キリスト教歳時記 〜知っておきたい教会の文化 
八木谷 涼子
平凡社(平凡社新書 203) 2003 267p.
ISBN4-582-85203-3 \903(込)

■目次■

 凡例 10
 はじめに 11-17
 12月 19-54
 1月 55-70
 2月 71-86
 3月 87-98
 4月 99-138
 5月  139-154
 6月 155-172
 7月 173-184
 8月 185-199
 9月 201-212
 10月 213-229
 11月 231-247
 コラム 247-250
 教会の暦Q&A 251-257
 あとがき 258-259
 参考文献・ウェブサイト 260-264
 人名・見出し索引 267-265

■内容■

以前樋口隆一『バッハの四季 ― ドイツ音楽歳時記 』(平凡社ライブラリー 2000)をとりあげたことがありました(→ こちら を参照)。とても興味深く読めた本で、その感想は今でも変わっていません。ただ、音楽や美術と接していると、ヨーロッパのみならずロシアやギリシャなども含めて、キリスト教の聖人や祝日に関連したものに出会うことがあります。クリスチャンではない私は、そのたびにわからないまま聴いたり見たりすることになるですが、わからないままにしておくのも気持ち悪さが残るもの。いままでは「まあ、いいか」という横着な気持ちが勝ってきたのですが、本書はその手助けをしてくれる1冊になりそうです。

本書の目的はキリスト教の主な祝祭日や記念日を紹介し、実際に“教会で”どんなことを祝っているのかについて記した、著者によれば「いわば、祝祭日の側面からキリスト教をとらえた試みともいえる」図書です。

歳時記の始まりは12月です。記述は、移動祝日に当たるアドベント第1主日から始まります。見出しのエリアが設けられていて、祝日名(固定祝日ならば月日)、それに続いて祝日の英文名(が圧倒的に多いのですが、たまに英語以外の一般的な表記が含まれているようです)。次に、どの教派でその祝日をどの程度祝っているか(あるいは祝っていないのか)が参考程度にわかる一覧がついていますので、ここにも目が向きます。この欄で挙げられている教派は、ギリシャ正教会、ロシア正教会、ローマ・カトリック教会、聖公会、ルター派、左記以外のプロテスタント教会となります。そして本文となりますが、その祝日の由来などが述べられ、記念される聖人の各地域における表記が挙げられています。たとえば、聖ヨセフならば、ジョーセフ、ヨーゼフ、ヨゼフ、ジュゼッペ、ホセ、イオシフ、若瑟という紹介になっています。このように日本語の漢字を当てはめた表記法が紹介されているのもありがたい限りです。その項目のさいごの方には、どんな人たちにとっての守護者であるかも記されています。読み進めていくと、制定されたのが思いの外さいきんだというものも含まれますし、また祝日が別の日に変わった例も見受けられます(月日を追って紹介される祝日というのが、基本的な並び順ですから、古くから祝われているものと比較的さいきんのものといった区分けは読者側でしなければなりません)。

扱われる祝日が東方教会まで広がりをもつのも魅力です。文章は平明で、要点のまとめ方はキリスト教の部外者にもわかりやすいと思いました。便利で手頃な図書が登場したものだと思います。

【2004年11月28日】


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