第71回 : PETETOK <U> (すみだトリフォニー小ホール)

6月20日(金)、標記の演奏会がありました。今回のプログラムは次のとおりです(ただし、この日、実際に私が聴いたのは後半の中川作品からあとの4曲でした)。

神長貞行 匿名性の音楽 (初演) 手島志保(ヴァイオリン)、東義直(ヴィオラ)
角田響子 無題 そのB (初演) 角田響子(ピアノ)
田中 聰 Succession (サクセッション) (初演) 川村正明(オーボエ)、井上郷子(ピアノ)
梶 俊男 taxis for piano (初演) 中川賢一(ピアノ)
中川俊郎 ヴァイオリンとピアノのための“記号” (初演) 山口幸恵(ヴァイオリン)、 中川俊郎(ピアノ)
宮澤一人 クラリネット、ヴィオラとピアノのためのフリップ=フロップ・サーキット (改訂初演) 福前裕子(クラリネット)、阪中美幸(ヴィオラ)、植田弘徳(ピアノ)
梶 俊男 relic for cello (初演) 丸山泰雄(チェロ)
神長貞行 無限小律揺《化石の森》 (初演) 中村和枝(ピアノ)

中川俊郎さんの《記号》は、次から次へ何が起こるかわからない曲でした。たとえば冒頭ヴァイオリニストがヴァイオリンを弾きながら短いヴォカリーズを歌ったりしましたし、ピアニストはピアノを弾くほかに、スティックをもって打ちものを鳴らしたり、板を真っ二つに「バリッ」と割ったりするのです(この時は呆気にとられてしまいました)。そして、時おりロマン派風の楽想が現れたかと思うと、最後の方はバロック風の趣も若干あったりして。とてもスリリングで、私はけっこう好きになりました。

宮澤一人さんの《フリップ=フロップ・サーキット》は、ご覧の編成。全体は早めのテンポで演奏される作品で、切れ目はありません。リズムをはっきり刻んでいる箇所もあれば、もう少し滑らかにタラララ・タラララと音型が下降していく箇所もある、といった具合でメリハリも利いています。作品全体から発散されるエネルギーは大いにあるのですが、といって妙に気張ったところがなく(と感じました)、自然体で聴くものの前に演奏が提示されたと思いました。これは作品じたいの特徴でもあるのでしょうが、この日の演奏をうけもった京都の若い演奏家(お二人が今春、京都市立芸術大学を卒業、お一人は同大学に在学中だそうです)に負うところが大きいようです。このあたりの事情は、直接「作曲家(?)宮澤一人のホームページ」の“雑文”コーナーなどを読んでいただいた方がいいように思います。聴いた中では一番の収穫でした。

個人的なことがらになりますが、宮澤さんと小関とは中学と高校の同期なのです。この日、会場には高校の同期が、ほかに4人聴きに来ていました。現代音楽は初体験という皆さんもいれば、クラシックかポピュラーかといった陳腐な分け方をすれば後者の畑で活躍しているミュージシャンもいます。休憩時間の間は、作曲者を交えて6人で歓談しましたが「この編成[クラリネット、ヴィオラ、ピアノ]って珍しいんじゃないの?」と質問を受けたりしていました。まあ、正直そう多くはないだろうと思いますが、宮澤さんは「モーツァルトにもあります、シューマンにもあります」とていねいに答えていたのが印象に残りました。決して過去の例にとらわれてはいないのでしょうが、どんな前例があるか踏まえてはいるのですね。

梶さんの《relic for cello》は比較的聴きやすい作品との印象をもちました。でも、あとでプログラムの解説を読むと、そう聴こえたということは、曲のつくりを捉えきれていないという可能性もあります。まあ、致し方ないかと思います。神長さんの作品は、ぼんやり聴いてしまいました( m(__)m )。で、あとで解説を読んで、曲の「つくり」がどうなっていたかを知ったしだいです。さて、梶さんと神長さんのお二人がPETETOK (http://homepage3.nifty.com/petetok/)の主宰者です。演奏会は原則隔年で行なわれるようで、今回が2度目。前回も聴きに来ました(その時の感想は、こちら )が、まじめな会だなという印象をもっています。この会の存在が広く知られるようになるといいと思っています。
【2003年6月28日】


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