キスや性交は普通、粘膜と粘膜が接触することで得られる快感をともないます。なぜ、粘膜なのでしょう。それにはどんな意味があるのでしょう。
インフルエンザが流行すると、うがいが奨励されます。口や喉の粘膜からウィルスが侵入するからです。手を洗うのは、手で目や鼻や口を触るからです。
ウィルスは粘膜から体の中に浸透しやすいのです。HIVが性行為をとおして感染するのも、粘膜と粘膜の接触をとおしてウィルスが感染するためです。
人の粘膜は耳・目・鼻・口・泌尿器・肛門など外部の世界と人の内部が接触するところに分布しています。食道の内壁なども粘膜ですから、粘膜は人の内部の世界の組織だと言えます。
皮膚は人の内部を外部ときちんと分離するためにあります。皮膚からいろいろな物質や生物が侵入したら、それは生命の危機です。
生命にとって自己と外部とを分けつづけることは基本的な機能です。その基本を侵すように粘膜が外界に露出しているのにはそれなりの理由がありそうです。
耳、目、鼻、口はそれぞれ人間の感覚組織が配置されている部分です。ここが外部環境のセンサーとなっているのですから、感度のいい粘膜組織がそれにふさわしいのは十分うなずけます。
分泌液によって湿度が保たれている粘膜は、外部からの刺激を敏感に感じとって脳に伝えることができます。
しかし、排泄のための器官に粘膜が分布していのは不思議です。そして、そこに性器が隣接しているのはもっと不思議です。
射精や排卵や出産は体内から外へ排出する運動ですから、排泄器官に性器が隣接しているのかも知れません。
(発生学的にも排泄器も性器も中胚葉を経て形成されるそうです。)
人の性的な行為は口や性器の粘膜を接触させることによって成りたっています。つまり、人は粘膜の接触によって快感を得ていることになります。
外部からの刺激を伝達しやすい粘膜と粘膜の接触をとおして、外部と一体化する仕組みこそ性的な接触のエッセンスです。