イラスト 早わかり聖書ガイドブック
ヘンリエッタ・ミアーズ原案 フランシス・ブランケンベイカー著
後藤敏夫 渋谷美智子訳
フォレストブック編集 いのちのことば社発売 1999 364p.


■内容その他のメモ■
大学の西洋美術史で「キリスト教図像学」をとりあげたことあり、ヨーロッパ美術で聖書に取材した作品には、もろもろの象徴が描きこまれていることを知りました。いまでも、展覧会でその種の絵画に出会うと気になることがあるのですが、哀しいかな、鳩や羊が何を象徴していたかをすっかり忘れてしまいました。音楽でも聖書に取材したものは多いですね。バッハ・イヤーの今年、例年以上に取り上げられる観のある『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』にしても、もとになった二つの福音書の共通性と差異を聞かれたならば、私はお手上げです。こんなわけで、自宅には仕方なく(失礼)新共同訳の『聖書(旧約聖書続編つき)』を1冊もってはいるのですが、あまり読んだことはありませんでした。何しろ必要性が乏しく、全編読もうと思えばとても長く、場合によっては「嘘ばっか」というSF的な内容まで含まれているのですから敬遠してしまいます。いずれにせよ、音楽であれ美術であれ、聖書がもとになった作品に対しては、どこか腰が引けてしまうのが私の常と言えます。

ある日、書店で本書を見つけ、これは良さそうだと思って買いました(税抜き1500円)。
本書は、72章からなる本文に加えて、まえがきやその他いくつかの記事からできています。今回、いつもの目次を紹介するスタイルをとらなかったのもそのためです。
ほとんどのページにイラストがあり、その近辺に短い文章が付いています。短いというのが一つのポイントですが、しかし短い文章でも積み重なっていくと、読むのに努力がいります。しかし、短い文章ならばそれなりの努力が払えそうな気がします。

本書のはじめのほうで、「旧約聖書の出来事が起こった時」が大雑把な年表形式で示され、同時に旧約聖書を構成する39冊が成立したと推定される時期もわかります。新約聖書の27冊についても、年表とともに示されます。
さらに、旧約聖書には律法の書(5冊)、歴史の書(12冊)、詩書(5冊)、大預言書(5冊)、小預言書(12冊)があり、それぞれのジャンルにどういう特徴があるかが述べられます。新約聖書も同様に、福音書(4冊)、歴史の書(1冊)、パウロによる手紙(13冊)、公同の手紙(8冊)、預言の書(1冊)について特徴がわかります。

第2章以下は、旧約聖書の「創世記」から、聖書のひとつひとつについて概略を述べていきます。章のタイトルも「〜を調べましょう」というソフトなもので、著者、書名[主な内容まで踏み込んでいるようです]、聖書の中の位置、おもな登場人物、あらすじが最初のページにコンパクトにまとめられていて、次のページからは、各書物のおもな出来事をイラストを交えて概説していきます。

私は、まだ本書を全部は読んでいませんが、「マタイの福音書」の章(以前、聖書で実際に読んだことがあります)に飛んで印象を掴んでみたいと思います。本書では、著者マタイについて簡単に紹介され、聖書の中での位置は「四福音書の最初にあり、また、新約聖書の最初の書物です」と解説されています。ページを繰っておもな出来事に目を通していくと、この福音書がどういう流れで進んでいくかがわかります。私は、以前、イエスが海の上を歩いた個所を読んで腰を抜かしそうになったことを覚えていますが、「大自然の力を支配する示された」と改めて読んで「へえー」と思いました(信じることが**ないので、「へえー」という訳です・・・)。ここで言いたいのは、細かい部分を揶揄するのが目的ではなく、このほかにもいくつも出てくる信じられない記述が、何の寓話になっているのかと視点を変えたときに、本書のようなものがあれば、それなりに参考になるに違いないということです。

本書のまえがきを読むと、「私たちが聖書を学ぶとき、個々の出来事や、各章の詳細な点にあまり踏み込みすぎて、「大きな見取り図」を見失ってしまう、ということがよくあります」と書いてあります。宗教上の
理由から聖書を学ぶ人もいるでしょうが、世の中には仕方なく聖書に書かれている事柄も知っておきたいと思う人も大勢いるはずです。私も含めて、後者に属する人たちにとっても、本書はおおいに役立ってくれそうに思えます。
【2000年1月19日記】


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