第200回:新聞勧誘員の詐欺商法(2005年9月22日)

ときどき嫌なことが起こります。このコーヒーブレイクでも「一方的な確認書」が送りつけられてきたときの事例( ← 第85回 )と、カナダロトという海外の宝くじを購入するように誘いがきたときに自分の個人情報を先方にしっかりと教えなくてはならず警戒した事例( ← 第165回 )を書いたことがありました。今回は、こうした流れに連なる話ですが、新聞という公共性の高いメディアの売りつけに関することがらだけに、たちが悪いのです。

私の家は集合住宅にあり「朝日新聞」をとっています。さいきんの集合住宅ですから新聞勧誘員が自由に出入りすることは不可能で、どこかのお宅に用事があって建物の中に入れてもらう機会でもなければ、その先の勧誘活動はできません。本来は、住民は訪ねてきた人を正面の出入り口まで見送ることになっているのですが、現実にはそこまで手が回らないこともあるのでしょう。どこかのお宅に用事があって建物の中に入ったその勧誘員は、わが家のベルを鳴らし労せずしてドアを開けさせるチャンスをもったことになります。私の家は、日中、老人ひとりになります。ひょっとすると、それも調査済みだったのかもしれません。ですから、詐欺商法が起きたその瞬間には、私はその場に居合わせていませんでした。しかし、家族から聞いた話を信用するに足る経験がこれまでにも一度ありました。つまり、同じようなやり口の詐欺商法で他紙をとらされたことがあったという意味です。

8月のある日、帰宅するとテーブルの上に見慣れぬ紙が置いてありました。見ると、某大手新聞を来年1月から半年にわたってとるという契約の書類です。事情を聞くと、「『朝日新聞』の者だが用事があるので扉を開けてほしい」と言われ、家のドアを開けたところ、実は他紙の勧誘で、こういう取り方をした方が得をするとかなんとか巧いことを言って、「息子さんの名前は? どういう漢字を書くの? 電話番号は?」などと聞いて用紙を勧誘員の文字で埋め、「ハンコをお願いします」といってつかせたというのです。年老いた人間にしてみれば、嫌だなとは思っても、へたに逆らうと不安だという気持ちになったというのですね。勧誘員が帰ってから、いくらも時間がたたないうちに新聞社から契約をしてもらったが間違いないかと確認の電話があったといい、「まあ、いい(=諒承した、の意)」と答えてしまったというわけです(この時も、断ってあとで嫌がらせにでもあうのを避ける心理が働いたらしい・・・)。

なぜ、キッパリとその場で断らないのか、ピリャリと断ればあとで問題など起きないではないか、と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。たしかにその通りなのですが、目の前にいる人間が自分を騙してドアを開けさせ、自分よりも若く力も強そうで強引さも感じるとなると、けっして褒められた対応策ではないのですが、ついつい不本意ながらも相手の言うなりになってしまうことは起こり得ます。これは新聞勧誘員の心理作戦とでもいうべき戦術で、巧みで嫌らしい。しかも、確認の電話がすでにあって「承諾」の答えを出してしまっているわけです。

こんなときは泣き寝入りをするしかないのでしょうか?

いいえ、方法はありました。激怒した私は、某新聞の販売店に電話をしました。「お宅から来た販売員が『朝日新聞』から用事があって来たと嘘を言ってドアを開けさせ、老人を騙してお宅の新聞の契約をとっていったが、その時期が来ても配達は断る。代金を払うつもりはまったくない」と私は店の代表者に少々きつめの言い方をして、クレームをつけたのです。すると先方は、意外と落ち着き払った声で「すでに販売員から会社に連絡が行き、お宅に連絡を差し上げて契約が成り立っているので、こういうときはクーリングオフの制度を利用していただくことになるのです」と説明し始めました。

