第86回 : 横山幸雄ピアノ・リサイタル 〜 江文也 日本時代のピアノ作品を中心に(上野学園・石橋メモリアルホール)

先日、映画『珈琲時光』を見て、別項に短い感想を記しました(→ こちら を参照)。そこでも書いたことですが、この映画の主人公は作曲家・江文也をテーマに調べているフリーライターという設定になっていました。去る9月21日に行なわれたこのリサイタルは映画の中で取り上げられている江文也を記念して、江文也の日本時代のピアノ作品を集めて、横山幸雄さんが演奏するというので、興味津々。迷わず出かけました。

この日は、ふだんのコンサートとはだいぶ変わった構成になっていました。はじめの15分ほどは映画「珈琲時光」に見る江文也と題してビデオ上映がありました(そのうち少しの部分は、純粋な映画の予告編)。それから、ピアノ演奏。休憩をはさんで、横山幸雄さん、一青窈さん、侯孝賢監督の鼎談があり、さいごに再びピアノ演奏という順で進みました。演奏されたプログラムは次のようになります。

1.台湾舞曲(1936)
2.五月の組曲(1935)
   [@予感A灯火にてB野辺にて]
3.一人と六人(1936)
4.人形芝居(1936)
5.スケッチ五曲(1934/35)
   [@山田の中の一本足の案山子Aお背戸に出て見ればB焚火を囲んでC裏町にてD満帆だ]
  <以上、前半>

6.バガテル<全16曲>(1935/36)
  <以上、後半>


江文也の日本時代のピアノ曲は、ご覧のとおり1934年から36年に集中しています。ほかにこの日のプログラムにはない《三舞曲》という作品もありますが、これも1935年の作品です。演奏を聴いていると、中国風なフレーズもあり、日本風なそれもあるのですが、同時にモダンな響きがきこえてくる瞬間も多々あり、そこに江作品の魅力を感じました。後半に置かれたトークで、横山さんは、江作品を練習をしているときにプロコフィエフやドビュッシーやバルトークなど当時の日本の音楽界では新しかった音楽に影響された箇所があったと感じたとお話になっていました。

私は《台湾舞曲》や《バガテル》も良かったと思いますが、《五月の組曲》や《スケッチ五曲》に惹かれて聴き入ってしまいました。この日のリサイタルが、江文也を見直す機会のひとつになるといいと思いました・・・。
【2004年9月23日】


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