第72回 : マックス・レーガーのヴァイオリン協奏曲 (サントリーホール)

7月6日(日)の午後、都響プロムナード・コンサートNo.305がありました。プログラムは、

   マックス・レーガー: ヴァイオリン協奏曲イ長調 作品101(日本初演)

   ストラヴィンスキー: バレエ音楽《春の祭典》

   演奏  庄司紗矢香(ヴァイオリン) 広上淳一(指揮) 東京都交響楽団

というもので、演奏にざっと55分を要するレーガーのヴァイオリン協奏曲を聴きたいと思いでかけたのです。それから、当初予定されていた指揮者の大野和士さんが頸部ねんざで出演不能となり、指揮者に変更がありました。(プログラムは変更なし)。

話は今年の春先に戻るのですが、新宿の某大手CDショップに立ち寄ったとき、レーガーの《ヴァイオリン協奏曲》のCDをみつけたのです。そこには、この曲の7月に行なわれる日本初演に向けて予め聴いておこうといった店側のコメントが付けられ、価格も税抜き990円でしたので、購入しました(実演までに聴いたのは2度くらいでしたでしょうか)。ちなみにそのCDは、ベルリン・クラシックスから発売されていて、マンフレッド・シェルツァーのヴァイオリン独奏、シュターツカペッレ・ドレースデンをお馴染のヘルベルト・ブロムシュテットが指揮しています(発売番号は0091 1242BC)。3つの楽章からなるこのコンチェルトのCDの演奏時間は全体で57分40秒! おお、長い・・・。

さて実演です。長大な第1楽章は、魅力たっぷりのメロディーを歌ってきかせるかというと「?」です。そしてオーケストラが旋律を奏でるときには、独奏がオーケストラとつかず離れずの関係で両者が溶け合って進行していったようにきこえました。庄司さんの明るく伸びやかな音色は、オーケストラにかき消されることなく、むしろ心地よく響いてきました。第2楽章は、しっとりとしてロマンティックな一面を感じさせてくれました。これも独奏者に負うところが大きかったような気がします。第3楽章はリズミカルでダイナミックな動きが感じ取れました。この協奏曲は、庄司さんの強い希望で実現したそうですが、都響もとてもよくバックアップしていたと思います。

で、「面白く聴けたのか?」と聞かれれば、実は「うーん」と考えてしまうのですが、「では、つまらなかったわけだね」と言われれば即座に「いや、そんなことはなかった」と答えるでしょう。いつか似たような経験をしたことがあるなと思いかえしてみると、私は、ちょうどベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を(レコードででしたけれど)初めて聴いたときがこんな感じだったことに気付きました。その時も、第1楽章のメロディーなどにとりたてて魅力が感じられなかったこと、オーケストラとのかけ合いのときに同じような楽句が何度も出てくること、演奏時間が長いことなどが重なって、いまひとつ馴染めなかったものなのです。しかし、繰り返し聴いているうちにだんだん好きになっていった、そういう作品でした。どうも、レーガーの協奏曲も、それに近い予感がします。また実演で聴く機会が得られたら聴いてみたいと思うことでしょう。

休憩を挟んで、後半は《春の祭典》。20世紀初頭の協奏曲とバレエ音楽のプログラムを堪能したひとときでした。
【2003年7月10日】


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