購読契約が成立した日から8日以内に、その新聞の販売店代表者に宛てて「○○年□□月△△日に契約した**新聞の購読契約(○○年××月〜××月)を解除させていただきます、という類の文書に自分の記名・捺印をして送ればいいというのです。切手代もこちらもちでばかばかしいのですが、これは家族の対応にも問題が残りますので仕方ないとあきらめました。で、普通郵便で送ったのですが、考えてみれば、その方法では確実に相手が受け取ったという証拠が残りません。後日知ったのですが、内容証明郵便で契約解除の文書のみ送り、ビール券などを別便で返送するというインターネットの記事も見出せました。

さらに、販売店の代表者から「今日うかがった者は『朝日新聞』から来たと言ってお邪魔したのですか?」と逆取材されました。「そうだ」と答えたところ、驚くべきことを言い始めました。それは、多くの場合新聞販売員は単一の新聞だけでなく、複数の新聞の勧誘を引き受けて地域を回っているので、今回のようなことが起こりうるのだというのです。ここで喧嘩してもしようがないと考え「ふーん」と聞いていましたが、内心「よく言うよ」と思っていました。

かくして某新聞の販売店との電話のやりとりは終了しました。次いで、「朝日新聞」の販売店ASAに電話し、こんなことを某新聞からやられたと報告しておきました。それからすぐに、「購読契約の解除について」(=クーリングオフの文書)を作成しましたが、こんなことで時間の浪費をさせられるのかと思うと、腹が立って仕方ありませんでした。

実は、十数年前あるいは20年ほど前になるかもしれませんが、過去にも同様の手口で家族が言いくるめられたことがありました。曰く「『朝日新聞』から用事があってやって来た」と言ってドアを開けさせ、他紙を宣伝し、「『朝日』にはこちらの方からダブって配達しないように連絡を入れておくから心配いらない」と真っ赤な嘘をつくなどして(← 騙されないでくださいよ!)、契約をとりつけていったのです。その時と販売員こそ違え、同じ新聞を売りつけられたわけです。過去の例は、私の家だけでなく、その当時の近所の方も同様の被害にあった話を聞いたことがあります。そちらのお宅でも『朝日』を名乗って家を訪れ他紙を売りつけていったというのです(こちらでも同じ新聞を売りつけていったそうで!!)。

さて、何度も「他紙」という言い方をしていますが、これはインターネットで記述をするときのいわば常識。しかし、今回、私はあえてその常識を破り、どこの新聞が詐欺商法の売りつけをしているか実名を公表します。その新聞とは「読売新聞」です。

ほかの新聞の例は知りませんが、少なくとも「読売新聞」を売りつける人間のなかには、こうした破廉恥な契約取りつけを行う新聞勧誘員がいますので、皆さまもご注意ください。もし、売りつけられているときに反抗しづらいと感じられたときは、ひとまず契約し、あとで会社から電話で確認を求められたときに断るか、それもやりづらいと思ったならば、そのあとでクーリングオフする手があるということを覚えておかれるだけでも随分気持ちが楽になることでしょう。

多少八つ当たりぎみの記述だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、土台、日本の新聞は他業種の詐欺商法などには「鋭いメスを入れる」ような記事を書くのでしょうが、自社や同業者となると、どうも口をつぐむような甘い体質があるように思えてしまいます。勧誘員の詐欺商法にメスを入れる記事などご覧になったことがありますか? もしかすると、今回わが家を訪れたのは、読売新聞の販売店から直接来た人間ではなく、手段を選ばずに販路拡張をして新聞社と結託して契約を成立させる輩かもしれません。そのあたりのことも含めて、「読売新聞」はもとより他紙も、新聞を売りつける仕組みや実態などを取材し(お手のものの筈ですよね)、こんなやり口は一掃すべきです(したがって、万一「読売新聞」あるいはその関係者から本記事における具体名の削除や、まして本ページの削除要求があったとしても、それに応じる意志はまったく持ち合わせておりません)。
【2005年9月22日】


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