗りこえられるのです。先の例の特定と言うところをすべて不特定にしてしまいます。
 不特定の資本家に対して、支払期日を指定せず、一定の単位金額を支払う手形を振り出せばいいのです。
 たとえば100万円・50万円・10万円・1万円の4種類の手形を多数振り出せば、組み合わせ次第で1万円単位でしたらどんな金額でも表せられます。
 そして、「この手形を持参した人にはいつでも貨幣(金)を支払います」というセンターがあればいいのです。
記者:それは、銀行のことですね。
3世:そうです。このセンターこそ中央銀行で、不特定手形こそ銀行券(お札)のことです。金(きん)を持ち歩き、金(金)で支払う不便はこれで解決されるのです。
記者:しかし、誰がセンターになり不特定手形を発行すればいいのですか。

キャピタル3世の影武者

3世:それは地域や時代によっていろいろありえます。いきなり中央銀行という形ではなく、各地域で取引の多い信用もある企業が発行する手形が銀行券に近い役割をはたしていたこともあるでしょう。
 しかし、ここで新しい問題が出てきます。センターになる企業にはどんな利益があるのか、ということです。それは次のテーマです。
記者:だんだん現実の経済に近づいていく感じです。次回が楽しみです。
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