第23回 : マルティン・ベッカー オルガン・リサイタル(武蔵野市民文化会館小ホール)

1月9日(日)、今年初めてのコンサートに出かけました。

私にとってはパイプオルガンは縁遠い存在でした。教会に行く機会がまったく無かったこともあってか、私は、かなりの年齢になるまでパイプオルガンのレパートリーといえば
トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565(J.S.バッハ)
小フーガ ト短調 BWV.578(J.S.バッハ)
パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.バッハ)
くらいしか思い浮かばないくらいでした(ぜ〜んぶバッハで、しかもほんの一部)。しかも3曲目など、オリジナルよりも吹奏楽のアレンジで先に知ったくらいでした。やがて、国内のコンサート・ホールにパイプ・オルガンが設置されるようになり、状況が徐々に変わり、私も1年か2年に一度この楽器を聴くようになったのでした。

さて、当日は《16,17世紀のヨーロッパを巡る音楽の旅》というタイトルを持つリサイタルでした。プログラムは
<イタリア>
マルカントニオ(カヴァツォーニ)・ディ・ボローニャ: リチェルカータ
マルカントニオ(カヴァツォーニ)・ディ・ボローニャ: 奥様、私の心はあなたのもの
<イングランド>
ジョン・ブル: 主の名によって
作者不詳(16世紀初期): ラ・ミ・レによる
ウィリアム・バード: ファンタジー イ短調
<オランダ>
ヤン・ピテルスゾーン・スウェーリンク: 私はライン川を渡って
<ドイツ>
ハンス・レオ・ハスラー: リチェルカーレ イ短調
ハンス・レオ・ハスラー: 『新しいドイツ歌曲の楽園より』(誠実な心で愛するものは〜ああ、苦悩の痛みは〜音楽家たちよ、新たな気分で
<フランス>
ウスタシュ・ドゥ・コロワ: 「ある若い娘っ子」による5つのファンタジー
<スペイン>
アントニオ・デ・カベソン: 「御婦人の望み」による変奏曲
セバスティアン・アグィレラ・デ・ヘレディア: 第8旋法による「エンサラーダ」
という内容で、区切り区切りで演奏者の短いトークがつきました。

16,17世紀の鍵盤楽曲は声楽曲、とりわけフランス歌曲が好まれて編曲されたそうです。一方、教会ではキリスト教音楽のモテットやミサ曲がオルガン曲に編曲されました。こうしたなかで、オリジナルのオルガン曲を初めて作った重要な作曲家が、イタリアのマルカントニオとスペインのカベソンだったそうです(上に挙げたマルカントニオの2曲目は編曲です)。
曲は、どれも比較的短いものばかりでしたから、肩に力を入れずに聴くことができました。ただ、たとえばジョン・ブルの『主の名によって』のように、最も高い声部に旋律が置かれている曲でも、私には中低音のほうが充実して響いてきこえました。またスウェーリンクの曲などは、たいへん哀愁に満ちたもので、貴重なタイムスリップを経験して帰ってきました。
【2000年1月11日記】


トップページへ
通いコン・・・サート
前のページへ
次のページへ