V:「生きづらさ」について
女と男と家族と物語
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(18) どうして男と女がいるのですか

そもそもどうして生殖活動はオスとメスの間で行われるようになったのでしょう。

生物にはなぜオスとメスがあるのか

生物学者は次のような仮説でこの疑問に答えています。

「親の世代の遺伝子を100%受け継ぐ無性生殖の生物では、同じ遺伝子の子孫ばかりが生まれて、種として多様性が蓄積されにくくなる。

しかし、メスとオスの遺伝子を半分ずつ組み合わせる形の有性生殖では子供は両親の遺伝子を組み合わせて自分を形成するので、多様な遺伝子の子孫を残す。多様な遺伝子を持つ方が、環境の変化にも適応しやすくなり、種として様々な環境を生き延びることになる。」

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外部を取り込むセックスの機能

メスは敢えてオスという外部を自分の中に取りこむことで、適応力のあるタフな子孫を残そうとします。

代謝だけでなく、生殖においても生物は外部を限定的に取り込むことによって、種として存続しつづけてきたのです。

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自己認証システムとしての免疫

外部を取り込まなければ生きられない生物はいつも外的な危機にさらされています。そのため、自己を自己として認証しつづける仕組みを生物は備えています。

それが免疫だと生物学では考えられています。取り込んではならない外部はこれによって、排除され、内部環境が一定に維持されることになります。

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自己も外部と見なしてしまう免疫

この免疫の仕組みも、老化すると自己を外部と見なしてしまい、自己を攻撃するようになり死に至ると考えられています。

自分が自分でありつづけるのは、日々の営みの積み重ねの結果だと言えます。生きるとは生きつづけることです

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「生きることを休みたい」衝動

「外界と自己との障壁を無くしてしまい、楽になりたい。」これは生命の消滅、つまり「死」を意味します。

病気などの時にはそう感じてしまうこともあるかもしれません。仏教では「死」をこの世の苦しみからの解放と考えます。

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他者と一体になる性行動

性行為は粘膜と粘膜の接触をとおして、他者とひとつになりたいという衝動の発露です。それは自己という境界を意識しつづけることから解放されたいという欲求のひとつの形です。

性行為は子孫を残すという「生」を象徴する行為でありながら、そこには「死」への衝動と同じ性質の要素が隠されていることには驚きを禁じ得ません。

「性」とは一瞬の「死」、一時的な解放なのかも知れません。

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複雑な「性」のイメージ

本来、エゴイスティックな生物が無防備に他者に自己を開いて一瞬の死を体験するセックス。その行為が汚物の排泄器のイメージを伴っているも、「性」のイメージを複雑にしています。

しかも、人類はその生殖活動を家族という文化をとおしてコントロールするようになり、一層セックスに関する議論がさまざまな陰影を帯びることになったのです。


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