U:世の中の仕組みについて
金ちゃんの征服物語
home | 金ちゃんの征服物語

14:超過利潤を均等化するすご腕金ちゃん

記者:競争には三種類ありました。まず同業者どおしの競争です。キリンとサッポロとアサヒの競争みたいなものです。この競争は市場での消費者の動向で決まります。
 さらに、ビール業界が儲かっているようですと、ジュースや食品などの産業もビール会社に投資したり、事業提携したりして、ビール業界は拡大していきます。
 その結果、ビール業界の競争が激しくなり、価格が下がっていきます。業界内競争、市場での消費者の競争、そして業界を超えた競争の三種類の競争がありますが、これらはすべて、市場での競争をとおして行われます。

商業資本の登場

3世:その通りです。そしてこの競争状態のなかで、資本はどのように自分の主導権を回復するか、それが本日のテーマです。
3世:資本がバラバラになって競争していたら、それは消費者に主導権を奪われてしまいます。ですから結束すればいいのです。その結束の姿こそ商業資本です。
記者:突然、商業資本だ出てきましたが、それは何なんですか。
3世:以前、「Time is money.」のところで、商品が売り切れ、資本が回収されるまで生産がストップしていまうため、それだけ生産施設が無駄になり効率が悪くなる、ということを考えましたね。
 流通過程にある資本つまり、流通資本を生産資本から商業資本として分離して、流通を合理化し消費者に対して主導権をつくり出すという作戦です。ここの企業の生産資本と流通資本が全資本の産業資本と商業資本に束ねられていきます。
記者:剰余価値を考えるときは全社会で見る必要がある。あれですね。

商業資本が利潤をえる理由

3世:商業資本は(G)→(W)→(G+g)の形をとりました。Gは貨幣、Wは商品、gは利潤です。このgがどこから生まれるか、その秘密がやっと明かされます。
 また、例をあげて計算します。産業資本を1000とし、その資本構成は次のとおりとします。800c+200v+200m=1200W
資本CVMW
産業資本8002002001200
追加資本802020120
合計8802202201320
3世:一般的利潤率は
220m÷(880c+220v+100商業資本)=(18+1/3)%
(18+1/3)%−(16+2/3)%=(1+1/3)%
3世:この(1+1/3)%は100の商業資本が独立して流通過程を担当し、余った100の資本が余分に投資したために生じた利潤ですから、商業資本もこの(18+1/3)%の利潤率によって利潤の配分にあずかるわけです。

商業資本の独立

3世:何ら価値を形成するわけでもない商業資本もこのように利潤をあげるようになると、今までは必要悪として消極的な意味しかなかった流通費用も、それによって商品の売買が集中的に行われるようになり、積極的な意味を持ってきます。
 また、商業資本の分野の労働者の労働によって流通費が節約されるようになると、平均利潤として配分される社会的な総剰余価値がその分多くなり、利潤率も上昇します。
 なんら価値を生産することのない商業部門の労働もこうして社会的な意味をもつようになるのです。
記者:スーパーやコンビニの店員も利潤率のアップに役立っている事情がよくわかりました。

超過利潤の平均化

3世:商業資本にとって利潤を上昇させるにはその回転を速めることです。商業資本の回転を速めるにはよく売れる商品を売ればいいわけです。
 需要が多い商品がより多く流通過程に流れれば、それだけその商品の市場価格は低落し、超過利潤は消滅せざるえません。それとともに、商業資本の関心も他の商品へ向けられることになります。

商業資本の限界

3世:このようにして商業資本は超過利潤を平準化し、利潤率を平均化します。しかし、問題はこれですべて解決したわけではありません。
 これまで、資本はあたかもどんな産業にも自由に投資できるように考えてきましたが、機械や建物など大きな資本が固定資本として投資されており、このことが資本の移動を制約し、利潤率の平均化を疎外しているのです。
 産業資本にとって宿命的な固定資本という鎖を解き放つことは可能でしょうか。それが次のテーマです。
記者:次から次へと問題が出てきますね。
ページのトップ |

home | 金ちゃんの征服物語 | 戻る | 次へ
Copyright (C) 2009 物語で読み解く社会科入門
All Rights Reserved.