第48回 : 瀧口修造と武満徹展(1999年10月25日)

瀧口修造といえば、戦前、PCL(写真化学研究所)でスクリプターとして仕事をし、やがて美術評論の道へと進み、福沢一郎とともに前衛美術運動を推し進めた人として知られています。私の記憶にあったのは、このあたりまででした。
「日本の作曲・21世紀へのあゆみ」の10月7日のコンサートに行ってプログラムを読んでいると、戦後の作曲家グループ「実験工房」の名付親が瀧口修造だという記述を見出して「あ、そうだったか」と思ったものです。ゆっくりでいいから、瀧口修造についてもう少し知りたいという気持ちが沸いてきました。
今月の半ば頃、私の愛読誌の一つ「東京かわら版」を眺めていたら、世田谷文学館でこの展示が行なわれることを知り、なんとその日のうちに、招待券まで手に入る偶然が重なりました(自分でも気味が悪いくらい・・・)。こうなったら、行かないわけにはいきません。

世田谷文学館外観

●10月24日、日曜日。きれいに晴れ上がった青空を見上げながら、世田谷文学館にやってきました。


●うれしくなって撮ったのが、この1枚です。
京王線の芦花公園駅で下車し、5分ほど歩いたでしょうか。


●ここは文学館。
図書館ではありませんよ。
さあ、入ってみましょう。




今回の展示の目玉は、何と言っても瀧口と武満のあいだに交された書簡でしょう。30歳ちかい年齢差を感じさせない、親しいやりとりのように見うけられます。
瀧口については、戦前のPCL時代の写真や文章などから始まり、子ども時代の写真や、戦中に滝口について触れられた文献(内務省警保局が毎年出していた『社会運動の状況』のコピーが展示されていたと思います)などが見出せます。
戦後になると、当然、武満との書簡がその時代時代で数多く展示されるようになります。忘れずに言っておきますが、書簡はこの二人のあいだにやりとりされたものだけではありません。たとえば秋山邦晴から瀧口への手紙、また大江健三郎と武満とのものも見られました。
「実験工房」その他のコンサートのプログラムや招待状も見ていて楽しかったですよ。

瀧口に抱きはじめた、ややぼんやりとした私の興味が、1回の展示で解決できるわけはないのですが、とてもいい刺激をもらって帰ってきました。

展示会場は2箇所。1階をまず見て、2階へ上がりました。実は2階では、午前11時、午後2時、午後4時と1日3回「Music for the movies: Toru Takemitsu」というビデオの上映があります。58分のビデオだそうです。なかなかの企画だと思います。私は、残念ながら見られませんでした。皆さん、この時間も予定に組み入れておくと、よりいいと思いますよ。
ただ、図録ができあがっていません。1部1200円ですが、11月末以降に郵送となるそうで、送料310円を含んで1510円で予約するようになっています。ちなみに私も予約しましたが、限定1000部のうち、予約表には「15」とありました(だからナンだ、と聞かれると困るのですが)。

展覧会の関連イベントとしては
■10月30日(土)
「武満徹と文学」(講師=小沼純一)――午後5時30分より
「遮られない休息」「閉じた眼」ほか(ピアノ=高橋アキ)――午後6時30分より
(先着150名、)
■11月13日(土)
「モダニズムの系譜:瀧口修造『瀧口修造の詩的実験 1927−1937』」(講師=大岡信)――午後2時
(先着150名)

最後になりましたが、会期などをお知らせしておきましょう。
■会期:1999年12月5日(日)まで/休館日:毎週月曜日/入場料:一般500円/


トップページへ
コーヒーブレイクへ
前のページへ
次のページへ