第49回 : カラヴァッジョ 光と影の巨匠―バロック絵画の先駆者たち(東京都庭園美術館)

東京都庭園美術館へは今年2度めとなります。今回はカラヴァッジョとその影響を受けたカラヴァッジェスキの作品を見てきました。たしか、ルーベンスなどを見たときにその名前は出てきたように記憶していますが、肝心の作品て見たことないような気がしていました。それもそのはず、どうやらカラヴァッジョは日本初お目見えのようです(「日本における2001年」オフィシャルHPをたどっていくと、こうした記述が見出せました)。1571年にミラノ近郊に生まれ、波乱に満ちた人生を送り(殺人まで犯したそうで・・・)、1610年に38歳の若さで亡くなった画家です。カラヴァッジョが約10点、カラヴァッジェスキの作品が約40点が展示されていました。今回の展覧会は、やけに混んでいましたけれど、たまたまかどうか・・・?

さて、会期等を書いておきましょう。去る9月29日(土)からスタートしたこの展覧会は、12月16日(日)までですから、まだ1ヶ月以上あります。休館日は第2・第4水曜日(つまり11月14日、11月28日、12月12日)です。よくあるように、月曜休館ではないのですね。入場料は一般・大学生が1200円と設定されています。

カラヴァッジョの作品で展示されているのは、
  《メランゴロをむく少年(果物をむく少年)Ragazzo che sbuccia un melangolo》(ローマ,個人蔵)
  《果物かごを持つ少年 Ragazzo con canestro di frutta》(ローマ,ボルゲーゼ美術館)
  《ナルキッソス Narciso》(ローマ,バルベリーニ美術館)
  《執筆する聖ヒエロニムス San Girolamo scrivente》(ローマ,ボルゲーゼ美術館)
  《瞑想の聖フランチェスコ San Francesco in meditazione》(カルピネート・ロマーノ,サン・ピエトロ聖堂)
  《マグダラのマリアの法悦 Maddalena in estasi》(ローマ,個人蔵)
  《祈る聖フランチェスコ San Francesco in meditazione》(クレモナ,市立アラ・ポンツォーネ美術館)
  《エマオの晩餐 Cena in Emmaus》(ミラノ,ブレラ美術館)
です。どれも光が当てられている箇所と、いわば影にあたる箇所とが描かれていて、その対比が鮮やかだというのが第一の特徴でしょう。そうそう、静物もしっかりと描かれています。

たとえば《果物かごを持つ少年》は光と影もはっきり見て取れるだけでなく、手に持っている籠の中の果物がどれだけ写実的に描かれているかを味わうことができます。もっともわからないこともありました。この作品、描かれている少年は首を右にかしげて口を半開き状態にして、顔の表情はどこか力なく、さらに衣服は肩の部分を開けて着ています。いったい、どういう人物なんだろう? というのが私の疑問です。図録も買わずに帰ってきたので、しばらくはわからないままでしょうね。《メランゴロをむく少年(果物をむく少年)》は、音声ガイドによると、白い服を着た少年がイエス・キリストを、皮を向かれている果物は人間の現在を表わしているという解釈が成り立つのだそうです。うーん、なんの変哲もない動作を描いた絵の中に、これだけの寓意が込められているとすれば、私はお手上げです。こうした解釈の問題を横に置けば、「光と影」の明暗の対比こそ、ルネサンス絵画とバロック絵画を分ける新機軸だったようです。《マグダラのマリアの法悦》に描かれたマグダラの涙、《エマオの晩餐》で復活したイエスの話を聞く4人の男たちの表情など、実際の作品を見られて良かったと実感したもので、きっと長く私の記憶に残るだろうと思います。

カラヴァッジェスキと呼ばれるカラバッジョの追随者たちとしては、ジョヴァンニ・バリオーネ、カルロ・サラチェーニ、マンフレーディ、トンマーゾ・サリーニ、オラツィオ・ジェンティレスキ、アンティヴェドゥート・デラ・グラマティカ、オラツィオ・ボルジャンニ、 バッティステッロ・カラッチョロ、スパダリーノ、チェッコ・デル・カラヴァッジョ、 リオネッロ・スパーダ、タンツィオ・ダ・ヴァラッロ、マリオ・ミンニーティ、 アロンソ・ロドリゲス、リベーラ、ヴァランタン、シモン・ブーエほかの画家の作品がずらりと(といっても約40点ですが・・・)並べられています。

これらは、当然のことながら、カラヴァッジョとは異なった個性を放ちつつ、明暗の対比がうまく使われている作品ばかりです。中には、カラヴァッジョと犬猿の仲だったという人物の作品まであるわけですから、カラヴァッジョの影響力の大きさを見る思いがしました。

ちなみにカラヴァッジョについてもう少し知りたいときや、この展覧会以外の作品などもWeb上で見たいなどというときのサイトを探してみました。「Arts at Dorian」というHPにカラヴァッジョのページが用意されていました( → こちらです)。作品の図像ファイルに加えて解説も読めるように工夫されています(何より日本語なのがありがたいです)。
【2001年11月3日】


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