れんが壁の厚み,アーチ積み,イギリス積み

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組積造であるれんがの基本的な積み方や呼び名を、イラストを添えて施工屋なりに解説します。(地方や年代、弟子明けした事業所等によって若干の違いがあるようですが、どれも間違いではないとおもいます。)

 

A.れんがの据え方や化粧面の違い

れんが単体の積み方に依り呼び名があります。
長手面(一般的な化粧面です。21cm×6cm面)
小口面(壁厚のある場合に用いる化粧面。10cm×6cm面)
胴面(はら、ひらとも呼ばれ成型時に切断面になる為粗い化粧面になります。(21cm×10cm面)

A-1.小口1丁(一枚)積み

胴面(21cm×10cm面)を上端に、長手面(21cm×6cm面)を壁の化粧面に、壁の厚み半枚(10cm)で積む積み方です。
内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約27mmになり、かなりみぐるしい仕上になります。上下段での凹凸は大です。

 

A-2.長手(半枚)積み

胴面(21cm×10cm面)を上端に、長手面(21cm×6cm面)を壁の化粧面に、壁の厚み半枚(10cm)で積む積み方です。

内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約27mmになり、かなりみぐるしい仕上になります。上下段での凹凸は大です。

 

A-3.小端積み

長手(6cm×21cm面)を上端に、小口面(6cm×10cm面)を壁の化粧面に、壁の厚み一枚(21cm)で積む積み方です。

内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約18mmになり、少しみぐるしい仕上になります。上下段での凹凸は小です。

A-4.柾積み

小口面(6cm×10cm面)を上端に、長手面(6cm×21cm面)を壁の化粧面に、壁の厚み半枚(10cm)で積む積む積み方です。
内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約12mmになり、ややきれいな仕上になります。上下段での凹凸は小です。

A-5.柾平張り積み

小口面(10cm×6cm面)を上端に、胴面(10cm×21cm面)を壁の化粧面に、壁の厚みひら(6cm)で積む積む積み方です。
内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約11mmになり、ほぼきれいな仕上になります。 上下段での凹凸は小です。

A-6.小端平張り積み

長手面(21cm×10cm面)を上端に、胴面(21cm×10cm面)を壁の化粧面に、壁の厚みひら(6cm)で積む積む積み方です。
内測半径1000mmの曲線を巻くと,内側の縦目地が約5mmで外側の縦目地が約18mmになり、ややみぐるしい仕上になります。上下段での凹凸は中です。

B.れんがの壁のつみかた,厚み。

もともと西洋の建築資材であった為、建築技法も西洋からの輸入で、その地方で多くみられる積み方をその国の名で呼ばれています。(一部に輸入時の誤解で誤った国名がついています。また起源は中東か中国大陸のようです。)

B-1.ドイツ(小口積み)

小口積みで、壁の化粧面を小口面が表れる様に積み上げる積み方。
端部や出隅など『かなば』(矩計り、金(=直角)端、など諸説あり)を七五分やようかんを使って縦目地が芋目地にならぬ様かわらわり(かわらこしらえ)をします。

上がしちごう角で、下がようかん角になります。

 

B-2.イギリス積み

小口積みと長手積みを交互に段を違えて積む積み方。
ドイツ積みやフランス積み程外観は良くありませんが、最も堅実ですたれ(廃材)のでない合理的な積み方です。
端部の納め方でヨウカンで継ぐヨウカン角と、七五分で継ぐ七五角があり、天端(最上段)は小口積みで納める決まりとします。また根付(割付再下段)と天端(最上段)は小口積みで収めるのが原則です。

上がしちごう角で、下がようかん角になります。

 

B-3.オランダ積み

B-2のイギリス積みと同様、小口積みと長手積みを交互に段を違えて積む積み方。
イギリス積みと違いは長手段の端部を隔段、七五の隣を小口で継ぐ段と、長手でのばす段で交互に積み上げる事です。

 

B-4.フランス積み(フランドル、フレミッシュ=実際はオランダ、ベルギーの地方の積み方)

各段、同段中で小口と長手を交互に積み、小口の縦芯(センター)と上下に積まれた長手の縦芯が必ず揃わせる積み方。
化粧面の仕上がりが最も煉瓦らしく美しいといわれています(あくまでも資料の上で、大きな壁体としてです)が、手間がかかり工賃が高くなります。

上がしちごう角で、下がようかん角になります。

 

B-5.アメリカ積み(ガーデンウォール)

五〜七段の長手段を積み上げて一段小口積みを積む積み方
長手段は裏表で半枚ずらして積みます。工期は早いが内部いも目地ができあまり強くありません。

B-6.小端フランス積み(小端空間積み)

各段、同段中で小端立てと小端平を交互に積み、小端立ての縦芯(センター)と上下に積まれた小端平の縦芯が必ず揃わせる積み方。
小端平の壁芯に空気層ができ断熱効果が多少期待できますが、煉瓦積みで最も大切な圧縮強度が小さくなってしまいます。サイロや林檎倉庫等、温度湿度管理の大切な建物に多く使われています.強度が小さい割には痛んでいる物が非常に少ないです。

