第70回 : オーケストラ・ニッポニカ第2回演奏会(紀尾井ホール)

2月23日(日)、オーケストラ・ニッポニカの第2回演奏会がありました。今回のプログラムは次の2曲、
早坂文雄  讃頌祝典之楽(1942年)
信時 潔  海道東征(1940年)
鈴木美登里、野々下由香里(ソプラノ)、穴澤ゆう子(アルト)、谷口洋介、島田通生(テノール)、春日保人(バリトン・バス)、ニッポニカ・フェスティバル・コーア(合唱)、オーケストラ・ニッポニカ、本名徹次(指揮

でした。1曲目はオーケストラ曲、2曲目は声楽とオーケストラのための交声曲(カンタータ)ということになります。2月2日の第1回演奏会にひきつづき、注目すべきプログラムでした。

《讃頌祝典之楽》は比較的ゆっくりとした作品で、全曲を通して、東洋的な趣の一つの主題を反復したり、変形したりしながら進んでいきました。1942年3月31日、すなわち太平洋戦争が始まって4ヵ月ほど後に、日本音楽文化協会主催の演奏会で初演されたそうですが、戦後に演奏されるのは、恐らく今回が初めてだろう、とプログラム・ノートにはありました。それほど珍しい演奏だったわけですね。

休憩後は、信時潔の大曲、交声曲《海道東征》でした。この作品は、以前、文京区にあるアマチュア合唱団がピアノ伴奏で全曲演奏をしたことがありました。その後(だったと思います)、かの「題名のない音楽会」で部分的にオーケストラ伴奏で演奏されたことがありました。やはりオーケストラ伴奏は歌詞にうたわれた情景がイメージしやすくて、いいですね。全体は8部分からなり、日本建国の神話の中からカムヤマトイハレヒコの軍団が海路を経て、九州から畿内までやってくる様が描かれています。約1時間にわたる大作ですが、とても熱のこもった演奏でした。それにくわえてプログラムの別冊資料には、北原白秋による詩とそれに対する現代語訳が付されていて助かりました。

この作品は戦時中には、頻繁に演奏された記録があります。内容的には建国神話だよといえるにしても、戦争の記憶とあいまって、戦後は数えるほどしか演奏されていないようです。まあ、無理からぬことと思います。でも、日本人作曲家の手になる声楽とオーケストラのカンタータにどんな作品があるのかと考えるとき、やはり《海道東征》は避けて通れないでしょう。さらに別冊資料からわかることは、この作品はスコアもパート譜も(さらにいえばボーカルスコアも)日本近代音楽館が所蔵していますが、手書パート譜面は多くの修正や改正が加えられていたそうです。そこで著作権継承者の了解を得て、作曲家の武智由香さんに明らかな誤りのチェックをお願いしたとあります。

さらに、別冊資料には、前回と今回で演奏した曲目の楽譜の出展がすべて掲載されていました。大澤作品を除くとスコアは日本近代音楽館がすべて所蔵しています。パート譜は近代音楽館が2曲所蔵、大澤家が第1回で演奏されたコンチェルトを、あとの2曲はオーケストラ・ニッポニカが作成したことがわかりました。頭の下がる思いがしました。

【2003年2月26日】


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