V:「生きづらさ」について
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(16) セックスはなぜ「気持ちいい」のですか

人間のセックスは文化だと言っても、それは生殖と切り離しがたく結びついています。どこまでが自然でどこからが文化なのか、考えておく必要があります。セックスが快感をともなうことから考えてみます。

生存に関わることは先天的

生物は自分の生存に必要なことは、意識したり努力したりしなくても、無意識に実行するようにできています。

また、苦痛なことは反射的に避けてしまいます。勿論、後天的に学習する部分もありますが、生命の維持に直結している機能は、生まれたときから備わっています。

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代謝と生殖の行為は快感をともなう

食糧や水などを外から摂取して、不要なものを排泄する「代謝」のはたらき。自分と同じ仕組みと形をもった個体のコピーを作る「生殖」のはたらき。

生物にとって欠かせないこの二つの機能は、快感と強く結びついていて、必要になれば自動的にその機能をはたすように作られています。この二つが本能と呼ばれる所以です。

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快感は脳のなかで起きている

快感を感じる場所は脳です。欲求が満足されると、神経伝達物質が脳で分泌され、快感を感じることが解っています。

麻薬などの中毒性のある物質はこの神経伝達物質を人工的に分泌させ、脳に快感を感じさせているのですが、乱用するとそのコントロールが難しくなり、生命維持の自動制御機能が破壊されてしまいます。

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内部環境を一定に保つしくみ

生命が自分を維持するために機能させている快感のシステムと麻薬などによる人為的な快感のシステムではどこが異なっているのでしょうか。

それは、生命の内部環境(たとえは体温、塩分・PHの濃度など)を一定に保とうとするシステムと強く結びついているかどうかの違いによっています。

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自動抑制システム

過剰な快感は、生命の内部環境のバランスを壊しかねない行動を促します。しかし、生命の維持に必要な快感には自動的に抑制システムが働くようになっています。

ですから、宗教などは昔から、この人工的で過剰な欲望の充足を「貪るなかれ。」と戒めてきました。

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快感は生命の維持に欠かせない

同じ刺激でも、快感と感じられるときと感じられないときがあるのは、この自動抑制システムのためです。内部環境を一定に維持しようとする制御システムが作用し、渇けば水を求め、足りれば汗をかくのです。

アクセルである快感はブレーキである自動制御システムにコントロールされながら、生命の維持にとって欠かせない諸機能を駆動しつづけているのです。


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