瀧口修造と武満徹展
矢野進 生田美秋 竹田由美編集
世田谷文学館 1999 223p.


■目次■……■内容その他のメモ■

■目次■
ジャンルを越えた友情[佐伯彰一] (p.10)
カラー図版 (p.17)
資料 (p.49)
瀧口修造・武満徹 往復書簡 (p.165)
瀧口修造・武満徹 略年譜 (p.197)
出品資料一覧 (p.203)
協力者一覧 (p.223)

■内容その他のメモ■
今回取り上げるのは、昨年(1999年)の秋、世田谷文学館で行なわれた「滝口修造と武満徹展」コーヒーブレイク第48回参照)の図録です。この図録は会期中にはできていなかったため、予約を取って11月下旬ごろから送付される予定になっていましたが、何か事情ができたようで「遅れます」というお知らせがあり、私のところには去る1月22日に届きました。

この催しは、展覧会と異なり、文献や手書きの資料が多い展示会でしたから、すべてを読みながら進むというのができませんでした。ですから、改めて図録を手にとってみて、自分が行った展示会の内容を思い出すだけでなく、新発見もけっこう多いものだなという思いを強くしました。

図録のページを繰っていきましょう。
まず世田谷文学館の館長による、いわば「まえがき」。次がカラー図版で、展示会場の写真をはじめ、展示品の一部がカラー写真で見られます。資料のページは白黒となります。展示された写真やポスター、プログラム、原稿、文献などなどが収められています。今回の図録はB5サイズのうえに、1ページについて3〜4の図版を載せているので、文献の文字を読もうとすると厳しいです。出典を確かめて、図書館でオリジナルの資料を見ることができれば、それが理想でしょう。
資料の箇所は、展示会場と同様、小見出しの付いたたくさんの小コーナーが用意されています。全部挙げるとわずらわしいので、いくつか拾ってみます。<瀧口修造の戦前 ―― 生い立ち(p.70-)><瀧口修造の戦前 ―― 西脇順三郎との出会い(p.74-)><瀧口修造の戦中 ―― シュルレアリズムの弾圧(p.84-)>。このあたりは若かりし頃の瀧口を知る資料となります。先を続けましょう。<作曲を志す武満徹(p.94-)><瀧口修造と「実験工房」(p.96-)><瀧口修造と武満徹(p.108-)>。このあたりは戦後になりますが、展示会のテーマの核心に触れる箇所ですね。ほかにも興味深い資料がたくさん載っています。

さて、図録のハイライトは何といっても瀧口修造と武満徹の往復書簡です。
瀧口から武満に宛てた15通と、武満から瀧口に宛てた23通、1952年9月から1978年7月までの書簡が活字に翻刻してあります。これが実現したので、どうしても斜め読みになってしまう展示会の資料が、いま一度落ち着いて読めました。すると、武満の入院、実験工房に関すること、映画「北斎」をめぐるトラブル、武満の鎌倉への引越し、武満の渡米中の書簡等々、さまざまな事柄をめぐって真剣で気持ちの通い合った手紙の交換があったことが読み取れます。こんな人間関係は、なかなか生まれるものではないと思いました。

さて、残部があるかどうか、世田谷文学館に問い合わせてみると「若干ある」というお話でした。「欲しいよぉ」という方は、文学館に電話して申し込んでください(電話 03−5374−9111)。一部 1200円(プラス送料310円)で頒布してくれるはずです。
【2000年1月24日記】


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