V:「生きづらさ」について
女と男と家族と物語
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(10) 無理したり、焦ったりしないで考えよう

働く意味はあとから付け足された物語にすぎないのなら、私たちは先にもたらされる事実とどのように出会うのでしょうか。

まず事実ありき

個々の人にとって、事実はどのように訪れるのでしょうか。それは偶然です。出会いという偶然によって、事実が積み重ねられていきます。もっと正確に言えば、事実という偶然が出会いによって必然へと転化されるのです。「あの人に出会ったからいまの自分があるのだ。」というふうにです。

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意味は後づけ

まず、事実があり、その意味は後からつけられた解釈にすぎないとしたら、意味は何でもいいのでしょうか。「ものは言いよう。」としてどんな解釈でも成りたつのでしょうか。そうだとすれば、意味とは虚しいものです。

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出会いによって物語が始まる

敵との出会いでも、尊敬する師との出会いでも、人は出会いによって新しい物語をもつことになります。新しい物語は、敵からは戦いの物語によって、尊敬する師なら理想の物語によって、大きな影響をうけます。こうして、偶然の出会いに必然性すら感じられるようになります。

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だから物語なのだ

人は自分の願望を込めて世界をながめ物語をつくります。そしてそれを誰かとそれを共有したがります。共有された物語は人を強く支配し続けます。物語は人の生活を激変させます。それほど物語は強い力をもっています。

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多くの人を動かす物語の力

多くの人を動かす大きな物語は、時に強大な力をもちます。戦争がその典型的な例です。第二次世界大戦では、ナチス・ドイツではドイツ民族の優越性とユダヤ人虐殺の物語が猛威をふるいました。ソ連では祖国防衛の物語によって1000万人単位で人がその犠牲となりました。自由の物語や大東亜共栄圏の物語によっても、多くの人が殺し合いました。

そして、荒々しく通り過ぎた物語の後には無惨な事実の残骸が残るだけでした。

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物語は怖い

大きな物語がもたらす結果は、激しい恋の後のようです。多くの人が傷つき、その後にはあたかもどんな物語も不可能な焼け野原のような世界が残されます。物語は怖いものです。

ですから、意味を求めすぎることは危険です。特に若者は性急に物語を求め、取り返しのつかない言動により人生を誤ることにもなります。「退屈だが落ち着いた日々」も大切だ、と心のどこかで自分に言い聞かせておくことも必要です。

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就職も結婚も子育てのシフトにすぎない時代

70歳、80歳まで生きられる人が今や普通になってきています。40歳の時に生まれた子供でも親が60歳の時には20歳です。つまり、子供が成人し自立しても、人生の時間が10年〜30年残されているのです。人生が60年のころの社会では、就職や結婚は人生最大のテーマでした。

しかし、子供が自立しても20年も生きなければならない現在は、就職や結婚は人生の一時期の問題になってしまいました。ですから、焦ってつまらない物語にとびつく必要はありません。

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新しい職業観・結婚観・人生観

新しい職業観・結婚観・人生観が求められている時代になったのだと思います。就活、婚活、引きこもり、ニートなど若者たちをめぐるさまざまな問題は、新しい時代の視点で議論しなければならない問題のような気がします。負い目を持ったり、焦ったり、無理をしないで考えようではありませんか。

しばらく、この職業とか結婚とかいった問題の周辺を考えてみます。


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