C 壁厚の違い

建築基準法第四節第五十五条や第六十一条で組積造の壁の厚さが規定されているように,煉瓦建築やレンガ塀に於いてれんがの壁厚は制約があります(金物等で,実験または計算上で構造耐力上安全が確認された補強を施したものは別とします)。
この為圧縮や摩擦の力を、上下前後左右すべてに分散且つ持ち合っていける様な積み方には、垂直の目地が直線にならないよう決まりがあります。

C-1.半枚積み(長手積み 壁厚100mm)

A-2の積み方で積み上げた壁。
上下段の縦目地のずらし方で、まふみ目地(真踏み?馬踏み?しんうま、1/2ずらし)や、かたうま目地(1/4ずらし)、やぶれ目地(ランダム)があります。

 

C-2.一枚積み(小口積み 壁厚210mm)

A-1の積み方で積み上げた壁。
端部(コーナーや開口廻り等)の役物に拠ってようかん角、しちごう角があります。

C-3.一枚半積み(壁厚320mm)

B-2やB-3の積み方になります。(隔段はんます、しちごうぶを使いB-1の積み方も可能ですが、煉瓦の枚数も積み手間も増え現実的ではありません。
同段の表裏か、上下段の壁芯にいも目地ができる。築炉や建築の用途に拠って適切なかわら割り(かわら拵え)をします。

上段派比較的に建築で採用され、同段の表裏にいも目地ができます。

下段は比較的に築炉等で採用され、上下段の壁芯にいも目地ができます

C-4.二枚積み(壁厚430mm)

C-3に半枚増えた壁で、割り付けについては同じとします。

C-5.二枚半積み(壁厚520mm)

C-4に半枚増えた壁で、割り付けについては同じとします。

上段派比較的に建築で採用され、同段の表裏にいも目地ができます。

下段は比較的に築炉等で採用され、上下段の壁芯にいも目地ができます

D.アーチ、迫り

開口上部を曲線で収め、上下左右に圧縮で持たせる積み方をアーチといい、直線のマグサで収める積み方をえんまといいます。現在の法規では、構造耐力上安全が確かめられた補強が無い限り,引張りやせん断等に強い鉄筋コンクリートのリンテルで収められる事が多いです。

D-1.櫛(円弧)迫り

開口部の高さと幅が、高さ≦幅/2

D-2.半円(本丸)迫り

開口部の高さと幅が、高さ=幅/2

D-3.蛇の目

開口部の高さと幅が、高さ=幅の円

D-4.お多福(二心、三心等)迫り

アーチのセンターが二箇所以上あります。

D-5.尖頭迫り1(懸垂線、カテリナアーチ変型簡易型)

懸垂線迫り(カテリナアーチ)は各部自重で釣り合っている曲げ抵抗を持たない鎖等、自重の重いものの両端を固定してぶら下げた時の曲線で、鉛直荷重と釣り合う放物線よりも外側に膨れ、山の高さが高くなります。(A.ガウディが有名)
尖頭迫りは懸垂線アーチに似てますが、同じ高さのセンターから出した曲線とW/2から立ち上がる垂線上の円を組み合わせHにします。

D-6.尖頭迫り2

尖頭迫り1に似てますが、同じ高さのセンターから出した曲線を重ねただけのアーチで頂部に荷重をかける為の要石を設置します。

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D-7.陸迫り(ジャックアーチ)

開口部の両壁の抱きから角度を持って迫っている直線のアーチ。

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D-8.閻魔迫り

開口部の上部を平積みで納めたアーチ。

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E.蛇腹(コーニス)

軒下や各階層の境目等に設ける水平の飾りを蛇腹といますが、煉瓦建築では開口部廻りや屋根廻り、多種の仕上材との水平部の取合いを蛇腹で収めます。破風や水切としての機能も多少あるかもしれなせんが、意匠的な意味が大きいと思います。

 

E-1.小口のもみじ蛇腹

小口積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。
角度をつけたはねだしをもみじ、あるいはいなづまと呼びます。。

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E-2.小端のいなづま蛇腹

小端積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。

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E-3.小口蛇腹

小口積みをはねだし(もちおくり)で積みます。
はねだしの寸法に拠って一丁半、二丁、平六丁、平八丁等を使用します。

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E-4.小端蛇腹

小端積みをはねだし(もちおくり)で積みます。
はねだしの寸法に拠って小端六丁等を使用します。

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E-5.鳩胸歯状蛇腹(テンティル)

鳩胸煉瓦を使用しはねだした煉瓦をうけます。
歯の様に見える連続した飾り。

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E-6.胴付歯状蛇腹(テンティル)

胴付煉瓦を使用しはねだした煉瓦をうけます。
歯の様に見える連続した飾り。

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F.柱型

煉瓦建築で特徴  現代の建築基準では  煉瓦造、木骨煉瓦造、鉄骨煉瓦造等れんがが構造体として建築物に使用されました。

F-1.イブストック社製ユニバーサルジョイント(自由角度)

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F-2.異型片Rれんが

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F-3.異型小端面取りれんが

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F-4.異型特注れんが

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F-5.(870mm角)4枚反時計回り18段出90°回転の螺旋

小端積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。

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F-6.(870mm角)4枚反時計回り9段出90°回転の螺旋

小端積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。

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F-7.430mm角)2枚反時計回り18段出90°回転の螺旋

小端積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。

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F-8.(430mm角)2枚反時計回り9段出90°回転の螺旋

小端積みを角度(135°が一般的)をつけてはねだし(もちおくり)で積みます。

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フッター アンカー