第24回 : 東京都交響楽団1月定期(東京文化会館大ホール)
1月24日(月)夜、当日の午後に知った東武美術館の閉館(コーヒーブレイク第61回参照)というニュースを胸にしまって、東京文化会館へ出向きました。東京都交響楽団の定期演奏会を聴くためです。都響の定期演奏会は1ヵ月に2回、東京文化会館大ホールとサントリーホールの2会場で、異なるプログラムを組んで行なわれます。そして、ここ十数年、毎年1月の定期演奏会は<都響日本の作曲家シリーズ>として、一人の作曲家の個展というスタイルをとって行なわれています。
今回聴いたプログラムは矢崎彦太郎さんの指揮で、すべて廣瀬量平作品、
オーケストラのためのランドスケープ [1986]
尺八とオーケストラのための協奏曲 [1976]
(尺八独奏: 山本邦山)
朝のセレナーデ [1998]
オーケストラのためのクリマ U [1988]
の4曲でした。尺八のコンチェルトもあれば、音楽の輪郭がクッキリとわかるセレナーデ(弦楽合奏)もあり、やや響きの複雑な「クリマ
U」など、今回の定期演奏会では一人の作曲家でもいろいろな曲を書くのだな、と教えられた一夜でした。
私は、いままで都響の1月定期(<都響日本の作曲家シリーズ>)で、矢代秋雄、芥川也寸志、別宮貞雄、湯浅譲二、細川俊夫、小山清茂、早坂文雄らの作曲家の作品に接してきました。作品が作られた時期もまちまちならば、作曲家の個性も一人一人強烈でした。矢代の交響曲の第2楽章(だったと思います)に出てくる”テンヤテンヤ、テンテンヤテンヤ”と聞こえる独特のリズムや、早坂の「ユーカラ」、ベルク風にすら聴こえた別宮のヴァイオリン協奏曲など記憶に残る作品は、けっこう多いのです。
昨年の秋、都響では定期会員にアンケートを実施しましたが、その中で毎年の1月定期について多数の意見が集約されたようです。12月のプログラムに結果の一部が発表されました。それを見ると、ユニークなこの企画を支持する意見がある反面、「面白くない」「日本の作曲家のシリーズは不快」「もうそろそろ終わりにしては?」といった厳しい意見も寄せられ、まさに賛否両論といった観がありました。
確かに、日本人作曲家のオーケストラを聴き手に届ける方法は、いろいろ考えられます。ときどき定期演奏会のプログラムの1曲を日本人作品に充てるという方法もあるでしょうし、特別演奏会という手もあります。都響の1月定期は、初演の委嘱ではなく再演を主眼に置いている点に特徴があります。なるほど、初演された作品も再演のチャンスがなければ、そのまま埋もれてしまってオーケストラのレパートリーとして定着しないことになります。私は、オーケストラがこうしたレパートリーの拡大に取り組む姿勢は大事だと思います。
若杉弘さんが音楽監督の時代に始まったこの企画、音楽監督が変ってもずうっと維持しているオーケストラの努力には敬意を表します。当分、1月定期は今のスタイルを大事にしていってほしいと思っています。
【2000年1月27日記】
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